現代組織にとって新規事業開発は、変化の激しい社会環境や顧客ニーズ、技術動向に対応するために欠かせないものであり、常に抱え続ける“命題”のひとつです。特に大企業での新規事業開発においては、それまで成果を挙げてきた既存の方法や慣習がそのプロセスに大きな影響を与えます。こうした組織内の「慣性」は、貴重な経験知である一方で、新規事業開発のような新奇性の高い取り組みを推進する上では、足かせとなることが少なくありません。
今回の組織づくりCASE FILEでは、「大企業における新規事業部門のつくり方」をテーマに探究します。ゲストはNECソリューションイノベータ株式会社。一万人超の従業員を擁する同社の新規事業開発部門立ち上げを牽引した2名のリーダーをゲストにお招きし、大企業ならではの難しさや工夫などを中心に、組織変革の事例に迫ります。
後編となる今回は、前編の内容を引き続きながら、新規事業開発という不確実性の高いプロジェクトにおける悲喜こもごもなエピソードの数々を伺います。正解のないプロセスをいかに楽しみ、また成果に結実させていくのか。事業と組織の両方をつくっていくうえで重要なヒントが満載の内容をお届けします。ぜひご覧ください。
前編はこちら
経営の慣性を打ち破れ!大企業が挑む新規事業部門立ち上げの軌跡
■新番組「組織づくりCASE FILE」とは?
「組織づくりCASE FILE」では、組織変革プロジェクトのキーパーソンを毎回ゲストにお迎えし、プロジェクトパートナーを務めたMIMIGURIのメンバーとともに、そのプロセスやターニングポイントを語り合います。過去の配信はこちら
「正解なき世界を楽しむために。新規事業組織づくりの失敗と工夫を語り尽くす」のチャプター
01:41 経営と現場をつなぐ、”組織の遊び”となる人の役割とは?
07:34 新規事業開発における過去の失敗と学び
10:30 ”組織の遊び”となる人に求められる力とは?
14:35 組織の多様性をいかに保ち、活かしていくか?
21:13 施策が失敗した時にリーダとしてどう振る舞うか?
23:54 対談・座談会を終えて
「正解なき世界を楽しむために。新規事業組織づくりの失敗と工夫を語り尽くす」のポイント
経営と現場をつなぐ、”組織の遊び”となる人の役割とは?
- 後編では前編の内容をもとに、座談会形式で実践知を深堀りしていく。まずは福井さんの役割について。福井は自身のポジションについて、直接のレポートライン上ではなく、あえてひとつズレた立場にいることが重要なポイントだいう。そのような立場から、現場と経営の双方を俯瞰的に捉え、”調整”を行うことができるからだ。また、こうした臨機応変な”調整”を行う上で、福井さんに一定の意思決定権が与えられていることも、欠かせない観点である。
- 福井さんは自身のこのような自身の立場について”組織の遊び”と表現し、塩谷さんは、塩谷さんは、意思決定の精度向上には限界があり、そのためスピード感のある意志決定と試行錯誤が重要となる中で、こうした体制が功を奏していると語る。
新規事業開発における過去の失敗と学び
- 二人は試行錯誤を行うなかで、どのような失敗と学びを積み重ねてきたのか。福井さんまず”失敗談として挙げたのが、試行錯誤の”回数”をKPIに置いてしまったことだった。経営としてはその試行錯誤による学習を重要視していた。しかし、その真意がうまく伝わらず、表層的に回数に重きが置かれた解釈がされてしまったと述べる。また、塩谷さんは経営が発した売上目標が一人歩きしてしまった事例を挙げ、経営が目標を掲げる際には、ただの数値として伝えるのではなく、その背景にあるストーリーを共有し、意味を深く理解してもらうことが重要だという。
組織の多様性をいかに保ち、活かしていくか?
- 前編で組織の多様性に関する話が語られる中で、大企業としてどのようにそうした多様性を確保しているのだろうか。塩谷さんと福井さんは、自身の組織は元来同質性の強い組織であり、だからこそ、外との関係性を活かすことで、多様性を確保していくことが重要だと語る。プロジェクトの初期につくりあげた「白浜リビングラボ」もその方針に基づいて設計された施設のひとつであり、現在推進している新事業についても、プロダクトの販売に先立ってコミュニティづくりを推進するなど、活動内容に多様性を確保しようとする姿勢が色濃く反映されている。
施策が失敗した時にリーダとしてどう振る舞うか?
- 前提として、失敗を完全に防ぐことはできない。そのため、仮説が間違っていた時にはそれを認めて、次のアクションを一緒に考えていくことがまずは大事だと福井さん・塩谷さんはいう。不確実性の中で、変えること・変わること自体は悪いことがではない。重要なのは「なぜ変わったのか」を分かち合うことであり、その試行錯誤のプロセスを楽しんでいくことこそが、新規事業の醍醐味なのだ。
※2024年2月のインタビュー当時の情報です。現在は異なる可能性があります。