事業の課題、組織の課題、職場の人間関係の課題・・・
組織内で日々発生する課題は多種多様です。また、これらを個別に解決しようとしても、課題のもぐらたたきのようになってしまい、本質的な解決に至らないまま、組織やチーム全体が疲弊してしまうことも少なくありません
組織課題を解決するためには、まずはその課題を個々の部門だけの問題とするのではなく、異なる部門やヒトとの”関係性”のなかで起こるものだと捉える必要があります。こうした中で、CULTIBASEを運営する株式会社MIMIGURIでは、異なるセクション同士が対話を通じて整合性を取り、組織づくりを推進するための羅針盤「Creative Cultivation Model(通称:CCM)」を提唱しています。
シリーズ「CCM総合実践講座」では、このCCMを組織づくりに活用するための理論や、実践上のポイントの専門的な解説をお届けします。今回のテーマは「組織デザインの理論と実践」。前後編にわたって配信します。前編はこちら。
「組織デザインの理論と実践[後編]|CCM総合実践講座」のポイント
今回は組織デザインのうち、前編で解説した「構造」と対をなす「文化」の設計について解説する。安斎は、先行研究を参照しながら組織を文化を「組織を特徴づける共有された規範」と定義する。ただし文化は必ずしも組織共有されているものだけに限らない。チーム単位・事業部単位でのみ通用する多様な「サブカルチャー」も存在するという。
CCMではその組織文化を中心に、より外側に位置するものとして「ブランド」が、より内側に位置するものとして「職場風土」があるという。この「外」と「内」に一貫性を持たせていくことが、文化の整合を取る際の基本的な考え方だと言える。
「ブランド」の設計に関して、最初のポイントとなるのが事業構造との整合だという。事業づくりにおいては内部への力学も同時に発生し、外側に目が向きにくくなってしまうケースも少なくない。そのため、一人ひとりが顧客や社会と向き合う姿勢を持っているかどうかがまず求められる。そしてもう一つ重要な観点が、「組織文化」との整合である。それぞれのスモールチームが顧客と接点を持ちながら活動をする中で、対外的な見え方と、組織の内情が乖離しないようにする必要がある。ブランドをブランドとしてつくるのではなく、組織内部の暗黙的な規範が反映されたものをブランドとして考え、デザインしていくことが肝要である。
続いて「職場風土」のデザインについて。いくら会社がいい会社だったとしても、職場がよくなければその人にとってはよい仕事環境とは言えないだろう。また、業務構造との接続も重要であり、たとえば挑戦的な風土を創るのであれば、挑戦的な業務目標や配属の指針が求められるだろう。具体的な実務と整合した組織文化づくりの形成が重要だとミナベは述べる。
最後に「組織文化」について。組織文化は、組織の強み(事業ケイパビリティ)と、”私たちらしさ(組織アイデンティティ)"の二つを繋げる要として位置づけられている。これら二つの要素が噛み合い、物語として編まれていくことで、冒険的な組織文化は形成されていくとミナベ。これらは決して簡単ではないが、変化を察知し、それに応じるために対話をしながら、相互に問題に対する意味付けを確認したり、アップデートを試みたりする姿勢が求められる。
最後に組織文化。我々の強み(事業ケイパビリティ)と私たちらしさ(組織アイデンティティ)の2つを整合する要。この2つが物語として編まれていることが、冒険的文化を創る鍵だとミナベは述べる。簡単ではないが、対話をしながら変化に応じて意味づけを相互に確認したりアップデートを続けていく姿勢が求められる。
ミナベはこうした変化に強い組織づくりが必要とされる背景について、イノベーションのジレンマの存在を挙げる。イノベーター企業としてすでに成功を収めた企業の多くは、既存顧客の需要や資源配分のパターンなどの整合に焦点を当てざるを得ず、それらを変えることも難しいため、破壊的イノベーションへの対応に遅れを取ることがある。そうした背景を踏まえたうえで、組織の内外で日々発生する変化に対して、組織構造と組織文化を絶えず整合させることで、組織の探究を触発・循環させることが重要だとミナベは述べる。
また、そうした組織づくりの知見として、ミナベは8つのプロセスを示す。最初のステップである「組織ルーティンの調整」は特に重要だとして、自社にとって心地よい変化と整合のサイクルやリズム感を獲得することが、アップデートの起点になるという。