困難さを創造的に乗り越えるレジリエンスの4つの戦略:連載「レジリエンスの科学」第1回

困難さを創造的に乗り越えるレジリエンスの4つの戦略:連載「レジリエンスの科学」第1回

池田めぐみ

2021.10.05/ 6min read

人生100年時代。働く期間が長期化するなかで、「決められたゴールに向け邁進する、短距離走形の働き方」から、「変化を楽しみ、ストレスとうまく付き合いながら創造的であり続ける長距離走型の働き方」へのシフトが求められています。こうした長距離走型の働き方をする上で外せない要素の1つに、レジリエンスがあります。レジリエンスとは、困難な状況に直面しても、挫折から立ち直り、前進し続けることができることや、それに必要な力を意味します。本連載では、レジリエンス入門をパワーアップさせ、職場において、個人とチームのレジリエンスを高める方法を紹介していきます。第1回目のテーマは、「困難さを創造的に乗り越えるレジリエンスの4つの戦略」です。

目次
レジリエンスの4つのパターン
起き上がりこぼし型のレジリエンス
柳型のレジリエンス
風船型のレジリエンス
スーパーボール・バネ型のレジリエンス
4つの戦略のどれがいいのか?

レジリエンスの4つのパターン

働くことに関わるレジリエンスにはさまざまな定義がありますが(Hertman et al. 2020)、平たく言うと、仕事に関わる困難な状況や大きな変化に直面しても、その挫折から立ち直り、前進し続けることができることそれに必要な能力のことを「レジリエンス」と呼びます。

「前進し続けること」とあるように、レジリエンスはその定義の中に回復だけでなく、さらなる成長を含むことがあります。Fisher et al. (2019)は、下記の図にあるように、逆境に対する反応の4パターンを提示し、そのうちの「③回復」と「④繁栄」がレジリエンスであると述べています。

また、困難や変化から回復したり、それを踏まえて成長するのにかかる時間も、どのような困難や変化に遭遇したかや、個人のタイプ、仕事状況によっても異なると指摘されています(Fisher et al. 2019)。例えば、素早い対応が必要な医療現場においては、困難な状況にすぐ対処することが求められています。一方で、キャリアの問題などを解決するような場合は、ゆっくりと対処していくことが多いかもしれません。

先行研究においても、嵐に遭遇した木などに擬えるなどいくつかのレジリエンスのタイプが紹介されてきましたが(e.g. 宇野2018)、筆者らは、近年の変化の激しいビジネス環境を踏まえ、レジリエンスをパターン別に整理しました。具体的には、①困難な出来事や大きな変化に遭遇時に、それをあしらうのか、その機会を活かすのかと言う観点と、②素早く対処するのか、ゆっくり対処するのか、という観点から、下記の4つに分類しています。

起き上がりこぼし型のレジリエンス

「起き上がりこぼし型のレジリエンス」は、困難や大きな変化をあしらい、素早く対処するようなレジリエンス戦略のことを指します。

例えば、2日続くイベントのファシリテーターを任されているAさんが、1日目に大失態をおかしたとします。次の日も落ち込んだ気持ちで挑み、パフォーマンスが落とすことを避けるために、1日目終了後にサウナに行って心と身体を落ち着かせると言った対処は、この戦略に分類されます。短い時間で、気分を回復させたい時は、この戦略が取られるかもしれません。

柳型のレジリエンス

「柳型のレジリエンス」は、困難や大きな変化をあしらい、ゆっくり対処するようなレジリエンス戦略のことを指します。

例えば、新卒のBさんが、希望していた編集部に行けず、営業配属となりショックを受けたとします。その際に、営業部で働きつつ、次の人事異動で編集部配属になれるように準備をするといった対処はこの戦略に分類されます。

解決に長い時間がかかり、かつ、自分の力だけでは解決が難しいような困難に挑む時に、しばしこのような戦略が取られます。

風船型のレジリエンス

「風船型のレジリエンス」は、困難や大きな変化を活かし、ゆっくり対処するようなレジリエンス戦略のことを指します。

例えば、先の例と同様、希望していた編集部に行けず、営業部配属になったBさんの事例について考えてみます。

Bさんは、見方を変え、「営業部に配属されたということは、自分が営業部に必要だということかもしれない」と考えました。加えて、「これまでは自分がやりたいことベースでキャリアを選んでいたけれども、周りから必要とされることを極めていこう!」とキャリアの選び方を変更しました。こうした「困難や変化を機に今までの考え方を変えながら、柔軟に回復するような軌跡」はこの戦略に分類されます。

スーパーボール・バネ型のレジリエンス

最後にご紹介するスーパーボール・バネ型のレジリエンスは、困難や大きな変化を活かし、素早く対処するようなレジリエンス戦略のことを指します。

例えば、コロナウイルスの感染拡大を受け、Cさんの料理教室の会員数は大幅に減ってしまいました。その際にCさんは、「対面で料理教室はできない状況だけれど、海外に住んでいる知人から、オンラインでその地域の料理のレシピを学ぶ機会を作れるかもしれない」と、海外に住む知り合いのシェフをゲスト講師にし、オンラインで料理教室を再開しました。その結果Cさんの料理教室の会員数は再び増加し、危機的な状況を乗り越えたといいます。

1つ前の風船型のレジリエンスと同様、スーパーボール・バネ型のレジリエンスは、不確実な変化の波に乗りながら、それを活かして柔軟にやり方を変えるような戦略です。

4つの戦略のどれがいいのか?

選択肢がたくさんあると、優越を知りたい、どれが良いのか知りたいと思う人もいるかもしれません。けれども、この4つの戦略については、どの戦略が他と比べて優れていると言ったことはありません。

また、皆さんは1つの困難や変化を乗り越えるのに複数の戦略を使っているかもしれませんし、遭遇する困難の種類や状況によっても、どの戦略をとることができるかは、異なる可能性があります。

困難な状況や、変化にうまく対処できないというときは、4つの戦略の中で、自分がよく用いるパターンとは別のパターンを試してみるのもいいかもしれません。


以下の動画コンテンツ「レジリエンスの科学:創造的に困難を乗り越える4つの戦略」では、レジリエントに創造的であり続ける”長距離走型の働き方”に向けた4つの戦略と、それらを組み合わせてレジリエントに働く方法について解説しています。ぜひあわせてご覧ください。

レジリエンスの科学:創造的に困難を乗り越える4つの戦略

参考文献
Fisher, D.M., Ragsdale, J.M. and Fisher, E.C. (2019), The Importance of Definitional and Temporal Issues in the Study of Resilience. Applied Psychology, 68: 583-620.
Hartmann, S., Weiss, M., Newman, A. and Hoegl, M. (2020), Resilience in the Workplace: A Multilevel Review and Synthesis. Applied Psychology, 69: 913-959.

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