私たちは何者か?組織アイデンティティ研究に学ぶ“一体感“のマネジメント

現代では「事業を行う意味」や「働く意味」が問い直され、組織と個人がアイデンティティの揺らぎを経験しています。そのような中でも、組織と個人の方向性がバラバラにならずに「一体感」を高めていくには何が必要でしょうか。今回は「組織と個人の一体感を高めつつ、いかに事業価値を高めていくか?」を考えるヒントをお届けします。

「私たちは何者か?組織アイデンティティ研究に学ぶ“一体感“のマネジメント」のチャプター

05:38 組織と個人の一体感を高めるには?
12:46 組織アイデンティフィケーションとは
19:51 組織アイデンティフィケーションを高めるには?
30:05 組織アイデンティフィケーションはどのように起こるのか?(実証研究から)

「私たちは何者か?組織アイデンティティ研究に学ぶ“一体感“のマネジメント」のポイント

  • 組織と個人の一体感を考えるにあたり池田は、組織と個人の「距離感」は多様であると述べた。一体感が高い場合は個人は組織のために頑張ったり、組織に定着したりする一方で、一体感が低いと離職・転職も加速する可能性があるという。
  • 一体感が低いと個人にも混乱が生じると、池田は続ける。自分のアイデンティティと矛盾するような組織にいると苦しくなってしまう。安斎は、コロナ禍で働く意味を多くの人が考えた結果、自己実現欲求が高まり、退職する人が増えている、という現状について挙げ、組織と個人の意味が重ねられることが重要だと語った。
  • 一方で個人と組織の一体感が高まりすぎるとデメリットが生じる可能性もあると、池田は解説した。現在の企業を守りたいがための不正行為をしたり、革新的な行動を取らないなどの可能性があるという。
  • 続いて、組織と個人の一体感を表す概念「組織アイデンティフィケーション」について紹介された。組織に対する帰属意識を説明する概念であり、自分自身と組織を重ねられる、自己概念の一部に組織が入っている状態であると説明した。
  • 「我々は〇〇である」という意識が、組織アイデンティティであり「〇〇」に入る部分が個人と組織で共通認識していることが、組織アイデンティフィケーションが高い状況と考えられている。
  • 人は自己を説明する際にさまざまなものを用いる。そのうちの1つに組織があり、個人にとって集団は欲求充足の手段でもあるのだという。しかし全員が自己を説明する際に組織を意識しているわけではない。続いて、どのような時に組織アイデンティフィケーションが起こりやすいのかについて話された。
  • 「我々は〇〇である」が分かりやすいことや、アイデンティフィケーションする動機づけが重要だと池田は解説した。つまり、組織自体がアイデンティティを確立していることで「我々は〇〇である」という特徴がわかりやすいこと、加えて所属企業が社会から評価されていたり、個人が好意的に組織を評価していることが重要だという。
  • また、組織アイデンティフィケーションが起こる条件として、2023年のレビュー論文では「組織の特徴」「経営方針と慣行」「対人関係」「個人属性」の4つの要因がわかっているという。池田からそれぞれの要素について解説された。
  • 「組織の特徴」の要素について安斎は、CULTIBASE Radioでの発信の例を挙げた。ラジオを聴いて株式会社MIMIGURIへ採用応募をしてくる人も多く、繕わない姿をラジオで発信しているからこそ、個人と組織の適合性が高まっているのではないかと話した。
  • 組織アイデンティフィケーションが生じやすい要因のまとめとして池田は、組織自体が魅力的であることや、リーダーや仲間との関係性が良好であること、個人が所属によってアイデンティティを得たいタイプであることなどを挙げた。

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出演者

株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO

東京大学大学院 情報学環 客員研究員

1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO/東京大学 特任助教授。

企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の可能性を活かした新しい経営・マネジメント論を探究している。主な著書に『問いのデザイン』、『問いかけの作法』、『パラドックス思考』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』『チームレジリエンス』などがある。

X(Twitter)noteVoicyhttp://yukianzai.com/

筑波大学ビジネスサイエンス系助教/株式会社MIMIGURI リサーチャー
東京大学大学院 学際情報学府博士課程修了後、同大学情報学環 特任研究員を経て、現職。MIMIGURIではリサーチャーとして、組織行動に関わる研究に従事している。研究キーワードは、レジリエンス、ジョブ・クラフティング、チャレンジストレッサーなど。著書に『チームレジリエンス』がある。

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