CULTIBASEでは以前からトップダウン方式の「ファクトリー型」の組織と、外部環境の変化に柔軟に対応するボトムアップ方式の「ワークショップ型」の組織を対比させ、組織の成長過程において「ファクトリー型」から「ワークショップ型」に切り替えていく重要性について説いています。
新刊『問いかけの作法』においても、こうした組織のパラダイムシフトの考察と、それに対応するためのファシリテーションスキルについて実践的に解説しています。
思想や態度として”ワークショップ”を捉え直す
ワークショップは本来「工房」を意味するメタファで、学習と創造の場作りの方法論を指しています。CULTIBASEでも、手法としてのワークショップデザインについて、現在でも探究を続けています。
しかしながらワークショップは手法や形式よりも、その態度や思想にアイデンティティを置いている営みでもあります。そうした文脈から、チームや組織の在り方を捉え直すメタファとして、”ワークショップ”という言葉を使って再解釈しているのが、上記の比較図です。
ファクトリー型の組織の特徴
改めて、それぞれの組織のスタイルの特徴と、経営層・マネジメント層・現場従業員の役割の転換について整理しておきましょう。
ファクトリー型の組織では、経営層が定めた「問題」について、現場メンバーがひたすらに「解決策」を磨き続けることで推進されます。
効率的に業務を継続させるために、管理者としてのミドルマネージャーが、そのプロセスを監督します。
ファクトリー型におけるチームの意義は、作業を分担するためです。したがって、なるべく同一の職能を持ったメンバーでチームは構成されます。トップダウン的に定義された設計図に従って各人に作業を振り分けたら、それぞれのメンバーはミスなく作業を進め、役割を遂行することが求められます。
重要なことは作業の「効率性」と「継続性」で、それをアップデートするための「技術革新」が鍵になります。
ファクトリー型の仕事の進め方は、現代においても依然として有効です。目標数値を達成することが何よりも最優先される営業管理チームや、企業において主な収益源である既存事業を、日々少しずつ改善し続けることが求められる製造業などでは、ファクトリー型に習熟していくことが、今でも求められています。
ワークショップ型の組織の特徴
他方で、ワークショップ型の組織における経営層の役割は、現場と対話しながら「理念」を探究することです。
現場メンバーは理念を体現するための「問題」を自ら発見し、素早く柔軟に「解決策」を探索することが奨励されます。
それを支援するミドルマネージャーの役割は、管理者ではなく、ファシリテーターとしてふるまうことが求められます。すなわち、現場の試行錯誤をサポートしながらも、それを経営理念と結びつけ、探究のうねりを作っていく立場といえます。
ワークショップ型のチームの意義は、多様な個性の融合にあります。一人の専門性や視点だけで新しい実験を繰り返すことには限界があるため、なるべく多様な専門性やこだわりを持ったメンバーでチームを構成します。
作業の効率性よりも、チームで絶えず「対話」と「変化」を繰り返すことが最優先され、一人ひとりの「創造性」が鍵となります。
ミーティングの「問いかけ」を起点にマネジメントを転換する
それぞれの仕事の性質を整理すると、以下の図のようになります。
組織の成長フェーズや業種や役割によって、ファクトリー型とワークショップ型の比率が「7:3」くらいが最適のチームもあれば、「5:5」で使い分けているチームもあるでしょう。新規事業開発を担当するチームや、ベンチャー企業であれば「0:10」でワークショップ型に振り切っていく必要があるかもしれません。
いずれにせよ、これからの時代において「ワークショップ型」のエッセンスが必要のない組織は、ほとんどなくなっていくように考えています。
組織をファクトリー型からワークショップ型に切り替えるためには、ミドルマネージャーが「ファシリテーター」としてふるまえるかどうかが、その鍵を握っています。
新刊『問いかけの作法』では、普段のチーム会議や1on1などのミーティングをそのレバレッジポイントと捉え、メンバーに対する「問いかけ」の質を変えることで、組織をワークショップ型に切り替えていくアプローチを提案しています。ぜひ、詳細は書籍をご覧ください。
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