OKRマネジメントを機能させる17のコツ

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OKRマネジメントを機能させる17のコツ

個人が自律的に動き、チームで協働して成果をあげるためには、チームにおける目標/業務のつながりを全員で意識できるOKR(Objectives and Key Results:目標と主要な結果)の策定が肝になります。大上段となる目的から紐解き、どうすればその目標を実現できるのかを一人一人が理解できる組織環境づくりが大切です。

特に、昨今のコロナ禍でリモートワークに移行する企業にとっては、対面で働いていたときに比べ、チームメンバー間での齟齬が発生し、対話コストがかかる…そう感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。リモートワークでは作業が個人レベルに分断されてしまいます。普段の日常業務では気軽に相談して担保できていたことが出来なくなり、要求水準の乖離の発生や、自己タスクに必要与件が渡されず待機発生するケースも存在します。

すでにOKRを導入されてる企業も多いかと思いますが、うまく駆動できないというマネージャーの方の悩みも耳にします。本記事では「実際にOKRを取り入れている実践者」の方向けに、よりOKRがうまく機能する為のコツを17個まとめてご紹介します。

目次
活きた組織にするため、改めてOKRを理解する
OKRを立てる際に躓きやすいポイントを意識する
メンバー目線でのOKRを組み立てるコツ
マネージャーがメンバーとOKRを組み立てるコツ
新人研修で考慮すべきポイント

活きた組織にするため、改めてOKRを理解する

コツ01:組織のWhyとHowを全てツリーで繋げる

「なぜ目の前のタスクをやる必要あるのか?」を理解することで、はじめて人は自ら動くことができます。ゆえに自律した組織づくりには「なぜ」「なにをするか」の可視化が必要です。

OKRは、「なぜ」から考え「なにをするか」を決める「Start with Why」のフレームワークをベースに、組織の「なぜ」から「チーム/個人の目標」へツリー状に繋げていきます。それにより「自分は組織へどんな貢献をしてるのか?」の理解を深め、自走できるようになるのです。

コツ02:チームのビジネスモデルにする

組織はあらゆる複雑な要素で構成されます。捉えどころのない物体に骨組みを入れ、構造化したのが「ビジネスモデル」です。OKRはこのビジネスモデル化を、チーム単位まで浸透させていきます。

OKRを組み立てた際、「それはWhyでなく、Howだね」とフィードバックされた経験がある方も多いのではないでしょうか。これは「ビジネスモデル化」されておらず、「やること」がただ並んだだけの表になっているということです。

コツ03:「MBOは利益エンジン、OKRは組織づくり」と理解する

MBO(Management By Objective:目標管理制度)はP/Lから分解した営業利益達成を基本とし、100%必達の目標として設定します。MBOの多くはトップダウンで決められることも特徴です。対して、OKRは70%程の達成で良しとされます。これは「今よりも事業をスケールさせる」「組織をより改善する」という「組織資産づくりの視点」が大きいからです。またOKRは、ボトムアップのチームづくりが思想にあることも大きな違いといえます。

OKRを立てる際に躓きやすいポイントを意識する

コツ04:協同関係者の利害関係を理解する

OKRを設定する際、「チームメンバー」「上位者」「他チーム」との利害調整を蔑ろにし、後から厳しいフィードバックを受けたことがある方も多いのではないでしょうか。OKRはチームの「ビジネスモデル化」です。企業が「顧客」「協力会社」「従業員」と協力関係を築く必要があるように、チームも「協働関係者」と接合する必要があります。自分の目標だけでなく、必ず「協働者」と「互恵関係」になるよう調整しましょう。

コツ05:組織OKRにひねる蛇口をつくる

一見整合したOKRでも、いざ稼働すると「施策の優先順位」がついておらず、複数の施策を同時に行う必要がでて「何から手をつけて良いか」わからなくなることがあります。OKRツリーをつくるコツとして、どの蛇口を回せば数値が上がりやすくなるかを考えつつ、優先順位を反映した設計にする必要があります。

コツ06:チーム立ち上げ時は、まず仕組みづくりをする

チームが初めてOKRを導入する際に、OKRのKR設計において「具体的な定量指標」が設計しづらく、悩まれているケースをよく耳にします。立ち上げ時はまず「仕組みづくりの進捗割合」をKRにするのがお勧めです。できた後は取得できた数値を参考にし、次回から定量設計がしやすくなります。立ち上げ時には「How」ドリブンに感じられたとしても、まずOKRそのものをつくりあげることが大切です。

コツ07:説明責任の経験を積みやすいよう、並走して心理負荷を下げる

OKR立ち上げの大きなハードルが「説明責任」です。自分の目標(責任)を決め、人とすり合わせることは、経験がないうちは回避的になりがちです。頭では分かるのに、心の重荷で人と調整できなくなる事もありますよね。

この問題に対しては、「自分の責任」で説明する機会を増やすことと、育成担当者が「並走し一緒に責任を持つ」ことで心理安負荷を下げ、場に臨ませやすくすることが大切です。少しづつ成功体験を積むことが「人との調整」を恐れないようになる鍵です。

メンバー目線でのOKRを組み立てるコツ

コツ08:自分起点で動くための武器としてStart with Whyを身につける

OKRは「チーム接合が大切」と言われますが、同時に「自分起点で組み立てろ」と言われます。一見相反する様に見えますが、「Whyと接合されているならば、Howは自分起点で好きに考えなさい」ということです。Whyに繋ぐセンスが高い人は、自分のやりたいHowと自由につなげ、好きなことを組織内で行うことができます。そうしたボトムアップで組織を動かす人を増やすことが、Start with Whyの目的です。

コツ09:キャリアレバレッジがきく「協働スキル」を磨く

OKR等の目標設計スキルは「チームで協働する」のに必要なため、事業会社では基本教養とされます。技術が高くても「他者と協力」できなければ成果はだせないため、技術専門キャリアを目指す場合でも必須です。近年、「広く深い専門性」を発揮する「ディープジェネラリスト」が現れていますが、こうした人材は「チーム協働スキル」が高いため、あらゆるシーンで活躍できる特徴があります。「協働スキル」は長いキャリアで一生物なので、ぜひ勉強をお勧めします。

コツ10:やりきることで学習サイクルを回す

経験の浅いうちは、実際にやってみなければOKR設計が上手くいったかどうか分かりません。どんなOKRでも、一度設計したら「やりきること」が大切です。後から設計の拙さを感じても、やりきることで初めて「学習サイクル」が回り始め、改善に繋がります。学習できない人の特徴は、目標に対して「あとから理由をつけて、やりきらず放棄すること」にあります。迷いが生じても我慢し、必ず期間中にやりきり学習サイクルを回すことが大切です。

マネージャーがメンバーとOKRを組み立てるコツ

コツ11:相手目線に立ち、丁寧に情報構造化して教える

マネージャーとメンバーの、目標設定期間に起こるエラーの大半が「理解範囲の差」です。指導を受ける側が「何をすればいいですか?」と指示待ちになるケースがありますが、これは意欲が低いわけでなく、理解が追いつかず提案できないだけの場合が大半です。こういった場合は相手目線に合わせ、「OKRにおける情報のつながり」を説明する必要があります。また同時にメンバーも「何が分からないのか?」を言語化し、指導側に伝えることでお互いにすり合わせることが出来ます。

コツ12:解像度の高い状態でメンバーに渡す

OKRの基本はボトムアップでHowを考えるというものです。しかし「ボトムアップ」は「ボトムアップで考えたことへの承認」により初めて実現します。マネージャーが「落とし所がわからないまま」メンバーに任せてしまうと、承認もアドバイスもできず目標がいつまでも決まらないエラーが発生します。大原則で必ずマネージャーが「承認範囲の解像度≒Whyに対する解像度」を高めた上で渡す様にしましょう。

コツ13:事業に必要な知識を正しく理解させる

事業構造(市場・顧客・会計・管理…)により、Whyも大きく異なります。逆説的にいえば、事業に関する知識を知るだけで理解が大きく促進されます。また技術構造(営業・人事・BO・開発…)の知識も知っているだけで、適切なHowの落とし込みができるようになります。メンバーが全ての知識を学ぶ必要はありませんが、自社の事業特性を理解し、自分が関わる業務の学びを進めるだけで、設計負荷を大きく下げることが可能です。

コツ14:承認を得るのが目的になってしまったら、チューター支援を行う

コトに向かい壁打ちして進めるにはトレーニングが必要です。まだOKR策定に慣れていないメンバーの場合、「フィードバックされる=自分が認められていない」という認識になることがあります。その状態になると「合理性」より「承認をいかに得るか?」が目的になり泥沼になりがちです。この場合は役割を2つに分け、「チューター」が相談を受けながら支援し、「承認者」が承認する形にすると驚くほど上手くいくことがあります。これは[コツ08]で述べた「説明責任負荷削減」のアプローチにも繋がっています。

新人研修で考慮すべきポイント

コツ15:協働スキルを高めるために「国語力」を身につける

筆者の経験則ですが、協働スキルが高い方は「国語力」があります。勉強の基礎は「国語力」とされますが、これは「正しい意味を読み解く力」「正しい意図を書いて伝える力」が全ての基本にあるからです。組織でも同様にこの2つがないと、他者と協力関係を築くことができません。特にリモートワークの場合、この傾向は顕著にでるのではないでしょうか。OKRは組織を文章構造として可視化したものであり、読み解くにも書くにも「国語力」が必要になります。

コツ16:帰納演繹を意識して文章を書く

OKRの基本は「ロジカルライティング」です。帰納法・演繹法を活用しながらライティングを行うことで、わかりやすいツリー表にすることができます。日本語構造を明確にしながら「Why」と「How」を第三者に正確に伝える文章を書くことが大切です。OKRには多くの育成者が悩みますが、正しい日本語作文を身につける研修を行うことが一番の近道です。OKRを教材としながら日本語添削を行うことで徐々に目標設計はできる様になります。

コツ17:組織の文脈を正しく読む

全ての組織情報が、対称性のある状態で手に入ることはありません。組織に散らばる情報をつなぎ合わせ、文脈を読み解くスキルが他者と協働する上では大切です。また「情報を眺める」だけでなく「情報を頭の中で構造化」して初めて、文脈を読んだといえます。OKRは組織文脈が構造化された表です。さながら証明問題を解くように仮説を組み立てるとうまくいきます。

最後に

OKRなどの協働スキルが自由に使いこなせれば、長いキャリアにおける強い基盤を身につけたと言うことができます。特に、リモートワークを推進している組織では、物理環境が離れているからこそ、互いに「Start with Why」を意識することが重要です。

OKRが組織全体で駆動すると、パフォーマンスが何倍にもなり、地味ではありますが、確実に効くシステムです。ぜひ今回のコツを参考にしながら、「組織の血をより滑らかに動かす」ためにOKRの改善に取り組んでいただけたら嬉しいです。

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著者

株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO

早稲田大学卒業後、家電メーカー勤務を経て独立。現在は、MIMIGURIが提唱するCCM(Creative Cultivation Model)の理論開発を基盤に、大企業からメガベンチャーまで様々な多角化企業における、経営・組織変革の専門家として自社経営とコンサルティングにおいて実践を進めている。

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