組織をよりよい状態へと変革していくアプローチとして、「組織開発(Organization Development)」と「組織デザイン(Organizational Design)」がよく取り上げられます。
両者は、似て非なるものですが、定義をどこまで広げるかによっては境界線は非常に曖昧です。本記事では、「組織開発」と「組織デザイン」の概要を紹介し、両者をどのように活用していくことが有効かを紹介していきます。
「組織開発」とは何か
組織開発(Organization Development)とは、ざっくりいえば、組織における目に見えない人間の内面や関係性(プロセス)に着目しながら、ボトムアップ型の対話を通して課題解決をファシリテーションしていくことです。
組織開発は、実践の中で発展してきたキーワードのため、様々なアプローチを風呂敷のように取り込んでいったとも言われ、その言葉の指す意味合いが人により異なることもありますが、組織の風土やメンバー同士の関係性など、目に見えない問題へ働きかけることができるという点が特徴的です。
以下のような「氷山モデル」が例えとして用いられることが多く、問題として見えていたり取り上げられていたりする背景には、問題の真因が隠れていると言われます。
組織開発についてもう少し学んでみたいという方は、以下の特集「組織開発の理論と効果」がおすすめです。組織開発を取り入れる意義や効果について、アカデミックな背景を辿りながら紹介しています。
さらにもう一歩踏み込んで、組織開発の理論や方法論を体系的に学びたい方は、以下の動画をご覧いただくのがお勧めです。「なぜ組織開発が必要なのか?」といった背景から、組織開発の定義、“ハレ”と“ケ”という2つのアプローチ方法を紹介し、実際に企業における組織開発の事例を“ハレ”と“ケ”のアプローチで読み解いています。
組織開発概論:関係性を耕す“ハレ“と”ケ“のアプローチ
「組織デザイン」とは何か
ここまで、人間の内面や関係性に注目する「組織開発」の概要を紹介してきましたが、他方で組織デザイン(Organizational Design)は、組織の構造設計に着目し、「分業」と「調整」のメカニズムを用いて、適切な業務の割り振りや、階層やコミュニケーションラインを整えていくスタンスをとります。
組織の拡大に伴い、コミュニケーションパスが増え、このパスが機能しなくなることが組織崩壊をもたらします。組織デザインでは、このパスの量と質を設計していきます。
「分業」とは、端的に言えば組織構成員の役割分担のことです。分業がうまく機能することで効率性が上がり、お互いが協力しやすくなります。どのような分担方法があるかというと、大きく以下2つに分けることができます。
垂直(階層別)分業:組織を上流(考える人/指示を出す人)と下流(作業をする人)に分ける分業の方法。管理には適しているが、ヒエラルキーによる意欲低下を招きやすいというデメリットがある。
水平(並行)分業:考えることと作業することをセットにし、対象を分ける分業の方法。裁量権を持ち、意欲は向上しやすい一方で、各部門が自分たちの権限や利害にこだわり、外部からの干渉を排除する傾向を持ちやすく、その場合に部門間の協力が生まれなくなるというデメリットがある。
「垂直分業」「水平分業」それぞれの利点・欠点があるため、実際の組織では、これらを組み合わせることが求められます。具体的には以下のような4パターンがよく見られます。
上記のような分業構成員同士の協力を作り出すのが「調整」です。調整がうまく機能することで、ようやく組織としての「成果」につながります。
「調整ってAとBをつなぐだけでしょ?」と思われるかもしれませんが、1つ1つの調整の中には様々なパスが含まれています。以下の図にあるような複数のパスを意識して、分業構成員同士を繋いでいくこよが必要です。
以上のように、「分業」と「調整」が機能することで、メンバーの行動が整合され、力の分散を防ぐことができます。
分業や調整は、シンプルに見えて奥深い方法論です。さらに具体的なアプローチは以下の動画で紹介しています。先述した典型的な組織構造4パターンそれぞれの特徴や、「組織デザインの落とし穴がどこにあるのか?」といったことが15分程度で学べる内容になっています。興味のある方はぜひ合わせてご覧ください。
組織デザイン概論
「組織開発」と「組織デザイン」をいかに活用するか
ここまで「組織開発」と「組織デザイン」それぞれの特徴を紹介してきました。冒頭で述べたように、両者のアプローチは相容れないスタンスとして認識されがちです。例えば、組織開発のファシリテーターの方の中には、組織デザインの考え方にアレルギー反応を示す方もいらっしゃるようです。しかし、近年ではこのような”理論的なポジショニング”にこだわることが、現場において本質的に意味を持たないものになっていることも指摘されています。
組織開発か組織デザインか、という二項対立を超えて、組織をよりよい状態にしていくために、構造とプロセスの両面に着目して、半トップダウン半ボトムアップのアプローチで進めていくことが重要だとCULTIBASEでは考えています。
目に見えない関係性を捉えて組織デザインを行うこと。課題の解決を対話に頼っているチームや組織は、むしろ構造に問題がないか目を向けてみること。こうした工夫が、組織を適切にファシリテートしていくことにつながるのではないでしょうか。
この辺りの現場におけるノウハウや勘所、両理論の実践的シナジーの可能性については、以下の動画でも解説をしておりますので、よろしければCULTIBASE Labにご登録の上、ぜひ併せてご覧ください。初月会費無料です。
組織の課題に対するヒューマンプロセスの取り入れ方|組織デザイン概論 Part2
組織開発・組織デザインのシナリオをどう描くか?|組織デザイン概論 Part3
執筆・東南裕美