“厄介な問題解決”としてのデザイン科学:連載「デザイン思考のルーツから、その本質を探る」第1回
小田 裕和
デザイン思考という言葉はかなり浸透したと言っても過言ではないでしょう。2018年に経済産業省と特許庁によって発表された“「デザイン経営」宣言”は、経営においてデザインの考え方がなぜ大切になるのかを示した、日本のデザイン政策における大きな転換点であったと言えます。しかしながら、デザイン経営やデザイン思考に対する理解は、さほど深まっているようには思えません。 それもそのはず、そう簡単に理解するのは難しいのです。デザイン思考という考え方は1965年のブルース・アーチャーに始まり、多くの研究者や実践者による検討が行われてきた歴史のあるもの。もっと遡れば、バウハウスの思想や行き過ぎた工業化への反省など、幅広い背景の中で生まれてきた考え方です。単にトレンドとしてまとめられるようなものではありません。 全3回の短期連載「デザイン思考のルーツから、その本質を探る」は、こうした背景を事細かに記述することは主意ではないのですが、全体感を掴んでいただくために、1960年代以降にどのような変遷を辿ってきたのかを簡単に見ていきたいと思います。