CULTIBASE Radioは、人やチームの創造性を高める知見を音声でお届けします。 CULTIBASE Radio マネジメントの84回目では、CULTIBASE編集長であり株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOの安斎勇樹と、同じく株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEOのミナベトモミが、「マネージャーが持つべき人材育成の見取り図:発達の5段階マップ」をテーマにディスカッションしました。
- 前回に引き続き、マネージャーが知っていると役立つ、人の葛藤と発達のメカニズムを考察する。今回は、人が社会に出てからさまざまなレイヤーで協働できるようになるまでの5ステップを、インテグラル理論に基づいて解説する。
ステップ1
- 葛藤の源泉:誰しも、社会に出た当初は「スキルや好きなことを仕事に活かせられれば」と思う。しかし、この内的動機に対して、他者(上司など)からの外的な要求・制約が葛藤を生む。
- 支援のポイント:この段階では技術的未熟さが目立つため、周囲にいる人はつい全てのことにフィードバックをしたくなる。しかし、ここでは成功体験が重要だ。むしろ本人が「この場でも自分の好きなことをやっていいんだ」と思えるような受容と承認が成長の鍵になる。
ステップ2
- 葛藤の源泉:上司の要求・制約を満たせるようになってくると、視野に複数の他者が入るようになり、「チームでいかに協力し、ユーザーを喜ばせられるか」がハードルとなる。プロジェクトの目的と、自らの得意なことの狭間で葛藤が生まれる。
- 支援のポイント:ふりかえりを通じて、プロジェクトにおいて自らのポジションを位置づけることが大切。周囲にはふりかえりの壁打ち相手として、良いコーチとしての役割が求められる。
ステップ3
- 葛藤の源泉:複数のプロジェクトを経験すると、ある程度の専門性が確立する。しかし、他の人の専門性と、自らの専門性の狭間で「私の専門性はなんだろう」「私には、チーム・社会においてどういう役割があるのだろう」という葛藤が生まれる。
- 支援のポイント:この段階では、専門性を越境し、価値が創出される流れを経験し学ぶことが重要となる。この段階を経ると、強いチーム・コミュニティを自ら形成できるようになる。
ステップ4
- 葛藤の源泉:ステップ3を経験すると、プロジェクトにおいて構想(ロードマップ)を作ることができるようになるため、周囲からの期待・信頼が急激に高まり仕事が倍増することになる。ここで陥りがちなのが「自分がやるしかない」という孤独化であるが、そうならないために「自分の構想」と「部門の目的、メンバーの専門性」の狭間で葛藤することが重要になる。
- 支援のポイント:本人が、自らの状況を認識し(セルフ・アウェアネス)、異なる価値観の理解の上で、弱さを自己開示する強さを持てることが鍵となる。前回取り上げた日記も、セルフ・アウェアネスを高める上でよい手法である。
ステップ5
- 葛藤の源泉:自らの価値観と、事業・組織の目的との狭間で葛藤が生まれる。この段階でも、ロールモデルが無く、孤独な状況に陥りがちである。
- 支援のポイント:同じ視座に立つ人と、戦略レベルではなく、価値観・人間観レベルで対話ができることが重要になる。お互いへの気遣いが生まれることで、よきパートナーとなることができる。
- 本来、ミドルマネージャーへの抜擢は、自己アイデンティティを確立したステップ4の手前でされるくらいがちょうどいい。しかし、実際にはステップ2をちょうど越えそう、というレベルでアサインされることがほとんどだ。
- この状態のミドルマネージャーは、自己アイデンティティを模索しつつ(ステップ3)、ステップ1/ステップ2にいるメンバーの受容と承認を行わないといけないという、大変に困難な状況に立たされる。
- ミドルマネージャーの周囲にも、このようなステップを理解した支援が求められる。