コロナ禍により社会全体が大幅な変化を迫られた2020年も残すところあとわずかとなり、CULTIBASEもおかげさまでリリースから4ヶ月以上が経ちました。本レポートでは、立ち上げから今日まで発信してきた計120本の記事(CULTIBASE Radioを含む)のうち、特に注目度の高かった5本の記事を振り返ります。
それぞれカテゴリこそ異なるものの、創造的な組織づくりに欠かせないマネジメントやファシリテーションのノウハウに迫る内容となっております。今回ご紹介した記事は期間限定で無料会員登録をせずに読めるようにしておりますので、ぜひ同じ組織・チームに所属する興味のありそうな人と一緒に知見を深めてみてください。
組織のクリエイティビティをどう高める?イノベーションのための創造的な組織づくりの見取り図”CCM”の全体像(解説動画付)
組織のクリエイティビティをどう高める?イノベーションのための創造的な組織づくりの見取り図“CCM”の全体像(解説動画付)
◎まずはここから!イノベーションを起こし続ける組織づくりの基盤となる、“創造性”の捉え方
「組織イノベーションの知を耕す。」それが本メディア・CULTIBASEのコンセプトです。そしてそのためにはまず「組織における創造性とは何か?」という点について理解を深めていく必要があります。人や集団の創造性が発揮されるとはどういうことか。現代の組織ではなぜそれが難しいのか。その要因とは何か。そして、その要因を取り除くために何ができるのか。本記事では、こうした問いに対するアンサーとして、「個人」「チーム」「組織」の3階層から組織の創造性を捉えるモデルを概説しています。CULTIBASEの基本思想ともいえる内容であり、本メディアの世界観を味わう上でも、まず最初におすすめしたい一本です。
安斎 「組織の創造性」といっても、組織の理念がよい、あるいは個々人が頭がよいといっただけでは不十分です。ちゃんと個々人の衝動が発揮されていて、チームの中で関係性がよく対話が生まれている状態があって、また、組織の理念が掲げているフィロソフィーが、みんなに納得されながらも新しいものに生まれ変わり続けている状態。「個人」「チーム」「組織」という3つのレベルの創造性が実現してはじめて組織がクリエイティブな状態になると、私たちは考えています。そしてそれが実現した理想的な状態をモデル化したものが、この“Creative Cultivation Model”となっています(記事内の動画より引用・一部改変)。
ファシリテーターはなぜ「対話」を重視するのか:社会構成主義入門
ファシリテーターはなぜ「対話」を重視するのか:社会構成主義入門
◎対話の基盤となる思想:「社会構成主義」とは何か?
”対話”によってお互いの「意味づけ」を共有することが、組織の創造性を発揮する原動力となる。CULTIBASEではこうした考えのもと、対話することの重要性を複数の記事を通じて繰り返し提唱してきました。中でもこちらの記事では、特に対話の根底を支える価値観や考え方に焦点を当て、「社会構成主義」という概念を切り口に解説しています。コミュニケーションの力で組織を活性化させたいと願うすべてのファシリテーターに読んでほしい記事となっています。
イノベーションにおいて「客観的な正解」は存在しません。どんなに新奇なアイデアで、実現可能性が高かったとしても、当事者である自分たちが「これが納得できる正解だ」と思えなければ、コトは動きません。対話を通して、関係性のなかで作りだされた「自分たちにとっての現実」を作るしか、主体的に前進する術はないのです。
この考え方は、「社会構成主義」という認識論に基づいています。社会構成主義では、私たちが「現実だ」と思っていることは、客観的に測定できるものではなく、関係者のコミュニケーションによって意味付けられ、合意されたものだけが現実である、というふうに考えます。(記事より引用)
なぜイノベーションに「遊び心」が必要なのか?:連載「遊びのデザイン」第1回
なぜイノベーションに「遊び心」が必要なのか?:連載「遊びのデザイン」第1回
◎イノベーションの鍵は「遊び心」! 実験と学習を楽しむ組織づくりの秘訣に迫る
組織イノベーションにおける「遊び」や「遊び心」の有用性と可能性を考察する人気連載「遊びのデザイン」。第一回となるこの記事では、「そもそもなぜ遊び・遊び心がイノベーションに繋がるのか」を解説。「個人」「チーム」「組織」の3つの階層におけるイノベーションの阻害要因を取り除くにあたって、遊び・遊び心がどう効果的に作用するのか、丁寧に解説しています。ぜひ自分の組織と照らし合わせながら、活用可能な遊びのエッセンスに思いを巡らせてみてください。
誰しもが子どもの頃に没頭した「遊び」には、ときとして組織を大きく変えるポテンシャルを持っています。組織変革の手法が「ペインフル」なものに偏る傾向があるなかで、いま「遊び」と「イノベーション」を結び付けて語ることが、組織変革の方法論におけるある種の「新結合」だと思うのです。
もちろん、遊ぶといっても、会社のなかで「かくれんぼ」や「鬼ごっこ」をしようという話ではありません。かくれんぼの面白さの本質とは何だったのか。鬼ごっこの無数のバリエーションには、どのようなファシリテーションのヒントが隠されているのか。そのようにメタ的に考察することで見えてくる、遊びのなかに潜んでいた人を没頭させる仕掛けや、枠から飛び出すための思考のエッセンスを抽出し、それをマネジメントや事業に適応すること。それが、遊びのデザインです。(記事より引用・太字による強調は引用者による)
組織イノベーションを牽引するファシリテーターが持つべき「心理的柔軟なリーダーシップ」とは──ZENTech取締役・石井遼介さん×安斎勇樹対談
組織イノベーションを牽引するファシリテーターが持つべき「心理的柔軟なリーダーシップ」とは──ZENTech取締役・石井遼介さん×安斎勇樹対談
◎心理的安全性に溢れたチームを創るためのリーダーシップ論
メンバーが力を充分に発揮し、活躍するためには、チームの「心理的安全性」が保たれていることが重要です。とはいえ、実際問題、チームを牽引するリーダーとして、どうすればチームに心理的安全性をもたらすことができるのでしょうか。本記事では、今年9月に『心理的安全性のつくりかた』を上梓された石井遼介さんをゲストにお迎えし、「心理的安全性」を支えるリーダーに求められる素質「心理的柔軟性」についてお話を伺いました。
石井 僕らが提唱する「心理的柔軟性」とは
(1)必要な困難に直面し、変えられないものを受け入れる
(2)大切なことへ向かい、変えられるものに取り組む
(3)それらをマインドフル(気づきに満ちた状態)に見分ける
という、3つの要素から成り立っています。
(中略)
これらの3つの要素からなる「心理的柔軟性のあるリーダーシップ」を、組織のポジションとしてのリーダーだけでなく、所属する一人ひとりが持てるようになるといいですよね、というのが、書籍や研修、組織開発のコンサルティングを通じて、私たちが伝えんとするところです。(記事より引用・太字による強調は引用者による)
“厄介な問題解決”としてのデザイン科学:連載「デザイン思考のルーツから、その本質を探る」第1回
“厄介な問題解決”としてのデザイン科学:連載「デザイン思考のルーツから、その本質を探る」第1回
◎「厄介な問題」と対峙する、「学問としてのデザイン」の歴史
近年、「デザイン思考」をはじめ、デザインのエッセンスを取り入れた手法やフレームワークが急速に提唱され、認知を拡げています。しかしながら、根底に流れるデザインの思想や歴史、理論を充分に理解しないままそれらの手法や枠組みを導入したところで、”模倣”の域を出ず、使いこなすことは難しいでしょう。全3回の連載「デザイン思考のルーツから、その本質を探る」の初回を飾る本記事では、デザインの本質的な目的として「複雑なシステムの関係性を紐解き、より良い姿を目指すこと」という目的が掲げられた1960年代から、デザインという学問が「厄介な問題(Wickied Problems)」と向き合った歴史と、提唱された主要な理論を紹介します。
アーチャーやサイモンに共通する姿勢は、デザインが紐解く複雑で階層的な課題解決のプロセスをモデル化し、よりデザイン活動の解像度を高めることにあります。一方で、デザインアプローチの全てを科学的に解き明かせるのかという疑問も、常に掲げられてきました。
ホースト・リッテルやジェフリー・コンクリン、リチャード・ブキャナンらによって挙げられた「厄介な問題(Wicked Problems)」はその代表例です。解決したことによってしか解いた問題を理解できないような問題、もう少し詳しく言えば、複雑に利害を伴う関係性が絡み合い、何をどのように解けばより良い状況に向かうのかさえわからないような問題のことを指しています。(記事より引用・太字による強調は引用者による)
リリース元年となった2020年ですが、多くの方による温かい応援のことばを受けながら、メディアとして非常に好調なスタートを切れたと感じております。この場を借りて改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
2021年も「イノベーション」「経営・マネジメント」「デザイン」「学習・人材育成」「ファシリテーション」という5つのカテゴリを中心に、皆さまが自分自身の組織をより活発に、創造的にできるような知見の詰まったコンテンツをお届けしていく所存です。今後ともCULTIBASEをどうぞよろしくお願いいたします。
ライター:水波洸
CULTIBASE 編集者
株式会社ミミクリデザイン(現・株式会社MIMIGURI) Editor。法政大学経営学部経営学科卒業。千葉県出身。在学中から「対話の場のデザイン」を主な探求テーマとして、様々なワークショップや哲学対話の実践に参加・参画。卒業後はそうした活動の臨床心理的意義を模索する傍ら、NPOの広報担当としてワークショップレポートを多数執筆。現在はワークショップや対話イベント専門のライター・編集者としても活動。ミミクリデザイン(現・株式会社MIMIGURI)では、メディア編集を担当している。