「心理的安全性の誤解」の誤解

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約54分

心理的安全性は、いまや職場の関係性について語る上で欠かせないキーワード。一方で誤解の多い概念であり、「心理的安全性がある=ヌルいということ?」「心理的安全性がある=バチバチにやりあうということ?」など様々な認識があります。これらは実は誤解であり、同時に心理的安全性の性質の一要素を捉えたものとも言えます。今回は『60分でわかる! 心理的安全性 超入門』著者の伊達洋駆さん(ビジネスリサーチラボ・代表取締役)をゲストにお招きし、講義とパネルトークで、心理的安全性の理解を深めていきます。

「『心理的安全性の誤解』の誤解」のチャプター

09:33 学術的な定義
12:13 心理的安全性の副作用
17:11 心理的安全性は、人間関係の質を捉える概念
23:15 なぜ廃れない概念なのか?
27:42 心理的安全性の誤解の誤解とは
34:03 心理的安全性の有無をどう見極めるか?
43:21 私たちは心理的安全性とどう付き合うべきか?

「『心理的安全性の誤解』の誤解」のポイント

  • 心理的安全性は長年多くの人の関心を集めており、誰もが自分ごととして考えやすい概念である。
  • この概念は登場したことから誤解されやすい概念であり、例えば「心理的安全性がある=ヌルいということ?」「心理的安全性がある=バチバチやり合うこと?」などさまざまな認識がある。これらは誤解であり、心理的安全性の一部の要素を表しているに過ぎない。しかし、誤解といってしまうことでさらなる誤解を招いている可能性がある。
  • 心理的安全性の学術的な定義は、対人関係のリスクをとっても安全であると思うこと。伊達さんからの話題提供として、心理的安全性が意味するところの本質や、なぜこの概念への注目がここまで続いているのか?について話された。
  • 心理的安全性を本質的に理解する間接的なアプローチとして伊達さんは、心理学的安全性の”副作用”について解説。心理的安全性が高いことは一般的には良いことだと思われているが、研究によると、相性の良い職場/相性の悪い職場があると分かっている。
  • 例えば個人主義の職場、つまり利己的な個人が集合している職場では、心理的安全性が高まるとモチベーションが低下してしまうことが分かっている。また、功利主義の職場では心理的安全性が高まると、非倫理的な行動が高まることも分かっている。
  • 心理的安全性の”素顔”として伊達さんは「心理的安全性は職場の元の特性を強調するもの」だと述べた。つまり心理的安全性そのものはニュートラルな概念であり、それが高まることで、職場は”ぬるま湯”にもなれば”熱湯”にもなる。”コンフリクト”が高まることもあれば、”馴れ合い”になることもあると説明した。
  • 心理的安全性とは何か、伊達さんがより直接的に回答するとすれば「人間関係の質を表す概念であり、一言で言えば信頼関係」だという。人間関係の質は仕事を進める上で重要な一方で、案外それをしっかり捉える概念は提案されきておらず、心理的安全性はその例外。心理的安全性は、私たちが人間関係について語るとき、有望な概念だと伊達さんは語った。
  • 後半では、伊達さんと東南によるパネルトークが行われた。「心理的安全性はなぜ廃れないのか?」「つまるところ『心理的安全性の誤解の誤解』とは」「心理的安全性があるかどうかどのように見極めるか」「私たちは心理的安全性とどのように付き合うべきか」という4つのテーマで話された。
  • 心理的安全性がなぜ廃れないのか?というテーマでは、「人間関係の質に関する他の概念との違い」について話された。心理的安全性は職場やチームに限定された概念であり、それによって、多くの人がイメージがしやすいのではないかと伊達さんは話す。
  • つまるところ心理的安全性の誤解の誤解とは?では、人それぞれに「こういうチームの方が上手くいく」という職場観やチーム観があるために、その考え方が反映された「心理的安全性の誤解」が主張されているのではないかと伊達さんは説明した。
  • 心理的安全性はフラットな概念だからこそ、誰かがそこに”色”を持つと、その色で語られることもあるし、別の異なる色でも語ることができるようなものだと東南は話した。
  • 東南は「心理的安全性があるかどうかどのように見極めるのか?」という問いに関連して、そもそも”職場が本来持つ性質”を規定することの難しさについて言及した。伊達さんは逆算的な考え方として、今ある性質が拡大するとどうなるかを考えるのは一つの方法だと説明した。加えて「自分たちはどうなりたいのか?」を理解していく必要もあると述べた。
  • 心理的安全性が高まると、職場の良い部分も悪い部分も大きく表れてくる。一方で心理的安全性の逆について、伊達さんは、緊張関係や気を遣う状態であると述べた。功利主義なチームの心理的安全性が高まった場合の研究結果にもあるように、心理的安全性が低いことは「絶対にダメなこと」ではない。ある種の緊張関係はそれはそれで効果を持つものではないかと、伊達さんは考察した。
  • 私たちは心理的安全性とどのように付き合うべきか?について東南は、心理的安全性があることと、緊張関係にあることのバランスやグラデーションが重要なのではないかと述べた。
  • 伊達さんは、心理的安全性を高めるべき”状況”があるのではないかと述べた。すべての状況で高めてしまうと弛緩状態になる一方で、緊張の糸をずっと張り詰めている状況も好ましくない。場の性質に応じて心理的安全性をデザインしていくという発想で付き合っていくのが良いのではないかと話した。

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株式会社MIMIGURI リサーチャー/ファシリテーター

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士前期課程修了。立教大学大学院経営学研究科博士後期課程在籍。人と組織の学習・変容に興味を持ち、組織開発が集団の創造性発揮をもたらすプロセスについて研究を行っている。共著に『M&A後の組織・職場づくり入門:「人と組織」にフォーカスした企業合併をいかに進めるか』がある。

株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役

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