8/7に開催されたイベント「CIリニューアルの実践知-組織の内外に価値が伝わる仕組みと戦略」のアーカイブ動画です。本イベントでは、CULTIBASEを運営する株式会社MIMGIURIからヒロ・カタヤマと濱脇賢一が登壇し、両者が手掛けた株式会社MISH(旧・三島新聞堂)のCIリニューアルプロジェクトの事例をもとに、組織と事業が一体となって生まれ変わるための仕組みと戦略について解説します。
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<今週のポイント>
・CIは、MI(マインド・アイデンティティ)と、BI(ビヘイビア・アイデンティティ)と、VI(ビジュアルアイデンティティ)によって構成される。MIMIGURIではこのうちMIを、組織戦略(WHAT)・経営戦略(HOW)・組織文化(WHY)ごとに細分化。背景にある戦略や構造をも統合した視点から全体設計を行い、組織学習を促していくことを重視している。
・株式会社MISHでは、新聞事業の市場縮小にともない、広告事業の成長が急務と考えられていた。収益構造・組織文化の変容が求められる中で、2019年11月から2021年2月までのプロジェクトが始動。CIリニューアル、コーポレートブランディング、コミュニケーション戦略策定に加え、事業計画策定や体制変更など、全般的な事業改革・組織改革を行った。
・プロジェクトの前半では、自分たちが求めている要素が「理念」なのか「文化」なのか「価値」なのか、“求めている箱は何か”から議論した。ワークショップを通して得られたキーワードをもとに、自分たちの存在意義を「有益な情報を提供する」と位置づけ、既存の顧客との関係性を絶えさせず、新聞事業から広告事業へ移行していくことで合意した。
・後半では、コミュニケーション・パスの設計、PRのあり方を議論した。表層のメッセージよりも先に、まずは業務オペレーションやプロセスなどの内側の部分を整理した。また、専門家として入りながらも、組織内の組織開発に対する学習を促していき自走可能な組織づくりを目指した。
・VI策定に移行する中で、ブランドブックや内部浸透資料を作成し、新たなビジュアルがクライアントの歴史や、既存のビジネス戦略を踏襲したものであることを強く訴求した。
・VIはロゴや規定だけを指すものだけではない。VIはシンボルを中心に参加を促す共感マネジメントシステムであり、ただ美しいロゴをつくるだけでは機能しなくなりつつある。旧来はトップからの厳しい「規約」に基づいてデザインが行われていたが、現代では皆が共感し、参加を促すVIの活用が重視されている。
・基本的にCIやビジョン策定の大枠はトップダウンで行われ、現場レベルで抜本的な変革は難しい。ただし、CIを変えたいと思うならなぜそう思うのか、具体的なケースや要因を特定し、対処することはできる。
・ハレーションを防ぐ意味でも、既存事業が新たなCIとどう関連するのかは綿密にコミュニケーションを取っていくことが大切となる。事業担当者のこだわりをヒアリングしながら、共感のポイントを見つけるところから始めると良い。急に大枠を変えようとしても結局うまくいかないので、全体像のうち自分が持っているパスが何かを認識しながら、できるところから対話的にアプローチしていくことが重要である。
・地道なコミュニケーションから始める必要があるのはVIも同様である。プロトタイプを示しながらビジュアルを通じて協同的に意見のすり合わせを行っていくことが、納得感のあるアウトプットづくりに繋がっていく。
・今回のプロジェクトの組織デザイン上のポイントとしては、組織全体のことを考えてたいと思っている人にきちんと情報が行き渡るようにレポートラインと業務オペレーションを整理した点が挙げられる。新たに創り上げたミッションに合わせた事業戦略の視点から、既存事業と新事業の二つのチームの役割が明確になるように組織構造を変え、CIが浸透しやすい設計を施した。
株式会社MIMIGURIの前身となるミミクリデザインとDONGURIが横断経営を始めたのが2020年3月。そしてその年に、それまでミミクリデザインが運営してきた「WORKSHOP DESIGN ACADEMIA(WDA)」は「CULTIBASE」としてリニューアルしました。個人・チームの学びと創造を促進するワークショップデザインだけではなく、より広く、より多様に、組織全体の経営における知の提供を目指して行われた此度のサービス刷新は、組織デザインや制度設計を専門とするDONGURIというパートナーの存在があってこそ実現したものでした。
今回のイベントでは、DONGURIからのメンバーであるヒロ カタヤマと濱脇賢一が登壇し、まさにCULTIBASEへの成長に欠かせない要素だった、組織全体のマネジメントや構造づくりを主に扱う内容となりました。テーマは「CIリニューアルの実践知」。MIMIGURIが手掛けたCIリニューアルプロジェクトを事例に取り上げながら、事業や組織全体が生まれ変わるためには、まず何から手をつけ、どのようなプロセスを設計すると効果的なのか、ポイントを解説しています。CIというと、ロゴやコーポーレートメッセージなど、表層の部分にのみ目が向きがちです。しかしながら、組織のメンバーが同じ方向を向き、強い帰属意識を持って行動するような、本当のシンボルとして機能するためには、なぜCIを作り変える必要があったのか、新しいCIに込められた意味とは何か、そして、そのCIが掲げるミッションを実現できる組織体制になっているかどうかを対話的に語り合い、注意深く検討していく必要があります。
冒頭で語られていた通り、本イベントでは、CULTIBASEが掲げる
組織の創造性を高める:Creative Cultivation Modelの提案
の上層の部分を主に扱っています。
プレイヤーや現場マネージャーの方々からすると、やや身近に感じにくいテーマかもしれません。しかしながら、創る対象がCIやVIなどの組織に大きな影響を与えるものであるという違いこそあれど、「目的に沿った新しい何かを、対話を通じて共創する」という姿勢に関して言えば、ワークショップをデザインするファシリテーターに通底するものがあるのではないでしょうか。今回のイベントから、チームを対象に培ってきた対話による共創の精神が組織づくりにおいても非常に大切であることがわかると同時に、逆に言えば、「ものを創る」ということが組織に対話をもたらす契機になりうるのだと改めて思わされました。
参考:WISHに光を当てる。100年の歴史と共に生まれ変わる「MISH」CIリニューアル。
https://www.don-guri.com/works/mish/