どうすれば“目標設定”の解像度を高められる?プロジェクトにおける課題デザイン3つの方法

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どうすれば“目標設定”の解像度を高められる?プロジェクトにおける課題デザイン3つの方法

組織の問題を解決する出発点は、問題の本質を捉えて、関係者の間で「解くべき課題」を合意することです。課題というのは、一般的に、目標と現状のギャップに潜んでいるとされています。書籍『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』では、これを「課題のデザイン」として、手順を解説しています。

どのように“目標”の解像度を高めるか?

そのように言うは易しで、目標そのものが関係者の間で曖昧で、目標の解像度が悪いことが、そもそもの問題の要因であることも少なくありません。したがって、適切な課題をデザインするためには、目標を精緻に整理し、関係者の間でまず「何が目標なのか」を合意することが不可欠です。

目標の整理の観点は「期間」「優先順位」などさまざまですが、目標の「性質」によって整理するアプローチは有効です。具体的には、組織やプロジェクトの目標を「成果目標」「プロセス目標」「ビジョン」の3種別に整理するのです。

目次
・[成果目標]で「どこを目指すか」を明確にする
・[プロセス目標]で「どのように進めるか」を明確にする
・[ビジョン]を言語化し、目標に”Why”を込める
・目標は暫定で決め、プロトタイピングしていく

図1 成果目標・プロセス目標・ビジョン

1. [成果目標]で「どこを目指すか」を明確にする

成果目標とは、設定した期間において、最終的に到達したい個人や組織の状態や、最終的に生み出したい成果物の要件や質を規定したものです。

従業員のエンゲージメントサーベイの数値を10%改善する、粗利を20%上げる、新規性の高い次期の商品コンセプトのアイデアを3つ生み出す、といった、具体的な成果を規定するものです。

2.[プロセス目標]で「どのように進めるか」を明確にする

プロセス目標とは、成果目標に辿り着くまでの最中に、問題状況の当事者たちにどのような気づきや学習が生まれると望ましいか、当事者たちの間にどのようなコミュニケーションが生まれると望ましいか、どのような関係性を重視したいかなど、プロセスにおいて重視したい目標です。

組織の問題の多くは、組織の構成員たちの固定観念の問題や、関係性の問題によって引きこされています。したがって、問題を解決するためには、ゴールに到達するまでのプロセスにおいて、何らかの学習や気づき、コミュニケーションを起こす必要があるはずなのです。プロジェクトの目標設計をする際に、成果目標は定義されているが、プロセス目標が軽視されているケースが非常に多いように感じます。

3.[ビジョン]を言語化し、目標に”Why”を込める

ビジョンとは、上述した「プロセス目標」「成果目標」の達成の先に、どのような状態を目指すのかを考えることで、「プロセス目標」「成果目標」の意義や、目指す方向性のコンセプトを言語化したものと言えます。目先の問題を解決することが自己目的化することを防ぎ、問題の本質を見失わないようにするためにも、ビジョンが明確になっているかどうか、確認しておくことは重要です。

ビジョンが明確であれば、ビジョンを起点に問題の在り処を掴み、定義すべき課題を導きやすくなります。もしビジョンが存在しない場合、「共通のビジョンを設定すること」自体を課題として設定すべき場合もあるからです。

目標は暫定で決め、プロトタイピングしていく

ただし、問題によっては、プロジェクトの初期段階においては目標が精緻化できない場合もあるでしょう。たとえば成果目標ははっきりしているが、ビジョンが曖昧であるケース。プロセス目標にこだわりはあるが、成果目標が話を聞くたびに二転三転するケース。関係者にヒアリングをすると、人によって異なる目標が語られるケース、などなど。

当事者にとって納得のいく目標は、必ずしも「最初に」決められるものではありません。また、ある時点の認識では“納得”していたはずの目標が、プロジェクトのプロセスにおいて起きた学習によって、変更される場合もあります。むしろ、プロジェクトが組織学習を引き起こしたのであれば、それはごく自然な現象なのかもしれません。

「成果目標」「プロセス目標」「ビジョン」のいずれかが曖昧なままでも、仮説的に課題を定義することは可能です。問題解決における目標は、「決められる程度に決めておく」ことが鉄則です。

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2020年6月、CULTIBASE編集長の安斎勇樹の新刊『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』が出版されました。特集「問いのデザインの技法」では、問いのデザインにまつわる技術や理論の解説を行います。

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著者

株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO

東京大学大学院 情報学環 客員研究員

1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO/東京大学 特任助教授。

企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の可能性を活かした新しい経営・マネジメント論を探究している。主な著書に『問いのデザイン』、『問いかけの作法』、『パラドックス思考』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』『チームレジリエンス』などがある。

X(Twitter)noteVoicyhttp://yukianzai.com/

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