組織の不祥事はなぜ防げないのか?:膠着を解きほぐすアプローチ

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約56分

急速な社会変化やSNSの発達、人材の流動化などの中で、現代組織はあらゆる困難な状況に見舞われます。そのような世の中では、困難に直面しても、しなやかに対応し、立ち直ることのできる「レジリエントな組織づくり」が求められています。
今回のテーマである「不祥事」は企業が直面しうる困難の一つ。困難に対応できるレジリエントな組織を作るためのヒントを『社会問題化する組織不祥事:構築主義と調査可能性の行方』の著者・中原翔さん(大阪産業大学/経営学部商学科准教授)と共に考えました。

「組織の不祥事はなぜ防げないのか?:膠着を解きほぐすアプローチ」のチャプター

02:05 なぜ「組織不祥事」を扱うのか
09:32 組織不祥事は決して他人事ではない
11:31 不祥事の定義
15:17 関係的危害とその事例
24:31 客観的危害と関係的危害の違い
30:51 組織不祥事はなぜ防げないのか?

「組織の不祥事はなぜ防げないのか?:膠着を解きほぐすアプローチ」のポイント

  • 今回のテーマである「組織不祥事」について東南は、誰かが悪いことを考えて行なっているというイメージは偏ったイメージであり、不祥事は事業のため組織のためを思って起きる場合もあると話す。
  • 続けて東南は、CCM(Creative Cultivation Model)の図を示しながら、無理のある構造や戦略(構造の不整合)が、不正の常態化(文化の不整合)に繋がる場合があるのではないか、社会的な感度の低さによって発生するケースもあるのではないかと話した。
  • 中原さんによる話題提供では、「組織不祥事は決して他人事ではない」と前置きした。不祥事は、組織が多くの人々に与える「危害」(客観的危害)によるものだけではなく、個別に危害を訴えられる(客観的危害)ケースが増えているという。どうすれば事前予防・事後対応を通じて組織のブランド価値を向上できるのかについて考えていきたいと話した。
  • 続いて不祥事の学術的定義として、「公共の利害に反し、(顧客、株主、地域住民などを中心とした)社会や自然環境に重大な不利益をもたらす企業や病院、警察、官庁などにおける組織的事象・現象のこと」と紹介した。また「他者危害の原則」として、他人に危害を与えない限り、個人や組織は自由に振る舞うことができる、という原則を紹介した。
  • 「危害」とは具体的にどのようなものか、不祥事の記事件数の推移グラフを示しながら中原さんは、80年代は暴行やいじめ、傷害などの危害、90年代からは金銭的な危害が目立ち、2000年台に入ると食中毒や品質偽装など生活に身近な危害が際立ってくるなど、変遷があると解説した。
  • 続けて中原さんは、不祥事=他者(他社)への危害と考えたとき、組織犯罪や組織事故など誰がどう見ても組織による「危害」であってそこに疑いが生じ得ない場合は、事前予防が可能な一方、私にしかわからない危害(関係的危害)が訴えられるケースが増えており、事前予防は難しく、事後的な対応にならざるを得ないという。
  • 関係的危害の例として「パロマ湯沸かし器事故」が紹介された。また最近ではSNSによって極大化しており「BMWの人種差別問題」や「丸亀製麺カエル混入問題」を紹介した。
  • また「スープストックトーキョー」の事例では、離乳食の全店無料提供と問題化がされたが、謝罪ではなく「世の中の体温をあげる」という理念に訴え賞賛を受けたことに着目。事後対応であっても、企業の理念やブランド価値の向上に結びつけることは可能であることを示す事例として紹介した。
  • まとめとして中原さんは、組織不祥事をいかに自分ごととして考えるか、とりわけ関係的危害の可能性をいかに察知していくかが大事であると話した。東南は、中原さんの話題提供を受けて、組織不祥事は「防ぐ」というより「起こりうるもの」として、「変化」と「整合」を繰り返す、レジリエンスの高い組織を作っていくことが必要なのではないかと考察した。
  • 後半、中原さんと東南によるパネルトークでは4つのテーマが設定された。①「良い内的整合と良くない内的整合の分かれ目とは」について、内的整合が取れていると思っていても、外部との整合性が意識できていない場合や社会的な基準とかけ離れている場合は、良くない内的整合なのではないかと中原さんは話した。
  • 東南は「変化と整合」の観点から、強固すぎる整合は不祥事の観点からは危うく、変化の余白が必要なのではないかと投げかけた。中原さんは、「変化に結びつかない整合」は危うく、それが長年続くことによって不祥事につながる場合もあるという。整合も保てるが変化ができ、さらなる整合につながることが望ましいのではないかと話した。
  • ②「組織不祥事を防ぐため、外部環境との整合をいかにとっていくか」について、外部環境からのプレッシャーや声が届きやすい状況なのか届きにくい状況なのかという認識をしておくのが重要ではないかと中原さんは話す。外部との”ズレ”を認識するためには、異動などの組織デザインを有効に活用したり、外部から新しい資源を投入したり、活躍している人材こそチームから抜くなどさまざまな形があるのではないかと二人は話した。
  • ③「組織不祥事の危機を察知した時に、どう組織変革に取り組むか」について中原さんは、不祥事が起きて最悪なタイミング、または最高のタイミングで変革の土壌が整っている時のどちらかなのではないかと語った。
  • ④「組織の対応性(レジリエンス)を高めるには」について中原さんは、「避難訓練」のように実際に訓練しておくことが重要なのではないかと語った。不祥事のような予期せぬ事態の「対応マニュアル」を作るだけではなく、起こってしまったことを想定してシミュレーションをしておくことが重要だと話した。

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株式会社MIMIGURI リサーチャー/ファシリテーター

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科博士前期課程修了。立教大学大学院経営学研究科博士後期課程在籍。人と組織の学習・変容に興味を持ち、組織開発が集団の創造性発揮をもたらすプロセスについて研究を行っている。共著に『M&A後の組織・職場づくり入門:「人と組織」にフォーカスした企業合併をいかに進めるか』がある。

大阪産業大学/経営学部商学科准教授

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