8/14に開催されたイベント「職場の創造性を高めるルールのデザイン」のアーカイブ動画です。本イベントでは、チームの創造性を引き出すための「自由」と「制約」のデザインをテーマに掲げ、法律家であり、現在開催中の企画展「ルール?展」の展覧会ディレクターチームの1人でもある水野 祐さんをゲストにお招きし、「ルールのデザイン」について探究しました。
<今週のポイント>
・今回のゲストは法律家の水野祐さん。「法を駆使して創造性、イノベーションを最大化する」をミッションに、物事や社会を良い方向に誘導したり、加速させたりするための補助線として法を捉える「リーガルデザイン」を提唱している。
・法律・校則・社則など、一般的にルールは自分たちを縛り、抑圧するものだと考えられている。その要因には、そのルールが自分たちのものではなくなく、ルールづくりに参加できていないという感覚を持ってしまっていることが挙げられる。人々の主体性・創造性の発揮を後押しするようにルールを活用するためにはどうすれば良いのだろうか。
・例えばNetflixではルールをなくした自律型のカルチャーを重視することで知られる。しかしNetflixの場合は、「ルールという制約が生み出す自由」を最大限活用することがワーカーの主体性・創造性の向上に繋がっていると水野さんは指摘する。ルールをシンプル化(プリンシプル化)し、枷ではなく指針として活用することが可能であり、例えば「〇〇してもよい」なども一種の主体性を促すルールとして機能する。
・また、設定したルールがメンバーへのメッセージになることもある。そのため、コミュニケーションや一部としてルールを捉え、「ルールがどう伝わり、どのように解釈されているか?」の観点から組織づくりやファシリテーションに活かすこともできるのではないか。
・ルールは不変的なものではなく、可変的で、柔らかなものだと捉える視点が重要である。特に不確実性の高い現代においては、ルールを破る自由などもを認めながら、ボトムアップで生成的な設計論を行う必要がある。
・「作って終わり」のルールは個人や組織の思考停止を招く。定期的に見直すことをルールとするなど、アップデートの機会を設けることがルールを自分たちのものとして活用する上では大切である。
・ルールからの創造的な「逸脱」をどう捉えるか。水野さんは、逸脱を認め、それによってルールを適したかたちにアップデートする姿勢が持つことが重要だと語る。逸脱は一種の“バグ”のようなものであり、適切に対応することで、ルールや組織をより強くしなやかなものにするきっかけにすることもできるだろう。
今回のイベントのタイトルを目にした時、「ルール」と「創造性」がいかに結びつくのか、疑問に思うかもしれません。CULTIBASE風に、「ルール」と「創造性」の間に何か挟むとしたら、そこには「場づくり」という言葉が入るのではないかと思います。例えば、(イベント中でも紹介されていましたが)ワークショップの冒頭でファシリテーターがその日のグランドルールを確認することがよくあります。それも一種の「場づくり」であり、「この場が何をしても良く、何をするのが望ましくないのか?」を示すことで、参加者が安心して振る舞うことができるようになります。こうした「ルールによって場がつくられ、場があるからこそ主体的・創造的に振る舞える」という一連のプロセスは、日常的な組織づくり・チームづくりでも十分生み出せるものと考えています。
また、「場」はその組織にいる人たちに共通するものですので、二人以上のメンバーが同じ「場」に目を向けることで「共創」することが可能となります。こうした関係性は、先週8/7と7/17にそれぞれ開催した、「CIリニューアル」や「ブランディング」をテーマとしたイベントからも見て取れます。つくる対象が「ルール」なのか、「CI」なのか、それとも「ブランドとしてのあり方」なのかといった違いはあるにせよ、「自分たちらしい何か」をつくることによって、自身の文化やオリジナリティに目を向けるきっかけとしていくことが、ボトムアップ的に組織を活性化していく上では重要なのでしょう。
加えて、イベントの中で水野さんが語っていた「つくって終わりにしない」というのも、非常に重要なポイントです。組織は常に変わりゆくものだという前提のもと、ただし手を抜くのではなく、つくる活動に全力を注ぎながら、そのプロセスの中で得られる気づきを大切にする。組織ファシリテーターとして活躍するためには、そのような共創の場づくりの担い手としての姿勢やスキルは欠かすことができないものだと改めて実感しました。「ルールづくり」は、組織レベルだけではなく、二人からでもできますので、ぜひ同じ職場の人たちを巻き込んで、「自分たちらしいルールづくり」をやってみてはいかがでしょうか?