6/26(土)に開催されたイベント「レジリエンスの科学:創造的に困難を乗り越える4つの戦略」のアーカイブ動画です。本イベントでは、ストレスとうまく付き合い、レジリエントに創造的であり続ける”長距離走型の働き方”に向けた4つの戦略について、ゲストに池田めぐみさん(東京大学社会科学研究所 助教)にお越しいただき、知見を深めていきました。
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<今週のポイント>
・VUCA時代と呼ばれる昨今、「困難な状況に直面しても、挫折から立ち直り、前進し続けることができること」を指す「レジリエンス」に対する注目度が挙がっている。
・レジリエンスを活用する戦略は、困難な出来事を「活かすーあしらう」の軸と、困難さに対して「すばやくーゆっくり」対処する軸がある。これらをマトリクスとしてまとめると、「スーパーボール/バネ型」「風船型」「起き上がりこぼし型」「柳型」の4種類のレジリエンス戦略が浮かび上がる。
・どの戦略をとるにしろ、レジリエンスは、「課題設定プロセス」「自己調整プロセス」を含んだプロセスを通じて発揮される。また「レジリエンス戦略に正解はない」というのも重要な前提である。直面する困難、個人の資質、周りの環境などにより、回復のプロセスは異なる。また、一つの戦略に固執するのではなく、複数の戦略をフェーズごとに使い分けることも効果的である。
・まずは「課題設定のプロセス」について。これらは「評価」とも呼ばれ、出来事に対する解釈や意味づけを行うことを指す。また非常に重要な点として、「問題を乗り越えられるかも」と思えることがその時点でのレジリエンスを大きく左右することが挙げられる。ただし、「思い込み」や「精神論」に頼るのではなく、「問題を脅威としないための戦略」を実行することが大切。
・レジリエンス戦略の課題設定には「(1)ポジティブ・リフレーミング」「(2)状況の確認」「(3)問題のリフレーミング」「(4)理想の精緻化」「(5)課題の定義」の5つのステップがある。
・「問いのデザイン」の課題設定のプロセスと、レジリエンスのそれとでは、「戦略」を重要視する点が共通する。ただし、目的や成果などにおいて若干の相違もあり、困難な状況を解決するにあたって、「問い」に焦点をあてるべきか、「個人の状態」に焦点をあてるべきかかは、の中で判断する必要がある。
・自己調整プロセス(対処)とは、感情や行動の調整のこと。対処方法の選択肢を豊富に知っていると回復が促される場合がある。仮説レベルでは「問題焦点型ー情動焦点型」などの分類が提唱されている。
・また、自己調整プロセスにも個人差があり、有効性も能力や環境、文脈に依存する。自分にとって合うプロセスを選択していくことが重要であり、そのためには過去の自分の行動や似たような経験を積んだ人の行動を参考にするなどが効果的とされている。
・困難さを”活かす”戦略に関しては、課題設定において創造的なリフレーミングが求められるが、まだまだ先行研究が少ない。方法論について、さらなる精緻化が求められる。
今回のイベントでは、CULTIBASE編集長・安斎勇樹と、安斎の出身研究室の後輩の池田めぐみさんが登壇。池田さんが専門とする「レジリエンス」の知見基盤としながら、そこに安斎の専門性も加味するかたちで、「ストレスとうまく付き合いながら、創造的であり続けるための長距離走型の働き方を実現するための、4つのレジリエンス戦略」というテーマで話題提供を行っています。
CULTIBASEがコンテンツを提供する上で意識している社会的意義の一つに、「不確実性が増していく社会の中で、組織として対峙するための知見を提供する」というものがあります。そして今回テーマとしている「レジリエンス」は、まさにそのような時代を迎えるにあたって、一人ひとりが理解し、ある種の身につけるべき素養として広がってほしい概念だと感じています。
過去に扱った類似のテーマでいうと、動画で語られているような「”分散と修繕”による探究の戦略」や、あるいは「ネガティブ・ケイパビリティ」などとも相性の良い概念だと思います。こちらも合わせてご覧いただくと、不確実性の中を生きる私たちに必要なマネジメントのあり方をを考える上でヒントになるかもしれません。
また、今回のイベントではさほど触れられなかった「マネジャーとしてチームのレジリエンスをどう高めるか?」については、池田さんによる連載記事で詳しく解説されています。これらの連載記事は、今回の動画に合わせて公開されたコンテンツパッケージ「レジリエンス入門」に収録されていますので、ぜひ合わせてご覧ください。
ぜひ今回のイベントをひとつの切り口として、不確実な社会に対する考え方や振る舞い方について、様々な角度から思いを巡らせてもらえれば幸いです。