12/24(土)に開催した「好奇心を科学する:個と組織の「探索力」を育む理論」のアーカイブ動画です。本イベントでは、講師に西川一二先生(収録当時:大阪公立大学 特任助教授/京都大学教育学研究科 研究員|現所属:大阪商業大学 総合経営学部商学科 講師)をお迎えし、好奇心は何を対象として起こるのか、職場における好奇心の影響、好奇心との向き合い方について考えました。
チャットログはこちら
「好奇心を科学する:個と組織の「探索力」を育む理論」のチャプター
00:11 CULTIBASE Labの紹介
8:30 チェックイン
14:27 本日のテーマ組織の中での「好奇心」
15:28 西川先生による「個人の好奇心と組織との関係性」の講義
19:23 好奇心とは何か?
28:35 好奇心のタイプとは?
38:32 好奇心はどんな領域で発揮されるのか?
44:06 好奇心は仕事にどう影響するか?
51:55 西川先生が好奇心に関心を持ったきっかけ
57:21 好奇心を持ちやすい人と持ちにくい人は何が違うのか?
1:07:08 パネルディスカッション「拡散的好奇心と特殊的好奇心の心地よいバランスとは?」
1:15:16 パネルディスカッション「好奇心が発揮される/を高める環境をどうつくるか?」
「好奇心を科学する:個と組織の「探索力」を育む理論」のポイント
まず西川は好奇心に関する基礎研究を振り返った。心理学における好奇心研究の発端は動機づけ研究であり、好奇心は内発的動機の源とされてきた。近年の感情研究では全ての哺乳類に見られる適用的な行動の動因として探索(Seeking)が挙げられ、これは人にとっての好奇心と言われる。
2000年代では好奇心の分類、尺度研究が広がってきたが、それぞれの分類の仕方や捉え方は未だにはっきりと定まっていない。
西川は、好奇心の種類について、「好奇心の探索のメカニズムや方略(好奇心のタイプ)」「好奇心の探索の方向性(好奇心の領域)」の2つの視点から分類できると語る。前者はどのように知りたいか、後者は何を知りたいか、に焦点を当てたものだ。
好奇心タイプの分類としては、特殊的好奇心と拡散的好奇心が認知、feelingに与える影響に関する研究がある。特殊的好奇心が強い人は、複雑性に対して美しさを感じていく傾向がより強く見られ、拡散的好奇心強い人は理解困難な絵を見た時のワクワク感の低下が小さい。前者のタイプは一つのことを深掘る傾向が、後者のタイプは幅を広げていく傾向があると述べる。
好奇心の領域に関しては、応用研究では仕事場面での好奇心、学習場面での好奇心について研究がなされている。仕事場面の好奇心では、例えば上司の好奇心が部下にどのような影響を与えるか?(Thompson & Klotz, 2022)という実証研究においては「上司の好奇心の高さが、部下の仕事への心理的安全性がが高まり新たな仕事への発言力が高まる」という結果が出ていると語る。今後は学生、会社員といった所属に関係なく人に共通した基盤的好奇心領域に関して尺度化し研究を深めていきたいと述べた。
パネルディスカッションでは、小田自身の特性として拡散的好奇心が特殊的好奇心よりも強いといい、各好奇心を強めるには環境にも依存するのではないかと問いかけた。
この問いに対し、好奇心を深めたり広げたりするための足場掛けをデザインする際には、先回りして面白いものを用意しておくというよりはその人自身の好奇心の矛先を知ることが大事なのではないかと田幡は指摘する。
ディスカッションを通して、お互いが何に興味を持っているかを開示し合える関係性、好奇心をありのままキャッチする姿勢が重要であり、それは対話に通ずる部分があるのではないかとの気づきが得られた。職場においても、メンバーの好奇心を高めようというトップダウン的な誘導よりも、対話しながら互いの好奇心を鑑賞する場があるとよいのではないかと結論づけた。