5/20(土)に開催した「公開出版会議:現代フィードバック論を批評する」のアーカイブ動画です。「公開出版会議」とは、CULTIBASE編集長の安斎勇樹をはじめ、運営元の株式会社MIMIGURIのメンバーが現在執筆中の書籍を題材に、最新の知見をいち早くお届けする企画です。初回となる今回は、安斎勇樹が現在執筆中の「フィードバック」をテーマとした書籍を扱いました。
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「公開出版会議:現代フィードバック論を批評する」のチャプター
01:13 番組シリーズ「公開出版会議」とは
13:08 チェックイン:普段の「フィードバック」に関する困りごと・悩み・ストレスは?
18:54 問題設定:ミドルマネージャーの根深い悩み
33:08 これまでのビジネスの根底にあった「軍事的世界観」
39:44 20世紀の行動主義的学習観
44:52 代表的なフィードバックの入門書への批評
52:36 冒険的世界観に基づくフィードバック観
「公開出版会議:現代フィードバック論を批評する」のポイント
- 新たに始まった番組シリーズ「公開出版会議」は、企画中の最新書籍について企画プロセス、生煮えの知見、書きかけの原稿、ボツネタ、裏話などを随時共有することで視聴者の皆さまと共に書籍を作り上げる番組である。
- 現在進行中の企画は4冊あると安斎は語り、フィードバックの作法、ルールのデザイン、チームレジリエンス、創造性の最新理論に関する海外翻訳出版などを考えていると述べた。またこれ以外にも、妄想レベルのネタや他のメンバーの出版も控えていると述べた。
- 今回のイベントでは、特にフィードバックの作法で安斎が単著で書こうと考えているフィードバック論について語られた。前段として、ミドルマネージャーがこれまで良しとされてきたやり方・方法論で部下が育成できなくなっているという課題感があると語る。
- 部下育成には、研修、機会の提供、抜擢等様々なアプローチがある。しかし部下の成長を支えるのは日々のチーム内上司部下、同僚同士のコミュニケーションの質であり、声かけの有無や、相談しやすさ、問いかけ、アドバイスの質を高めることが重要だと指摘する。
- これを踏まえると、フィードバックとは育成のためのコミュニケーションと捉えられる。昨今フィードバックの重要性が叫ばれる中で、1on1ミーティング、1on1面談が当たり前になり入門書などもあるものの、実際は1on1でのフィードバックがなかなかうまくいかない、という課題がある。
- この背景として、前提の価値観が大きく変わりつつある過渡期にあり、いろんな価値観や考え方、職場環境、ビジネス環境が激変していると述べ、この変化を整理しないとなぜフィードバック論が刺さらなくなっているのかが見えないのではないかと主張する。
- キャリア観の変化としては、会社中心から人生中心のキャリア観に変化しており、有りたい人生を実現するための一つの構成要素として会社が存在するようになった。チーム観の変化としては、任務別の小隊から個性を活かし合う共同体へと変化し、1人では生み出せない成果を目指すようになったと指摘する。ビジネス観の変化としては、限られた領地の奪い合いから、仲間と共創しながらよりよい社会の可能性を拓くようになり、組織観としても管理型組織から創発的組織に変化していると語る。
- こうした価値観の根底には「軍事的世界観」があったが、軍事的な企業経営は限界に来ており、現代社会においては持続可能性を失いつつあると安斎は指摘し、より「冒険的世界観」にシフトする必要があるのではないかと語る。部下育成の方法は軍事訓練で発達してきたが、部下育成やフィードバックにおいても「軍事的世界観」ではなく「冒険的世界観」に基づいて行うべきだと主張した。
- これまでのフィードバック論は、行動主義を前提とした賞罰や報酬の応酬になっていると安斎は語る。冒険的世界観に基づく考え方として、フィードバックとは相手に対する新しい可能性の提案であるというあり方を探求していきたいと締めくくった。