11/19(土)に開催した「企業における理念の存在意義を問い直す」のアーカイブ動画です。理念開発・浸透に力を入れる企業が増える中で、理念の「意義」や「課題」、「成果」などをどう捉えるか。株式会社MIMIGURIから山内と田幡が登壇し、理論と実践の双方から再考します。
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「企業における理念の存在意義を問い直す」のチャプター
00:11 イントロダクション・チェックイン
15:10 理念浸透が注目を集める背景
20:13 Book Review(1):「経営理念」の定義
26:26 Book Review(2):理念とは「実践と結びついた哲学」である
33:25 Book Review(3):理念とは組織内での「わかちあい」である
43:40 Book Review(4):理念の機能や効果
48:47 Book Review(5):理念浸透のメカニズム
56 :25 理念浸透プロジェクトの設計事例(1):山内のケース
01:04:40 理念開発・浸透PJの意義とポイント
01:17:25 理念浸透プロジェクトの設計事例(2):田幡のケース
01:21:24 理念浸透の成果をどう測るか?
01:29:28 理念浸透から「理念触発」「理念探究」へ
01:31:55 クロージング・各種お知らせ
「企業における理念の存在意義を問い直す」のポイント
組織の拡大や社会的な働き方の変化などの理由から、理念やミッションの開発・浸透を目的とした施策に注力する企業が増えている。今回のイベントでは、こうした理念浸透のプロジェクトにおける葛藤・仮設を紐解きながら、実践知を紡いでいく。
前半では、書籍『経営理念浸透のメカニズム』(著・田中雅子)の内容をもとに「理念開発・浸透の基礎知識」を解説。同書は若手から経営者が理念を理解するプロセスに焦点を当てた内容で、経営理念を「社内外に公表された、経営者および組織体の、明確な信念・価値観・行動規範」と定義している。
同書及び本イベントにおける理念浸透に対する特徴的な考え方として、理念を上意下達的に浸透”させる”ものとしてではなく、日々の業務の中で「わかちあう」ものとして捉えている点が挙げられる。曰く、理念とは、「実践と結びついた哲学」であることが求められるものであり、。田幡と山内は、それぞれの業務上のこだわりの中に宿る哲学をわかちあいながら、何を「良い」とするか、組織としての共通の認識を創り上げる機会が理念浸透においては大切だと述べる。
『経営理念浸透のメカニズム』の中では、理念浸透のモデルとして、「(1)強い文化モデル」「(2)観察学習モデル」「(3)意味生成モデル」の3種類が挙げられている。会社の規模や構造、文化によって得意とするモデルは異なる。また、理念浸透にも段階があり、もっとも低位の「理念を認識している」状態から、最上位の「理念を信じて疑わない」状態まで、計6つのレベルが存在する。
田幡と山内は、これまで担当してきた理念開発・浸透のプロジェクトのケースについて、クライアントからの依頼段階では、「ボトムアップ的に理念浸透を進めたい」という声をよく聞くという。しかし、実際には完全にボトムアップでやろうとしてもトップの納得感が得られないことも多く、昨今ではトップが理念の草案をつくり、ミドルとボトムがそれらを問い直すことで共創していくプロセスが比較的多いと語る。ただし、組織にとって適した理念浸透のプロセスは、組織の特性や状況によって異なるため、ケースバイケースで設計していくことが重要だと語る。
また、クライアントが抱えがちな課題として、理念と経営計画を紐付けられていないケースも多い。山内は、自分たちの理想の姿を理念として描きながら、そのためのロードマップとして中・長期の経営計画を立てていくことが重要であり、利益や競争優位性を重視するあまり、どうありたいのかがないがしろにされがちなことがよくあるという。重要なのは、中期経営計画と理念がどう繋がっているのかをまずは語ってみて、うまく語れない部分が出てくれば、そこを起点に問い直しながら、接続するようによりよい計画や理念へとつくりかえていく姿勢を持つことである。
他方で、理念浸透の成果はどう測れるのだろうか。田幡は前提として、社内サーベイの結果を安易に成果として掲げてしまうのはかなり危ういと語る。事前に目指すべき指標を設定することは重要である一方で、理念浸透を目的化するのではなく、あくまで普段の組織活動において、理念を触媒としてチーム/組織が活性化しているかどうかに目を向けるとよいと語る。また、山内はメンバーの理念的な語りや言葉が増えることが一つの観測可能な目安になりうると言う。
今回のイベントが企画されたきっかけとして、理念浸透の施策が(たとえ誰が企画したとしても)研修的なアプローチに限定されてしまうことに対する違和感があったと田幡は語る。研修以外の人材開発的アプローチも存在するはずであり、今回解説したような、理念浸透ではなく「理念触発」や「理念探究」と呼ばれるような活動や状態をいかにつくるのか、今後も探究していきたいと語る。
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