9/19(火)に開催した「文化の呪縛から脱却するには?:”制度と文化”から捉え直す組織論」のアーカイブ動画です。本イベントでは、書籍『制度と文化: 組織を動かす見えない力』(佐藤 郁哉, 山田 真茂留 著)を参照しながら、組織のメンバーが”目に見えない力”である組織文化に縛られず、主体的に活用するための考え方について理解を深めました。
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「文化の呪縛から脱却するには?:”制度と文化”から捉え直す組織論」のチャプター
1:55 本日の文献
7:22 今日のテーマ:理論を通じて文化や制度の捉え方を見つめ直す
10:03 制度と文化とはどのような書籍か
16:35 企業文化論の考え方
21:10 組織文化論の考え方
24:40 組織アイデンティティ論の考え方
35:46 新制度派組織論の考え方
44:55 文化の呪縛から脱却するには?
52:31 結局のところ文化の呪縛とはなにか?
「文化の呪縛から脱却するには?:”制度と文化”から捉え直す組織論」のポイント
- 池田は、今回『制度と文化: 組織を動かす見えない力』(佐藤 郁哉, 山田 真茂留 著)をレビューしようと思った背景について、安斎勇樹(株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO)が執筆中の組織のルールに関する本の中で、知らず知らずのうちに組織に暗黙的に動く力についても探究する必要性が出てきたためと語る。
- 東南は、本書の趣旨は文化と制度に関する様々な見方(理論)を大づかみに紹介することだと語り、大きく「企業文化論」「組織文化論」「組織アイデンティティ論」「新制度派組織論」の4つの理論が紹介されていると述べる。
- とはいえただ理論について知るだけではなく、古今東西の文化・制度についての捉え方を知り文化や制度の捉え方を見つめ直す機会にすべく、自社の組織文化はどの理論に基づく要素が強いか、自分たちは文化や制度にどう暗黙的に向き合っていたか、といった問いを持ちながら聞いてほしいと語った。
- 本書は3つのパートに分かれている。1つめは「組織→個人」に関わる諸理論であり「企業文化論」「組織文化論」「組織アイデンティティ論」がそれにあたる。2つめのパートでは「制度→組織」に関わる理論として「新制度派組織論」が、3つめのパートでは過度な社会化に抵抗し、乗り越えながら生きるにはどうするかについて紹介されている。
- 企業文化論は、「強い企業文化」共通の価値観のもとに一致団結した企業が優れた経営業績を上げるという考え方である。企業文化論に注目が集まった背景としては、80年代の日本企業の躍進があり日本企業から学ぶ点として企業文化に焦点が当てられたと語る。企業文化論の台頭により、組織の構造だけではなくシンボリックな側面に注目されたこと、実務家を巻き込んだことが評価された。一方で、企業文化や組織文化が何を指すかの定義が難しいと等の課題があったと語る。
- 企業文化論に続いてでてきたのが組織文化論である。企業以外の組織も対象とした他、組織の定義を明確化し組織文化の多様性を認めたことが特徴である。
- 組織アイデンティティ論では、組織における文化は多様な中でそれぞれの組織を独自な存在として際立たせている要因について注目する。内集団と外集団を区別する成因に焦点を当てながら他社と比べた自社らしさに注目した考え方である。組織の威信や魅力が高いと組織アイデンティティが成立しやすいと語る。
- ここまでは組織から個人に対する見えない力について触れてきたが、一方で組織も国や業界から影響をうけている。新制度派組織論では、こうした組織に対する制度の同化圧力について考える。
- 新制度派組織論とは、社会一般あるいは業界レベルで広く通用している規範や世界観、文化的な要因が組織のあり方に対して重大な影響を及ぼすことを強調した理論であり、マクロな要因に組織が規定されるという考え方である。
- このように、我々は自由に生きているように見えて企業や業界、国の影響や場合によっては圧力を受けながら活動しているが、私達がそこから脱却するにはどうしたらいいのだろうか?
- 文化の呪縛から脱却するためには、道具箱としての文化と制度固有のロジックという考え方を元に複合戦略モデルをとるといいと述べる。道具箱としての文化とは、文化に使われる人間像から文化を使う人間観へ変えるという考え方である。文化に染まるだけではなく文化から学び使い分けることで過度の社会科を防げるのではないかと池田は語る。制度固有のロジックとは、家族制度、政治制度、国家制度など様々な社会制度があるなかで、複数のロジックを場面ごとに使い分けることを指す。複合戦略モデルは、道具として文化を使いロジックを使い分けながら戦略を立案することで組織やマクロな文化に抵抗できる可能性があることを示唆する。
- 東南は、文化の呪縛とはなにか考えた時に、主体性なき社会化過剰の人間観と組織観ではないかと述べ、これに対する一つの道筋を示したのは組織アイデンティティ論だと語る。制度や文化は、人や組織が主体的に利用できる行動のレパートリーを組み立てるために利用可能な素材の集まりとしての一面を持つと述べる。
- 複合戦略モデルとCCMの重なりについて、組織を能動的、矛盾に満ちた存在として描く点・思想に重なりを感じる一方で、CCMではマクロの視点までは明示的に入っていないと語る。東南は、CCMの解釈を深める上で、サブカルチャーや正統的周辺参加の概念も役立つのではないかと語った。