3/11(土)に開催した「イノベーションは「学習」から生まれる:自社の本質的な強みを磨く、メビウス・モデルとは?」のアーカイブ動画です。本イベントでは、講師に『学習優位の経営』『パーパス経営』『CSV経営戦略』など多数の著書を持つ、名和高司さん(京都先端科学大学大学院教授/一橋大学ビジネススクール客員教授)をお迎えし、組織の「学習」から生まれるイノベーションについて考えました。
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「イノベーションは「学習」から生まれる:自社の本質的な強みを磨く、メビウス・モデルとは?」のチャプター
09:46 チェックイン:アイデア創出やイノベーションに関する悩みや課題は?
16:05 講義:学習からイノベーションを生み出す「メビウスモデル」とは?
22:50 メビウスモデルの説明
35:27 イノベーションを生む企業DNA
46:30 講義のおさらい
01:02:14 名和先生の質疑応答
01:25:54 質疑応答を受けて〜学習の姿勢のあり方〜
「イノベーションは「学習」から生まれる:自社の本質的な強みを磨く、メビウス・モデルとは?」のポイント
- 次世代イノベーション組織、というテーマで話題提供が行われた。まず学習する組織についての理解を深める際の手助けとなるフレームワークとして、バリューチェーン(横軸)とエコシステム(縦軸)を3つに分けた3 ✕ 3のマトリクス図が紹介された。
- 名和はこのマトリクス図において、組織イノベーション上大事な部分は「顧客現場」「事業現場」「組織DNA」「顧客洞察」と、スケールするためのビジネスモデルの作り込み(ここでは「成長エンジン」と呼ぶ)の5つであると指摘する。それらが見えざる資産としてあるが、これらを上手く活用できている企業は少ないと語る。
- 上手く活用できていないパターンとして、上記資産の一部しか使えていないパターンを4つ紹介した。たとえばスタートアップでは「顧客洞察」と「組織DNA」だけに頼ったために、新しい発想で世の中にないものを生み出すことに長けている一方で、市場が大きく成長すると他社にリードされるケースがあると指摘する。
- そこで名和は、「顧客現場」→「組織DNA」→「顧客洞察」→「事業現場」を持続的に回すことでイノベーションを起こすメビウスモデルを紹介した。Apple社も、かつては自社の先見性と独自性にこだわり「顧客洞察」と「組織DNA」のみを回すという典型的なベンチャー企業だったと語る。しかしスティーブ・ジョブズが戻ってきて以降、「顧客現場」の利用者のペインポイントにも着目し、「事業現場」のものづくりを他社に任せ、自社の強み・DNAを再定義することで大きなイノベーターとなったと語る。
- こうしたメビウス運動を行う上では、組織のDNAをどう読み解くかっていうのは非常に重要なポイントになると語る。では組織のDNAを読み解くにはどうすればよいのだろうか?名和は、静的DNAと動的DNAの理解が不可欠だと語る。前者はその会社の独自の伝統的な強みであり、後者は逆に自己否定ができて今までのやり方とは違うことにチャレンジできる姿勢を指す。これらが二重らせんとして存在していることが大事だと指摘する。
- 講義の内容を受け、小田は新しい事業を生み出すことに固執するあまり組織学習的な観点で取り組めてないことへや、批判する側が学習の姿勢を持てていないことが往々にしてあると指摘する。さらに、組織DNAとしてパーパスを起点とした学習をするという姿勢の重要性に話は通ずると指摘し、パーパスは結論ではなく学習の前提としてあるべきだと主張した。
- 質疑応答では、日本ではイノベーション=技術革新と捉えられているが、マーケットをつくることこそがイノベーションだと名和は主張する。また、0→1がもてはやされるが0→1自体はインベンション(発明)であり、事業としてスケールさせることができなければイノベーションにはならないと語った。また、日本企業の課題である「自社の成長エンジン」の育て方に関しては自社のアセットの持ち方が重要になると語る。競争源であるコアコンピタンスを徹底的に磨くが、販売のネットワークや設備はすべて自前主義にせず持たないことを決めることが必要だと主張した。
- 小田は質疑応答を受け、改めてアウトサイドイン→インサイドアウト→アウトサイドイン…の往還が学習の姿勢として大事だと強調した。また、価値とコストの間でより良さが広がる関係性を考えていくことが成長エンジンを考えることにつながると指摘し、パーパスを思想をベースに置きながら価格(価値の格)がちょうどいいところを見定めそれが実現する形や仕組みを考えるべきだと締め括った。