チームの不和は、マネージャーの「隠れた感情」が原因!? セルフチェックのための6つの視点

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チームの不和は、マネージャーの「隠れた感情」が原因!? セルフチェックのための6つの視点

あなたはこんな経験はないでしょうか。

かつて自分のチームで手を焼いていた元・部下が、転職後に大活躍していると人事から報告され、面白くないと感じた。
早期退職して、地方に移住して田舎でキャンプをしている友人の充実したSNSの投稿を見たときに、何となく「いいね!」を押さなかった。

どちらのケースであれ、実際にその相手に対面すれば、内心のネガティブな感情などないように振る舞う人がほとんどだと思います。また、そもそも自分自身がネガティブな感情を持っていることに気がついてないこともよくあります。私たちは自分の感情に自覚的とは限らないのです。

もう一つ、例を挙げてみましょう。

とある大企業の課長職を務める40代男性がいます。
彼は新卒入社以来、会社一筋で働き続け、30代後半にして課長職に任命されました。自分を育ててくれた上司への恩を返すためにも、自分なりの理想のマネージャー像を思い描き、自身の業務はもちろん人材育成やケアにも熱心に取り組み、“よい課長”として周囲に慕われるようになってきました。

ところが、最近になって中途入社してきた20代後半の部下とのコミュニケーションがうまくいかず、管理職として初めて「壁」にぶち当たってしまいました。

この部下は、人当たりはよく社交的で、悪い人間ではなさそうです。しかし、入社当初から「副業」にかまけていて、定時になれば多少の業務が残っていても即退社。どうしてもその”チャラチャラ”した様子に虫唾が走り、どう指導してよいものか、手を焼いていました。

会社では副業は禁止されていないので、副業をするなとも言えません。具体的なフィードバックが思いつかないまま、時に1on1でイライラをぶつけてしまい、「もっと真面目に働け!」とつい声を荒げてしまうこともありました。

そのたびに、自分が理想とするマネージャー像との乖離に、自己嫌悪になってしまいました。

この問題を解決するために、男性にできることは何でしょうか。

一見すると、問題は”部下の業務態度をいかに変えるか?”です。しかし、その悩みを抱えている原因をさらに突き詰めて考えれば、部下の態度だけに問題があるわけではありません。マネージャー自身の「隠れた感情」も影響しているのです。

悩みの背後にある「隠れた感情」の影響

私たちが組織の中で直面する、なかなか答えの出ない厄介な問題の背景には、多くの場合、言語化しがたい複雑な感情が「隠れて」います。しかし、忙しない日常生活の中でその存在に気がつくことは、容易ではありません。

「隠れた感情」は、自分自身の根深いコンプレックスや、複雑な外部環境のもとで形成されていることが少なくありません。そのような感情に自ら目を向けるには、たいへんな気力と覚悟が必要です。またVUCA時代と言われ、不確実性や曖昧性の高い昨今では、自身の「隠れた感情」にうまく向き合えない場面もなおさら多く起こると考えられます。

自身の「隠れた感情」が発生する原因に目を向けないまま、表層的な現状認識のもとで行動したり、意思決定したりしたところで、うまくいくはずがありません。まずは私たち一人ひとりが様々な「隠れた感情」や「矛盾した感情」を持っていることを認め合うところから始める必要があるのです。

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心の奥底の「隠れた感情」を発掘する6つのテクニック

自分自身の「隠れた感情」に気がつくためには、自身の内面を多角的に捉えることが大切です。そのためのヒントとして、以下の6つのテクニックを紹介します。

・反転感情チェック
・嫉妬心チェック
・承認欲求チェック
・優柔不断チェック
・制約撤廃チェック
・他人視点チェック

反転感情チェック:真逆の感情があるとしたら?

反転感情チェックでは、既に自覚している感情と「真逆の感情」を無意識に抱いていないか確認します。やり方はシンプルで、すでに自覚している感情を、機械的に反転させてみます。例えば「会社に縛られずに自由に働きたい」といった感情であれば「会社に縛られたい」「自由になりたくない」といった具合です。

もともと「会社に縛られたくない」と考えていたのだから、真逆の感情などあるはずがないと思うかもしれません。しかし、無意識とは信用ならず、念のため「会社に縛られるメリットがあるのではないか」と疑いをかけてみることで、隠れていた感情が浮かび上がってきます。

嫉妬心チェック:嫉妬していることはないか?

嫉妬心チェックでは、自分が何かに嫉妬していないかを確認します。隠れた感情に気がつくためには、誰かに対して「羨ましい」「妬ましい」など、日々の中で無かったことにしがちな感情とも向き合うことが大切です。

本記事の最初に挙げた例のような、「本当は欲しているものなのにそうでないかのように振る舞ってしまう」といった「感情の歪み」を解きほぐしながら、本当の欲望や目標に気がつく手がかりを「嫉妬心」から探っていきます。

承認欲求チェック:言われると嬉しい褒め言葉は?

承認欲求チェックでは、自分が言われて嬉しい「褒められ方」を手がかりに、隠れた感情を掘り起こしていきます。同時に、逆のパターンである「そこまで嬉しくない褒められ方」もセットで挙げて、その違いを比較すると、より大きな効果が得られます。

「嬉しい褒め言葉」には「自分に足りないと感じているもの」が表れ、「嬉しくない褒め言葉」には「実際の強み」があらわれます。他人からどのようにみられたいか/みられなくないかを自覚し、自分の真の願望に気づくヒントを得るチェックの方法です。

優柔不断チェック:なかなか決められないことは?

優柔不断チェックでは、普段「なかなか決められない」と感じていることを手がかりに、隠れた感情を紐解きます。すんなり決められないことの背景には、感情パラドックスが働いている可能性が高く、直接的なヒントになり得ます。

なかなか決められない選択肢Aと選択肢Bがあったとき、「どちらかに決めてしまった場合、自分は何を失うと考えているのか?」や「今決めないでおくことで、自分が何かを得ているとしたら何か?」を考えてみます。そうすることで、隠れた感情が見えてくることがあります。

制約撤廃チェック:もしあの制約がないとしたら?

制約撤廃チェックでは、使えるお金や時間、身体能力、ルールなどの「制約」が無かった場合を想像してみます。1日が24時間より増えることがないように、基本的には変えられないものであっても「仮にその制約がなかったら」というシミュレーションをしてみることで自分の隠れた感情を探ります。

あらゆる制約ではなく、具体的な制約を少しだけ撤廃してみることがポイントです。ちょっとだけ“欲張り”な状況の自分を想像することで「どうせ無理だろう」と仕方なく諦めている「抑圧された感情」を刺激することができます。

他人視点チェック:周囲からのツッコミどころは?

他人視点チェックでは、他人の目線を借りて自分の言動に「ツッコミ」を入れてもらいます。人は自分自身の感情の矛盾には鈍感な一方、他人の言動の矛盾には敏感です。

心を許せる誰かに、今悩んでいる厄介な問題について相談しながら「話を聞いて、矛盾していると思ったことがあったら教えてほしい」とお願いしてみましょう。具体的な友人を想像して、その友人であれば自分にどんなツッコミを入れるだろうか?と考えてみるだけでも、他者視点から、自分を客観的にメタ認知するきっかけになります。

新刊『パラドックス思考 ─ 矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』

安斎勇樹と舘野泰一による最新刊『パラドックス思考 ─ 矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』では、隠れた感情を発掘する6つのテクニックについて、より具体的に解説しています。

本書で提案する「パラドックス思考」とは、問題の背後にある感情パラドックスに注目することで、ややこしい問題や悩みの解決方法を体系化したもの。かねてより「矛盾」に注目して探究をしてきた二人が、パラドックスについて、その向き合い方と対処法を提示。「AかBか」二者択一の答えを導くのではなく、AとBをどちらも犠牲にせず両立させる答えを出すための戦略をご紹介します。
本書は、3月1日の発売に向けてAmazonで予約受付中です。ぜひご予約ください。

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著者

立教大学経営学部 准教授/株式会社MIMIGURIリサーチャー

1983年生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒業。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学後、東京大学大学総合教育研究センター特任研究員、立教大学経営学部助教を経て、現職。博士(学際情報学)。専門はリーダーシップ教育。近著に『パラドックス思考 ─ 矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる』『これからのリーダーシップ 基本・最新理論から実践事例まで(共著)』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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