外部環境の変化が激しく、先行きの見えない時代において、いわゆる「選択と集中」を戦略の中心に置いたトップダウン型(ファクトリー型)の組織形態から、ミドルマネージャーを起点とした個の多様性を活かすボトムアップ型(ワークショップ型)の組織へのシフトが求められています。
この過渡期において、多くの企業が前時代的なトップダウンの仕事の進め方から抜け出すことができず、本来引き出すべきチームメンバーのポテンシャルを抑圧してしまう問題が起こりがちです。
新刊『問いかけの作法』では、この組織の転換期を乗り越え、チームのポテンシャルを発揮させるための指針として、チームにおいて「こだわり」を見つけて、育てることと、「とらわれ」を疑い、問い直すことの両方が、互いに循環しながら実現されている状態を目指すことを提案しています。
チームのポテンシャルが発揮されるための循環
良い問いかけは、良い観察から始まる
チームのポテンシャルを発揮させるためには、「良い問いかけ」が不可欠ですが、良い問いかけは「良い観察」から始まります。チームとメンバーの状態を丁寧に観察し、何がいま問題のボトルネックになっているのかを正しく見抜くことが必要です。
しかしファシリテーションの技術に習熟しないうちは、ミーティングの中で何をどこから観察すればよいか、途方にくれてしまうでしょう。新刊『問いかけの作法』では、経験と勘を持たない初心者のためのガイドラインとして、以下の4つのポイントを提案しています。
観察を支えるガイドラインとしての問い
1. 何かにとらわれていないか?
2. こだわりはどこにあるか?
3. こだわりはずれていないか?
4. 何かを我慢していないか?
1.何かにとらわれていないか?
第一に検討すべきは「何かにとらわれていないか?」というポイントです。
ミーティングの様子を観察しながら、目の前のメンバー一人ひとりが、どんな暗黙の前提に立っているか。何かしらの固定観念に陥っていないか。特定の価値基準に縛られていないか。また、者に対して「こういう人だ」という決めつけをしていないか。
チームにとって疑う価値がある「とらわれ」がないかどうか、検討するのです。
2.こだわりはどこにあるか?
第二に検討すべきは「こだわりはどこにあるか?」というポイントです。
疑うべき「とらわれ」を探りながらも、同時に育むべき「こだわり」にも目を向けます。まだチームの関係性がそれほどよくないうちは、注意深く観察しなければ、メンバーの「こだわり」は見つけられないでしょう。
ちょっとした発言や反応から、一人ひとりのちょっとした「こだわり」や、チームとして共通の核となりそうな「こだわり」の源泉を探します。
3.こだわりはずれていないか?
第三に検討すべきは「こだわりはずれていないか?」というポイントです。
チームメンバーを観察しながら「こだわりはどこにあるか?」を探っていくと、一人ひとりの個性が見えてくるはずです。
チームのメンバーのこだわりがそれぞれ違うこと自体は、チームの多様性の明かしですから、よいことです。
しかし、その違いを認識していなかったり、認めていなかったりすると、チームのコミュニケーションやコラボレーションがかみ合わないことがあります。
一人ひとりのこだわりがずれたまま、すれ違っていないか。手段と目的のこだわりがずれていないか。こだわりの「ずれ」に敏感になることも大切です。
4.何かを我慢していないか?
第四に検討すべきは「何かを我慢していないか?」というポイントです。
チームの現代病である認識と関係性の固定化が悪化していると、一人ひとりの衝動が抑圧され、「言いたいことが言えない」状況になってしまいます。意見が出てこなくなることが、チームにおいて最も厄介な状況です。
何か言いたいことが頭に浮かんでいるのに、我慢してはいないだろうか?とメンバーを注意深く観察することが重要です。
以上、ミーティングにおいてチームの問題を見抜くために4つのチェックポイントを解説しました。新刊『問いかけの作法』では、これらをミーティング中の言葉や表情などから見抜くためのより具体的なガイドラインを解説しています。是非書籍も合わせてお読みください。
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また、CULTIBASELabのウィークリーイベントでは、毎月『問いかけの作法』についてさらに学びを深める関連コンテンツを展開してます。先日は適切な問いかけに必要不可欠な「観察力」の鍛え方を、佐渡島庸平さん(株式会社コルク代表取締役)とともに探究しました。本記事の内容をさらに深く学びたい方は、会員登録の上で、ぜひこちらのアーカイブ動画もご覧ください