4/29(土)に開催した「“リーダーシップ“を再定義する:対立する集団にどのように向き合うか?」のアーカイブ動画です。本イベントでは、『対立の炎にとどまる』の訳者・松村憲さんをゲストにお迎えし、安斎・舘野が『パラドックス思考』の観点を中心に、これからの時代に求められる新たなリーダーシップのあり方について探究しました。
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「“リーダーシップ“を再定義する:対立する集団にどのように向き合うか?」のチャプター
13:23 チェックイン:あなたの周囲で”リーダーシップが高い”と感じる人は、どんな人?特徴、共通点は?
17:41 リーダーシップ論の導入
21:49 話題提供(1):書籍紹介『対立の炎にとどまる』
33:03 対立の炎にとどまるとは
40:52 書籍のご紹介
48:23 「対立の炎にとどまる」ミンデルのデモ動画
57:29 ディカッション(1)
01:05:33 話題提供(2):『対立の炎にとどまる』と『パラドックス思考』の共通点を探る
01:15:19 ディスカッション(2)
「“リーダーシップ“を再定義する:対立する集団にどのように向き合うか?」のポイント
- 今回のイベントでは、3月に出版した「パラドックス思考」と、アーノルドミンデルの翻訳書「対立の炎にとどまる」の2つを題材にし、掛け合わせながらリーダーシップを再定義するところに迫っていった。
- パラドックス思考は、問題の背後にある感情パラドックス(矛盾)に着目し、ビジネスや人生の”無理ゲー”課題に新たな解決策をもたらす考え方である。MIMIGURIが掲げるCCMは創造性を組織レベルで発揮していくことを目指しているが、個人の衝動に加えてトップの意向、株主その他ステークホルダーや多角化した各事業の状況をバランス取ることは困難である。特に調整役となりがちなミドルマネジメント層は、自分の心の矛盾を受け入れ感情に向き合うことを出発点にしたリーダーシップが必要との思いから「パラドックス思考」の本が生まれたと安斎は語る。
- 本イベントのゲストである松村が翻訳した書籍『対立の炎にとどまる──自他のあらゆる側面と向き合い、未来を共に変えるエルダーシップ(原題: Sitting in the fire )』においては、対立をすぐに解決しようとせずに、対立を通じて何が生み出されようとしてるのか、対立が生む意味に思いを巡らせる考え方をすると松村は語る。
- 「エルダーシップ」を提唱しているのは、プロセスワークの創始者アーノルド・ミンデルである。ミンデルは、ユング派の深層心理学者であるが東洋思想、特に老荘思想に影響を受けており、「起きてくることに意味があるので委ねてみる」との考え方をすると松村は語る。
- プロセスワークは変化の心理学とも呼ばれ、人も組織も社会も問題を通過しつつ矛盾を経験しつつも学び変化していくものだと捉える考え方だと松村は語る。慣れ親しんだアイデンティティは一次プロセス、未知のアイデンティティは二次プロセスと呼ばれ、その間にある変化していく際の壁はエッジと呼ばれる。
- 深層心理学モデルにおいては対立は深層において両極性が際立つと指摘する。「対立の炎にとどまる」においては、対立は自然(タオ|道)の一部であり対立の先に開けるまだ見ぬ可能性があるという前提で対立に向き合い、少しずつ両極を超えていったり包含していくことがエルダーだと述べた。
- 舘野は、『対立の炎にとどまる』と『パラドックス思考』の共通点として3つ上げた。まず両者が個人の「内面の葛藤」に着目していることをあげ、自らの傷を癒やすことが他者を理解する鍵になり組織の問題の解決に繋がっていくと指摘した。続いて、答えを急がずに「とどまる」こと、いきなり問題解決をせず感情のうごめきにとどまることを共通点としてあげた。加えて、「矛盾するメッセージ」を契機としていると語り、例えば「打ち負かしたいけど、つながりたい」を二者択一にせず、そこにある種の変革や何かの契機を見ることを両者大切にしていると指摘した。
- また、新しいリーダーシップ論に向けては「人間はめんどくさいけど、愛らしい」前提でのマネジメントや、全員が「パワー(ランク)」を理解し適切に向き合うこと、矛盾をぬるっと共存させることが大事ではないかと舘野は語った。
- 松村は矛盾をぬるっと共存させることに注目し、日本らしさとか東洋らしさみたいなことを1つ切り口に考えていくと面白いのではないかと語る。安斎は、日本人の空気を読む力、調和の上手さ、文脈をずらしていい感じにする力といった良い面と、一方でランクの抑圧を受けたり匿名の力で逆に燃やしたがってしまう悪い面を理解した上で、感情の矛盾や声なき声に向き合える東洋型/日本型リーダーシップを探究する余地があるのではないかと締め括った。