参加者の集中を促すイントロダクションのコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第1回

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参加者の集中を促すイントロダクションのコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第1回

連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」では、ワークショップの実践に役立つファシリテーションのヒントを紹介します。第1回のテーマは「参加者の緊張をやわらげ、集中を促すイントロダクションのコツ」です。

ワークショップの冒頭で行われる「イントロダクション(導入)」では、主催者やファシリテーターの自己紹介から始まり、ワークショップの目的や開催に至るまでの背景、プログラムの流れなどがファシリテーターから語られます。「必要な情報をアナウンスするだけ」と聞くと一見簡単にこなせるように思われがちですが、ワークショップの場合は、ファシリテーターと参加者、また参加者同士が当日初めて顔を合わせることも多く、ほとんどの参加者が大なり小なり緊張し、やや注意散漫な状態にあることも珍しくありません。そのため、ファシリテーターはまず自分の話をしっかりと聞いてもらえるように、参加者の気持ちを落ち着かせるような振る舞いや場づくりを心がけることが重要となります。

ファシリテーターにとってイントロダクションは、その次に行われる「アイスブレイク(第2回で取り上げます)」と合わせて、ワークショップにおける最初のハードルといえます。事実、20年以上活躍されてきたエキスパート実践者の方々にお話を伺うと、非常に多くの方がこのイントロダクションとアイスブレイクを特に力を入れるポイントとして挙げています。

今回は、そんなイントロダクションをファシリテートする上で助けとなる3つのヒントを「状況」「行動」に分けて紹介します。

■今回紹介する3つのヒント
・「ファシリテーターがまず自己開示をする」
・「グランドルールをイントロダクションで明示する」
・「その日の目的とゴールは冒頭で明確に伝える」


「ファシリテーターがまず自己開示をする」

【状況】
ワークショップでは、テーマによって程度に差はあれ、参加者の個人的な経験談や、生活における価値観、テーマに対する意見の表明など、プログラムのいたる場面で参加者に一定の自己開示を求めることがあります。特に対話を重視したワークショップでは、私を主語にして価値観を交錯させることを重視するため、一人ひとりの自己開示なくして深い場をつくることはできません。

ところがワークショップでは参加者同士が初対面であることも多く、共同体の中で既に人間関係を構築していたり、ストレスなく自己開示ができる環境が整っているとは限りません。そのためファシリテーターはワークショップの冒頭やアイスブレイクの場面で参加者の緊張をほぐすための工夫を施しますが、踏み込んだ自己開示を要求するアイスブレイクは、かえって緊張を悪化させてしまう場合もあります。

【行動】
いきなり踏み込んだ自己開示を参加者に要求する以前に、まずはファシリテーター自身が自己開示をしておくことが必要です。イントロダクションで自己紹介をする際に、所属や肩書きを述べるだけでなく、どのような経緯でワークショップを企画したのか、どのような想いで今この場に立っているのか、ファシリテーターとしての背景を伝えておくことは参加者との信頼関係を構築する上では大切です。

また、テーマに関係しなくとも、趣味やプライベートの話など、親しみのわく自己紹介をしておくことも、場の安心感につながるかもしれません。自己紹介の後も、参加者に自己開示を要求するワークを展開するときには、アウトプットの例として自分自身の回答を共有するとよいでしょう。「あなたの弱みを教えてください」と問いかけるだけで、自分自身の弱みを話そうとしないファシリテーターには、参加者は心を開かないはずです。ファシリテーター自身が対話の場の一人の参加者として、フラットに場に関わることを忘れてはなりません。

「グランドルールをイントロダクションで明示する」

【状況】
ワークショップという実践は、普段とは異なる視点から発想する「非日常性」や、参加者一人ひとりの意見を尊重しながら対話や議論を深めていく「民主性」や「協同性」、また正解よりもプロセスを重視した「実験性」などの特徴にその本質があります。

しかしながら、ワークショップの参加者全員がそうしたワークショップの特徴を理解しているとは限らず、参加経験が少ない参加者の中には、ワークのなかでどのように振る舞えばよいかわからない場合もあるかと思います。そのため、ワークショップがどのような場で、どのような振る舞い方が望ましいかをきちんと説明しないまま進行してしまうと、他の参加者の意見を頭ごなしに否定するなど、ワークショップにそぐわない発言や行為が発生するリスクがあります。

【行動】
ファシリテーターは、事前にワークショップにおけるグランドルールを設定しておき、イントロダクションで参加者に明示するとよいでしょう。グランドルールとは、ワークショップをスムーズかつ効果的に進行するために、参加者が意識すべきルールや振る舞い方のガイドラインのことです。

例えば「自分を主語に語る」「相手の話は途中で遮らない」「自分の発言は3割、傾聴を7割の割合で」「良いアイデアを出そうとしない」「他の人の意見を否定しない」など、ワークショップの目的に合わせた簡潔なルールを設定すると有効です。グランドルールは多すぎず、3〜7つ程度、それぞれの文章は長すぎず簡潔なものがよいでしょう。また、グランドルールそのものを参加者と議論しながら決めることも効果的です。

「その日の目的とゴールは冒頭で明確に伝える」

【状況】
ワークショップではほとんどの場合、開催者やファシリテーターが、場を開く目的や意図、伝えたいメッセージを持っています。その際、少しでも参加者を楽しませたいという意識が空回りし、ワークショップに込めた思いや学習目標を、種明かしをするかのように最後に伝えようとする場合があります。しかしながら、参加中のワークショップの目的や意図が不明瞭な状態では、参加者は何のために参加しているのかわからなくなり、目の前の活動に没頭できなくなってしまうことがあります。

【行動】
ワークショップの冒頭や導入で、このワークショップがどういう目的で開催されていているのか、学習目標やプログラムの設計意図も含めて、参加者に伝えることが重要です。その際、ワークショップ中に考えてほしい問いや注意点を箇条書きにしたり、全体構造を図式化したスライドを用いるとよいでしょう。

また、目的に合わせて参加者がワークショップに参加したいと強く思えるような文脈を強調することで、場全体の意欲向上を図ることも有効です。ワークショップによって獲得可能な学びの社会的な重要性や、メインワークとして行う活動の面白さなど、ワークショップの魅力が充分に伝わるような語り口を意識してみましょう。

今回は「参加者の集中を促すイントロダクションのコツ」というテーマでワークショップ実践におけるちょっとしたヒントを紹介しました。ぜひ次回のファシリテーションで試してみてはいかがでしょうか?

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ワークショップ・ファシリテーションのヒント

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100年以上の歴史を持ち、コラボレーションを通じた「学び」と「創造」を促す方法として注目される「ワークショップ」。そのワークショップを行うファシリテーションの実践知も多岐に渡ります。CULTIBASEでは、これまで熟達したファシリテーターの実践知を数年に渡りリサーチしてきました。特集「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」では、こうしたリサーチをもとに、明日の実践ですぐ使える、ちょっとしたファシリテーションのコツを紹介します。

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著者

法政大学経営学部経営学科卒業。大学在学中からワークショップを中心とした対話の場のデザインを学び、2017年より参画。MIMIGURIでは編集者としてCULTIBASE事業におけるコンテンツの企画・制作を担当。創造性の土壌を耕すための知を編み直し、社内外に届ける役割を担っている。

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