【理論解説】中動態とは何か?能動と受動の対立を超えて

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約70分

5/6(土)に開催した「【理論解説】中動態とは何か?能動と受動の対立を超えて」のアーカイブ動画です。中動態とは、「する(能動)」と「される(受動)」の間に位置する現象を捉える概念です。本イベントでは、小田裕和(株式会社MIMIGURI デザインストラテジスト/リサーチャー)がモデレーターを務め、「中動態」の学びを深めました。

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「【理論解説】中動態とは何か?能動と受動の対立を超えて」のチャプター

07:24 チェックイン:「中動態」って聞いたことありますか?
10:51 中動態とはなにか?
14:48 人の行動は自発的な意志で引き起こされている訳ではない?
20:45 能動態と中動態の対立という視点
28:56 社員に衝動を持たせるには?
36:26 アイデアとは、自らの中にやってくるもの
42:55 中動態へのまなざしを育むための、リフレクションとプロジェクション
52:36 CCMの視点から考える、中動態と組織の関係

「【理論解説】中動態とは何か?能動と受動の対立を超えて」のポイント

  • 組織において「メンバーがなかなかアイディアを出してくれない」「もっとやる気をだしてほしい」と望むマネージャーは多くいる。小田は、実際MIMIGURIで新規事業をつくる組織の支援をする中で「どうすれば若い人にもっと意志をもってもらえるか」といった相談をよく受けると語る。
  • しかし、そうした声には「人に何かをさせる」というニュアンスが含まれる。本来はメンバーたちが自立的に持つべきもののはずが、自分で持とうとしてもらうという話と持たせるという話が入り混じっていると小田は主張する。そこで、ここを読み解くために中動態について着目する。
  • 『中動態の世界 意志と責任の考古学』という本では、意志という概念をどう捉えるかが重要だと指摘されている。例えばアルコール依存症は、お酒を断とうとする意思がないからダメだと思われがちだが、そうした捉え方はバッドパターンで、意思だけに焦点をあてるのはあまり有効ではないと書かれている。
  • 哲学者のスピノザは、人の行動が自発的な「意志」によって引き起こされていると捉えてよいのだろうかという問題提起をしている。アルコールや薬物の摂取、自殺を選ぶ、他者を殺す等の行動は意志が原因としてあるのではなく、様々な外部環境外的要因の中で、その人の中に意志が結果として生じているのではないかと小田は語る。
  • 能動と受動の関係の中で、ご飯を食べている(能動態)と、ご飯を食べさせられている(受動態)の間にご飯を食べたいという状況がやってきている(中動態)と説明し、やってくるという捉え方が一つ重要なポイントだと小田は語る。アルコール依存症を例に取ると、意志がないからやめられないと考えるのではなく、なぜ飲みたくなるのかに目を向けることが大事だと述べた。
  • また、言語学の観点で『中動態の世界 – 意志と責任の考古学』という本では、能動と中動の対立においては主語が過程の外にあるか内にあるかが問題になると示されており、本来は能動と中動の対立が能動と受動の対立よりも先にあったのではないかとの説がある。いずれにせよ、私達の内側にやってくるものに目を向けることが中動態の視点に立つことだと小田は述べる。
  • 上司とメンバーの関係性においても、何を「やったか」という外に表われてきた活動ばかりでメンバーの中にある様々な葛藤に目を向けられていないのではないかと小田は指摘する。衝動、好奇心も同様に、持てと言われて持てるものではなく結果としてメンバーの中に生じる中道的なものだと述べる。そのためアイデアを出してほしい場合は、アイデアを出させるのではなくアイデアがやってきやすい状況/環境を構築することが大事だと語る。
  • 中動態へのまなざしを育むためには、その人の中何が生じたのかを振り返り捉えるリフレクションと、何かをやってみることでその人に何が生じるのかを試すプロジェクションをすることで自分の内側の自己組織化を促すのが大事だと述べた。
  • CCMの観点では、私という存在への中動的な眼差しと私達という存在への中動的な眼差しを大事にすることが組織文化・風土を作り出すことが重要だと述べる。また、ミッション・ビジョン・バリューを頑なに守ろうとするのではなく、ミッション・ビジョン・バリューを通じて起きた自己組織化に目を向けていくことこそ必要なのではないかと語った。

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株式会社MIMIGURI デザインストラテジスト/リサーチャー

千葉工業大学工学部デザイン科学科卒。千葉工業大学大学院工学研究科工学専攻博士課程修了。博士(工学)。デザインにまつわる知を起点に、新たな価値を創り出すための方法論や、そのための教育や組織のあり方について研究を行っている。特定の領域の専門知よりも、横断的な複合知を扱う必要があるようなプロジェクトを得意とし、事業開発から組織開発まで、幅広い案件のコンサルテーション、ファシリテーションを担当する。主な著書に『リサーチ・ドリブン・イノベーション-「問い」を起点にアイデアを探究する』(共著・翔泳社)がある。

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