短期連載「アナロジー思考の秘訣」では、論理的思考では辿り着けない、飛躍した発想を得るための思考法「アナロジー思考(analogical thinking)」について、その特徴や手順について解説します。
前回の記事では、「婚活支援サービス」というソースから、ターゲットである「就活支援サービス」にアイデアを借りてくることで、発想を飛躍させる具体例を紹介しました。
アイデアは“似ているもの”から飛躍させる:連載「アナロジー思考の秘訣」第1回
アナロジー思考の具体的な手順は第3回目以降に解説しますが、今回はアナロジー思考を支える「似ているものを見つける」という認知過程について、掘り下げておきましょう。上記の例でいえば「就職と結婚は似ている」と気がつくことが、アナロジー思考の出発点だからです。
目次
“似ているもの”をどのように見つけるか
ミッキーマウスとマリオは似ている!?
意味が似ているのか、仕様が似ているのか
“似ているもの”をどのように見つけるか
そもそも「似ている」とは、なんでしょうか。「似ている」ということは、「全く同じ」ではなく「共通性」がありながらも「異なるもの」ということですから、実は「AとBは似ている」と気がつく思考プロセスは、きわめて複雑です。類似性を見つけ出す技能は、人間が保有する創造的な能力のひとつといえます。
よくある質問に「自分を動物に例えると?」という質問がありますが、これはまさに自分に「似ている動物」を探索させる、アナロジー思考を用いたシンプルな質問です。たとえば「猫」という回答ひとつとっても、理由は「猫顔だから」という人もいれば、「人見知りだから」という人もいるでしょう。この「似ている理由」のバリエーションに、アナロジー思考のヒントが詰まっています。
ミッキーマウスとマリオは似ている!?
たとえば「ミッキーマウス」と「マリオ」は、キャラクターとして、似ているでしょうか。似ていないでしょうか。セミナーなどでこの例を挙げると、多くの人に「考えたことがなかった」「そんなに似ていないのでは..?」という反応をされます。
けれども写真をじっくり見比べてみると、体型や顔の輪郭、丸みを帯びた鼻、いつも笑顔の口、白い手袋、ズボンの2つのボタン、ポテっとボリュームのある靴など、意外に姿かたちが似ています。そこに目をつけたのか、海外のアート作品にはこんな(ちょっと怪しい)キャラクターも..。
Dave Bondi氏の作品 http://davebondi.com/
「ミッキーマウス」と「マリオ」が似ているのは、ルックスだけではありません。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、マリオを題材とした「スーパーニンテンドーワールド」に期待が集まっていますが、マリオもミッキーも、どちらもテーマパークとなるほど、国内外で愛されるマスコットキャラクターという点でも、共通点を持っています。
SUPER NINTENDO WORLD™
https://www.usj.co.jp/web/ja/jp/areas/super-nintendo-world
意味が似ているのか、仕様が似ているのか
これらの例からわかることは、AとBが「似ているかどうか」は、「意味」が似ている場合と「仕様」が似ている場合があるということです。
アイデアは意味と仕様の結びつきである
ミッキーもマリオも似たような手袋をしている、というのは「仕様の類似性」ですが、世界的に愛されるマスコットキャラクターであるという点は「意味の類似性」だといえます。
アナロジー思考で発想するときに「意味が似ているのか」「仕様が似ているのか」この2つを区別することが、実はとても重要です。次回からは「意味の類似性」を起点としたアイデア発想と「仕様の類似性」を起点としたアイデア発想のそれぞれのアプローチのアナロジー思考の方法を解説します。