多様な個から自律的なチームをつくるには?:組織のシステムと関係性のパラダイムシフトと向き合うヒント

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多様な個から自律的なチームをつくるには?:組織のシステムと関係性のパラダイムシフトと向き合うヒント

「働き方改革」や「ライフワークバランス」など、働き手一人ひとりの多様な価値観の存在を前提とする考え方は、近年、マネジメントにおける新たな「常識」になりつつあります。

しかしながら、チームとして成果を出す役割を担うマネージャーの視点から考えると、メンバーそれぞれの個性や価値観の違いを認めるだけでは不十分であり、それらを結びつけ、自律的かつ共創的に価値を生み出し続けるための”チーム化”の取り組みが必要不可欠です。

先日開催されたイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」では、時代の流れの中で生じるマネジメントのパラダイムシフトを捉え、その結果発生している「4つの矛盾」が現代のマネージャーの困難さを生み出す根本的な原因であると語られました。

参考:現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?

先ほど述べた「メンバーの多様な個の発揮を促しつつ、チームとして自律的に成果を生み出し続けるにはどうすればよいのか?」といった問題提起も「4つの矛盾」の一つに挙げられており、今の時点での組織・チームの状態に目を向けて対処すべき問題という意味で、「現在の矛盾」と名付けられています。

本記事では、この「現在の矛盾」に焦点を当て、矛盾が発生している背景や、処方箋になり得るヒントについて、イベントの内容をもとに紹介します。

「現代の矛盾」はなぜ起こる?:個人とチームの繋がり方のパラダイムシフトを捉える

「現在の矛盾」が、今の時代になって問題視されるようになったのは、なぜなのでしょうか。それを考えるためには、20世紀後半と現代とでは、社会的な状況やマネジメントにおける基本的な考え方が変化していることを押さえる必要があります。

高度成長期を中心に急速な市場拡大が起こった20世紀後半は、企業として目指すべき方向性や目標、ビジョンが明確に定義しやすい時代だったと言えます。そして、トップが与える目標を達成することが企業の成長に直結することから、各部門にとっては自身のやるべきことを数値目標に落とし込み、それをできる限り早く達成することが最優先事項とされていました。

また採用も、組織が目指す目標に適した人材を大量に集めることが当たり前だと考えられていました。採用や教育のフレームや方法論、プロセスを明確に規定し、新卒の中からそれに見合う人材を一括で大量に採用する──人材リソースを投下すればするほど市場が伸びる時代だったため、そのような戦略が確かに効果的だったのです。

とはいえ当時から、部下のやりたいことと組織が求める業務がすれ違うケースもあったはず。そうした中で重要な役割を担ったのが、いわゆる“ノミ(飲み)ニケーション”でした。チーム内の飲み会や社内行事を頻繁に行いながら、ブルシットジョブでもやりがいを感じられるような”仲間化”を進めていくことが、チームとして成果を上げていく上で重要だとされていました。

しかしながら、市場が飽和し、「不確実性の時代」とも呼ばれる現代においては、集中的にリソースを投下しても、思うような成果を得られないことが多くなってきています。そのため、事業の多角化に力を入れ、資源を複数の事業に分配することの重要性が増してきています。

“複雑さ”を強みに変える。経営の多角化を実現する「分散と修繕」の組織戦略論

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あらゆる戦略の根幹となる前提がゆらぎ、また、ダイバーシティ推進の取り組みが奨励される中で、近年では、個と組織の関わり方や仕事に対する感じ方は、一人ひとり異なっていて当たり前なのだという前提が、社会全体で広く共有されるようになりました。

また、個の価値観だけでなく、リモートワークの普及なども背景に、職場環境も多様化しています。結果として、それらの状況を総合的に捉えながら、「メンバーの意思をよく聞き、尊重しながら、チーム主体で目標を定め、成果を生み出せる状態をいかにつくるか」を考え、実行していくことが、現代のマネージャーの新たな命題となっているのです。

参考:現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?

「現在の矛盾」と向き合うためのキーワード

それでは、「個の価値観や意思の尊重」と「チームの自律化」を両立させるためには、どのような理論や方法論がヒントとなるのでしょうか。膨大な変数が存在し、それらによって生み出される不確実性と向き合う中では、まずは変数を包括する「システム」や「関係性」の構築に焦点を当て、アプローチすることが効果的です。

参考:現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?

「システム」構築のキーワード:スクラム開発・PM/PdM・エンジニアリング

トップによる意思決定を待つのではなく、現場チームで目標を定め、改善サイクルを回し物事を進めていくための考え方として、スクラム開発と呼ばれるプロジェクト推進の方法論や、その中心を担う役割であるプロジェクト/プロダクトマネージャーの職能に注目が集まっています。

いま自分たちが直面している不確実性やわからなさをチーム内でつぶさに共有しながら、自律的かつ着実に対処するための舵取りを行なうための知見や、その知見を持った人材をどう育成していくか。新たなパラダイムの中で個人とチームとの繋がりを構築する上では、欠かせない視点の一つとなりつつあります。

“PMの暗黙知”を解き明かす:プロジェクトを推進させるファシリテーション

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不確実性を乗り越えるチームづくりの流儀:高速な仮説検証を実現する「2つのDX」とは何か

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「関係性」構築のキーワード:心理的資本・ファシリテーション・組織開発

「システム」とは異なる視点として、それ以前に「人間はそもそも不確実性に対して脆弱である」という前提を理解し、それを踏まえた上で対処を考えることも重要です。どうなるかわからない状況に陥った時に多大なストレスを感じ、逃げようとするのはある種本能的なものであり、人間である以上どうしようもありません。

そして、そうした心理学的な側面を踏まえたアプローチとして注目を集めているのが、「レジリエンス」や「心理的資本」などの、心のメカニズムを扱う概念です。昨今では、これらをチーム内で協同的に高めるための理論や方法論が盛んに研究されています。個人ではなくチームとしてわからなさと向き合う関係性を構築し、矛盾に立ち向かう力を蓄えていく土壌をいかに作っていくのかが重要だと考えられているのです。

マネジメントの新潮流「心理的資本」とはなにか?

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なぜ今「チームレジリエンス」が必須科目なのか?:個の力に頼らず、不確実性に対処するための方法論

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また、個の価値観やそこから生まれるアイデアを集約し、チームや組織に活かす上で、CULTIBASEでも取り上げることの多い「組織開発」や「ファシリテーション」、「リーダーシップ」も効果的な方法論として挙げられます。関心のある方はぜひ下記のコンテンツをご覧ください。

組織開発概論:関係性を耕す“ハレ“と”ケ“のアプローチ

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ファシリテーションの鍛え方:創造的対話を支えるコアスキルの体系

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組織の「矛盾」を手懐けるリーダーシップの最新知見

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今回は、前回記事で紹介した「事業の矛盾」に続く2つ目の矛盾として、「現在の矛盾」に焦点を当て、その背景や処方箋となる理論や方法論を解説しました。

チームの自律性と事業の多角化はどう両立させる?現代マネジメントが抱える「事業の矛盾」に向き合うヒント

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しかしながら、「4つの矛盾」は、どれか一つを集中的に解決すればよいようなものではありません。常に4つすべてを俯瞰的に捉え、全体のバランスを見ながら、調整していくことが大切です。一朝一夕で何かが劇的に何かが変わるというのは難しいかもしれませんが、ぜひ今回紹介したヒントを最初の一歩として、組織を長期的によりよくしていくこと自体を楽しみながら、取り組んでいく姿勢が重要なのではないかと思います。

次回は3つ目の矛盾として「人材の矛盾」の概要とキーワードについて解説する予定です。どうぞお楽しみに。

本記事は、会員制オンラインプログラム「CULTIBASE Lab」で開催されたイベント「現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?」の内容を一部記事化したものです。90分におよぶイベントの模様は、下記のアーカイブ動画より全編ご視聴いただけます。

現代組織におけるマネジメントの役割を捉え直す:マネージャーが向き合う4つの命題が生む矛盾とは?

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執筆:水波洸

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