組織開発のアプローチの見取図:連載「組織開発の理論と効果」第6回

組織開発のアプローチの見取図:連載「組織開発の理論と効果」第6回

東南 裕美

2021.07.22/ 5min read

本連載「組織開発の理論と効果」は、現場で組織開発が効果的に取り入れられるために、組織開発の理論やその効果について紹介します。これまでは、学術文献にもあたりながら組織開発の定義や概要を示した上で、診断型組織開発や対話型組織開発といった非日常のアプローチと、日々のルーティンの中で行われる日常のアプローチを紹介してきました。

今回の記事では、組織開発によってもたらされる成果を整理し、前回および前々回紹介したアプローチを含めて、筆者なりの「組織開発のアプローチ」を1枚絵にまとめて紹介します。

目次
組織開発のアプローチと成果別整理
(1)日常的なアプローチで低次学習を起こす
(2)非日常的なアプローチで高次学習を起こす
(3)日常と非日常的のアプローチで高次学習を起こす
(4)日常と非日常的のアプローチで低次学習を起こす

組織開発のアプローチと成果別整理

組織開発によってもたらされる成果は、「メンバー間でのコミュニケーションがスムーズになった」「お互いに思っていることを伝えられるようになった」「チームで追いかける目標がクリアになった」など様々です。これらは「行動の変化」「価値前提の変化」に分けることができます。前者は「低次学習」、後者は「高次学習」とも言い換えることが可能です。

もう少し具体的に言うと、低次学習とは、既存の価値観や規範のもとで、「部分的・短期的な行動を修正すること」を指します(安藤, 2019)。高い生産性や効率を上げるために行われる「改善活動」のことで、短期的には確実な成果をもたらしますが、その効果は必ずしも長期に及ぶわけではありません。

他方、高次学習とは、「価値観・規範・参照枠組みの変革を通じて新たな理解を構築すること」を指します(安藤, 2019)。短期的な成果は明確ではありませんが、中長期的には組織全体への大きなインパクトをもたらします。

ちなみに、「低次学習」「高次学習」と書くと、「高次学習を起こさねばならない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、組織を根本的に変えようとする場合、その組織がどういう価値前提を持っているのかを認識し、時に価値前提から変えていく、つまり高次学習を起こす必要性があります。しかし、高次学習は頻繁に起こせるものではありません。頻繁に起こしすぎると、むしろ組織が疲弊してしまう可能性もあります。本連載の第2回目でも紹介したように、組織開発の目的である「健全で効果的で、自己革新力のある組織」を目指す上では、低次学習と高次学習を適切に起こしていく必要があります。

いずれにしても、こうした2つの成果を日常/非日常のアプローチと組み合わせると、以下の図のように整理可能です。本記事では、このモデルをもとに、組織開発のアプローチと成果別の整理を行っていきます。

(1)日常的なアプローチで低次学習を起こす

組織開発のアプローチと成果は4パターンに整理することができます。まず1つ目は、通常のルーティンの中で行動の改善を図るものです。日常的にお互いの考えていることを共有することで、チームに健全な人間関係が育まれ、結果的に、ミクロな行動改善が促されます。

組織へのインパクトは少ないかもしれませんが、日常的にこのサイクルを着実にまわしていくことで、健全な組織づくりにつながっていくと考えています。

(2)非日常的なアプローチで高次学習を起こす

2つ目もよく取り入れられるパターンで、非日常なアプローチによって価値前提の問い直しを図ろうとするものです。いわゆる「診断型組織開発」や「対話型組織開発」と呼ばれるような方法で、通常のルーティン外でサーベイや対話の場を設け、組織の価値前提の見直しを図っていきます。

(3)日常と非日常的のアプローチで高次学習を起こす

3つ目のアプローチは、2つ目のアプローチの応用系で、日常と非日常のアプローチを用いて価値前提の見直しを図っていくことを目指します。

2つ目のアプローチでも、組織に揺さぶりをかけていくという点では有効ですが、効果が一時的であったり、なかなか組織の根本改善につながらないといったケースもあります。また、非日常で取り組めるアプローチには限界があるため、日常的なアプローチと組み合わせることが有効です。

(4)日常と非日常的のアプローチで低次学習を起こす

(1)~(3)では、日常的に行動変化を促す方法や、非日常のアプローチを使って組織の価値前提を捉え直す方法を紹介してきました。

しかし、チームや職場の人間関係が硬直化していたり、構造的に行動改善を図ることも困難であったりと、「そもそも日常的に行動変化を促すことも厳しい」という場合も、もちろんあると思います。そうした場合には、日常と非日常のアプローチ両方を駆使して、まずは行動の改善から促していくことも必要だと思います。これが4つ目のアプローチです。

筆者自身、中長期的には「行動」レベルの変化は日常的に促すことが望ましいと考えています。そのため、このパターンでは「非日常」に頼りすぎないこともポイントです。「非日常」と「日常」を組み合わせることで、日常的に行動改善が生まれるチームや組織へとシフトしていくきっかけになります。


以上、組織開発のアプローチと成果を4パターンで整理し紹介してきました。みなさんの職場やチームでは、どのような方法を取られていますか?

「日常的な取り組みを行っているけれども行き詰まりを感じている」という方は非日常のアプローチを取り入れてみたり、「非日常のアプローチは行っているけれども活動内容が日常に定着しない」という方は日常のアプローチを組み合わせてみたりと、ぜひご自身の所属するチームにあったやり方で取り入れていただけたらと思います。

また、組織開発についてもう少し踏み込んで体系的に学びたいという方はぜひ以下の動画をご覧ください。「なぜ組織開発が必要なのか?」といった背景から、組織開発の定義、非日常と日常の2つのアプローチ方法を紹介し、実際に企業における組織開発の事例を非日常と日常のアプローチで読み解いています。

組織開発概論:関係性を耕す“ハレ“と”ケ“のアプローチ

参考文献
安藤史江(2019)『コアテキスト 組織学習』

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