10/1(土)に開催した「『#問いの日 』記念特別ライブイベント!『問いのデザイン』著者たちが改めて大切な問いとの向き合い方を語ります」のアーカイブ動画です。『大切な問いと向き合う日』制定から1周年を記念し、『問いのデザイン』著者である安斎勇樹(株式会社MIMIGURI代表取締役)と塩瀬隆之さん(京都大学総合博物館 准教授)による特別対談をお届けしました。
「『#問いの日 』記念特別ライブイベント!『問いのデザイン』著者たちが改めて大切な問いとの向き合い方を語ります」のチャプター
00:11 CULTIBASE Labの紹介
03:40 登壇者自己紹介
06:57 本日のイベント・「問いの日」について
09:54 「問いの日」制定から一年間の歩みを振り返る
15:08 『問いのデザイン』出版後の変化
17:50 塩瀬さんの手がける展示「創造と越境の125年」・問いの鍵となる「好学の志操」
26:24 「#問いの日」に寄せられた問い:問うとは何か?
38:38 「#問いの日」に寄せられた問い:平穏な暮らしを守るためにできることは何か?
44:19 「#問いの日」に寄せられた問い:365日、全て問いの日モードにするには?
51:03 塩瀬さんが向き合っている問い
55:16 問いとは、自分の中からこぼれるような気づきから始まる
59:28 補足:組織学習における「衝動」の重要性
01:02:13 安斎が向き合っている問い
01:11:20 安斎から塩瀬さんへの問い:12年前に何を考えていたか
01:20:30 塩瀬さんが今、向き合っていること
01:23:48 安斎の芸風の原点・問いとの向き合い方
01:29:08 今後のイベントのお知らせ
01:31:05 CULTIBASE Schoolのご案内・クロージング
「『#問いの日 』記念特別ライブイベント!『問いのデザイン』著者たちが改めて大切な問いとの向き合い方を語ります 」のポイント
・まず初めに、「問いの日」制定からの、1年間の歩みを振り返った。塩瀬さんは、『問いのデザイン』の出版後、問うことを任されてしまう機会が増えたという。そのため、「皆の問う機会を奪っていないか?」「個々が問う機会は本当に増えているのか?」を今一度考えていると言う。ファシリテーターや問いのデザイナーは、みんなが問いを発したくなるような場を作る、影武者のような存在が望ましいのではないかと二人は話した。
・次に、SNSで行った「2022年の今、向き合いたい大切な問いを語ろう」キャンペーンに寄せられた問いを起点に対話を進めた。まず初めに取り上げられたのが「問うとは何か?」という問い。塩瀬さんは、京都大学の学風を表現する「自由”の”学風」と、「自由”な”学風」の違いは何か?という問いを例に挙げ、「分かち難きものに境界線を入れること」が、問うということではないかと伝えた。
・安斎は、100人の大学生にワークショップを行ったエピソードを紹介しながら、問いとは、「何かについてきちんと考えようという態度の表明」ではないかと伝えた。これについて塩瀬さんは、他人がラベリングした問題や、他人が作った問いを受け取るだけではなく、自分の違和感を起点に、向き合うべき問題を自ら名付け直すことが第一歩ではないかと加えた。
・他にもいくつかの問いに触れた後、パネルダイアログに移った。まず初めに、安斎、塩瀬さんが今向き合っている問いについて。塩瀬さんは、展示準備で京都大学の125年の歴史を調査していく中で、「変わり続けながら守ること」こそが本当の歴史の作り方であると感じたそうだ。そうした考えを踏まえた上で、学び場づくりをしたいと語った。
・さらに、学校のあり方の歴史を調査した中での一番の気づきを問われた塩瀬さん。これに対し、ある番組の取材で「VUCAの時代に問いがいかに役に立つか?」について解説を求められたものの、「何かに役立つから問うわけではない」と感じた話を紹介。何より重要なのは、自分の中から湧き出る違和感・気づきを起点に問いをもつことであり、結果として何かに役立つことがあるのではと話した。そして、個々の内なる気づきを守り、相互に問い合えるような学びの場を作りたいと伝えた。
・一方安斎は、”知の生態系”としての経済活動・教育活動・研究活動、それぞれの活動の理想的な関係性に向き合っているという。それぞれの活動の緊張関係が、株式会社MIMIGURIやクライアントの組織の中で成り立っている状況こそ「創造性の土壌を耕す」ことではないかと考えていると言う。
・最後に、安斎が塩瀬さんに、12年前(塩瀬さんが、現在の安斎と同年代の頃)に何を考えていたのかを問うた。これに対し塩瀬さんは、「今の世の中をこのまま子供に渡してはいけない」と感じていたと答えた。当時塩瀬さんは、アウトリーチを行う中で感じた限界や、東日本大震災への支援を行う中で目の当たりにした、学びの場にいる三者:親/先生/子供が希望を持てない状況をきっかけに、今求められている人材像を掴むべく、経産省で働くことを決意したという。さらに、2年間経産省で働く中で、会社も社会も何か一つのきっかけで状況が大きく変わることはなく、”一人一人の背中のスイッチを押す”ような教育の方がレバレッジが効くと改めて感じ、再度大学で働くことを決めたと話した。
・最後に、安斎も自身を振り返りながら、自分の芸風の原点として、手品やその種を披露することで大人を驚かせることが好きだったと話した。これに対し、塩瀬さんは、手品にはタネ(仕掛け)があるように、問いにもきっかけや手順があるという視点が重要ではないかと話す。また、手品の仕掛けは、手品をしたことがある人にしか想像しづらい。問うことについても同様で、『問いのデザイン』を読むことで、問いかけがすぐにできるようになるわけではないが、自分達で問いを作ってみることで、他人の問いの深さや面白さに気付くことができる。その結果、より一層自分の問いに向き合えるのではないかと結んだ。