組織開発における“ケ”のデザイン:連載「組織開発の理論と効果」第5回

組織開発における“ケ”のデザイン:連載「組織開発の理論と効果」第5回

東南 裕美

2021.05.21/ 6min read

本連載「組織開発の理論と効果」は、現場で組織開発が効果的に取り入れられるために、組織開発の理論やその効果についてご紹介します。前回の記事では、組織開発の代表的な2つのアプローチとして取り上げられる「対話型組織開発(Dialogic OD)」と「診断型組織開発(Diagnostic OD)」の概要と、実践上のポイントを紹介しました。

診断型組織開発と対話型組織開発:連載「組織開発の理論と効果」第4回

上記の記事からも窺えるように、組織開発というと、ワークショップなど「非日常の場づくり」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

しかし、筆者は、組織開発には “ハレ”と“ケ”、すなわち非日常と日常のアプローチがあると考えています。そして、見落とされやすいのが“ケ”のアプローチです。“ケ”のアプローチとは、日常的な業務ルーティンの中で、人と人との関係性やコミュニケーションなど、ソフト面に対して働きかけることを指します。

本記事は、組織開発における“ケ”のデザインをどのように行なっていくのかをご紹介します。

目次
なぜ組織開発の“ケ”のデザインが必要か?
“ケ”のデザイン手法①「チェックイン」を設ける
“ケ”のデザイン手法②進行途中で「プロセス・チェック」を挟む
“ケ”のデザイン手法③日常的な会社の発信物に埋め込む

なぜ組織開発の“ケ”のデザインが必要か?

具体的な方法論にはいる前に、なぜ組織開発における“ケ”のデザインが求められるのかを整理しておきたいと思います。前提として、本連載の第1回目にも書いた通り、組織開発はヒューマンプロセス、すなわち人と人との関係性の問題に働きかけることのできるものです。

長年かけて形成された「目に見えない人と人との関係性の問題」や「組織風土の問題」などを一時的な変革だけで変えようとするのはそもそも困難なことだと言えます。変革により、一時的に変わったとしても、また元にもどる可能性もあります。そのため、組織開発を進めていく際に、日常的にじわじわと変化をもたらすアプローチが必要になるのです。

別の角度で言えば、組織開発は日常的な取り組みとも相性の良いアプローチであるということです。「人事制度を変える」とか「案件管理の仕組みを変える」といったハード面での変化をゆっくりと進めると、古い仕組みと新しい仕組みが混在し、言わずもがな混乱を招きます。他方で、組織開発が働きかけるようなソフト面(対人関係、風土など)の組織の変化は、ゆっくりと進めることで、定着を図ることができます。

“ケ”のデザイン手法①「チェックイン」を設ける

それでは、日常的に行える組織開発の方法をいくつか紹介していきます。

1つ目は、会議やミーティングの最初に「チェックイン」の時間を設け、今の気持ちをお互いに共有しあうこと。ちょっとした工夫ですが、「チェックイン」をすることで、会議の参加者の状態に対する解像度が上がります。

例えば、チェックインの場で「先ほどお客様からトラブルの電話があったので追加のご対応が発生するかもしれないと少しそわそわしています」という共有があった場合、会議にその人が集中していなさそうに見えても、「あの人、重要な会議なのにやる気ないな」といった周囲の邪推を避けることができ、声をかけたり一次離席をしてもらったりと臨機応変に対応することができます。

“ケ”のデザイン手法②進行途中で「プロセス・チェック」を挟む

2つ目に、プロジェクトなどの進行途中で、内容そのものではなく、進め方に問題や違和感がないかを確認する「プロセス・チェック」(中村 2015)も有効です。

例えば、会議中、顔が曇っていたり、普段よりも発言が少ない人がいれば、会議の進め方そのものに違和感をいだいている可能性があります。会議の中で人手不足という課題が持ち上がり、「採用を強化する上でのアイデアを出しましょう」といった提案がなされた場合を考えてみましょう。

この進め方に特に違和感なく前向きに会議に参加できるメンバーもいるかもしれませんが、「最近採用されたメンバーが生き生きと仕事ができていないため、全体的にメンバーの生産性が低いのではないか。そんな中で採用に力をいれるのには気が進まない」「過去に将来が期待できる人を採用したがうまくいかなかった。まずはどういう人がこの組織にマッチするのかを言語化したい」など、進め方そのものに前向きでない人もいる可能性があります。

もちろん、プロジェクトのキックオフ時点や、会議の開始時点で目的が合意されていることが望ましいですが、定期的なプロジェクトではプロセスが問われないまま前回の内容を引き継いで進んでいったり、途中から進め方に違和感が生まれてくることがあります。そのような場合に会議やslackなどのコミュニケーションツール上で「プロセス・チェック」を挟むことが有効なのでぜひ試してみてください。

“ケ”のデザイン手法③日常的な会社の発信物に埋め込む

3つ目は、日常にメンバーの価値観など内面を知る機会を埋め込んでおくこと。組織内で身近な人とは飲み会や雑談をして内面を知る機会があると思いますが、階層が異なるメンバー等のことを知る機会は少ないというチーム・企業も多いのではないでしょうか。

ではどのように内面を知る機会をつくればよいのか。パッと思い浮かぶのは1on1や全社的な飲み会・交流会かもしれません。ただし、こうした場で必ずしも人の内面を知れるとは限らず、偶発性に任されるということもあるでしょう。

筆者はむしろ、オウンドメディアなどの会社がルーティンで発信している物がその役割を果たす上で有効だと考えています。要は、メンバーをインタビューイーとして立て、その人となりや価値観を引き出す機会をつくるということです。最近担当した案件を、そのメンバーの目線で振り返ってもらうのもよいでしょう。なお、オウンドメディアというのはあくまで一例で、社内報や社内掲示板などでも似たような機会をつくることは可能です。発信物は、発信のルーティンが決まっていることが多いので、定期的にメンバーのヒアリングをすることができます。

ちなみに筆者が所属しているMIMIGURIでは、2週間に1回、ランチタイムにzoomウェビナーを使った「社内ラジオ」(通称MIMIGURI Radio)が配信されており、メンバーの内面を知る機会になっています。人事を担うメンバーがパーソナリティとなり、メンバーを一人ずつゲストに呼んで、「入社の経緯」「思い出の一曲」「他のメンバーから募った質問」などをゲストに聞いています。この社内ラジオに込められている具体的な工夫はここでは紹介しきれませんが、普段の業務上、接することが少ないメンバーの人柄や価値観が分かり、時折その人が抱く「組織のイメージ」も垣間見えることがあります。


以上、組織開発の“ケ”のデザインということで、日常的に取り組める組織開発の方法を紹介してきました。組織開発は一発花火のように“ハレ”のデザインをするだけでなく、“ケ”もデザインしていくことが必要です。“ハレ”と“ケ”を組み合わせることで、組織開発が目指す組織の姿、すなわち健全で効果的で自己革新力のある組織になっていくのではないでしょうか。

参考文献
中村和彦(2015)『入門 組織開発ー活き活きと働ける職場をつくる』

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