研究と実践をつなぐ組織論の5つの視点:2022年の人気動画コンテンツをふり返る

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研究と実践をつなぐ組織論の5つの視点:2022年の人気動画コンテンツをふり返る

2022年もCULTIBASEでは、週に一度のライブイベントを中心に、記事やラジオなど様々なコンテンツをお届けしました。

元来、学術的知見と現場による実践知の往復をコンセプトの一つとしてきたCULTIBASEですが、春には運営元の株式会社MIMIGURIが研究機関として認定*され、アカデミックな最新知見をビジネスの最前線に届けるための学習プラットフォームとしての色を強めた一年となりました。

本記事では、CULTIBASEと研究機関が共通して理論や思想の基盤としているモデル・Creative Cultivation Model(CCM)と、研究機関が注力テーマに掲げる以下の4+1つの領域について、主要コンテンツとともにふり返ります。

[2023年注力テーマ

  • 組織学習とナレッジマネジメント
  • 組織開発と組織デザイン
  • ファシリテーション型マネジメント
  • 多角化経営の方法論
  • その他の新領域の探索

CULTIBASEと研究機関を繋ぐモデル:「Creative Cultivation Model(CCM)」とは何か?

「ファシリテーション」「経営・マネジメント」「イノベーション」「学習・人材育成」「デザイン」など、CULTIBASEが扱う領域は多岐にわたります。それらの各論を編み直し、組織の創造性の土壌を耕すモデルとして構築したのが、「Creative Cultivation Model(CCM)」です。

このモデルは、哲学・心理学・社会学・経営学など学際的な理論群を基盤として、「個人」「チーム」「組織」の3階層の主体が、創造性を発揮した状態を示しています。同時に、研究機関とCULTIBASEの双方にとって、自分たちの活動がどのように組織の創造性の発揮に繋がりうるのかを確かめる見取り図としても機能しています。

今年1月に開催したライブイベントでは、この2022年版CCMをはじめて外部に公開。この形態に至るまでの経緯や、その根底にある考え方について解説しました。

組織ファシリテーション論 最新講義:組織の創造性のマネジメント

組織ファシリテーション論 最新講義:組織の創造性のマネジメント

■このコンテンツのポイント

  • Creative Cultivation Model(CCM)は、「個人」「チーム」「組織・社会」の各層の創造性を循環させるための理論モデルである。
  • 組織が創造的であるためには、個人が創造性を発揮するだけではなく、対話を通して組織、チームが創造的な状態を作ることが重要である。こうした営みは組織ファシリテーションと呼ばれており、企業が成長していく過程でぶつかる4つの課題(認識の固定化、衝動の枯渇、関係性の固定化、目的の形骸化)を乗り越える際に欠かせない。
  • 組織ファシリテーションの基盤にCCMを用い、「個人」「チーム」「組織・社会」の各層の創造性が止揚するための知を編み、発信することが、CULTIBASEのあらゆるコンテンツに通底するミッションだと言える。

研究テーマ(1):組織学習とナレッジマネジメント

環境的・社会的な変化の激しい時代を迎える中で変化に柔軟に対応するためには、個人の「学ぶ力」を高める必要性はさることながら、組織という主体においても学び続ける姿勢が重要視されています。こうした背景から、「組織学習」と呼ばれる概念に注目が集まっています。

2022年7月に開催した「組織学習概論」では、ゲストに南山大学教授・安藤史江先生を講師にお招きし、組織学習における学術的知見について、解説いただきました。特に部下の育成やマネジメント、現場の活性化に腐心する立場であるミドルマネジメント層の方におすすめの動画です。

組織学習概論:学び続ける組織をつくるには? 

組織学習概論:学び続ける組織をつくるには? 

■このコンテンツのポイント

  • 組織学習とは、フーバー(G.P. Huber, 1991)によると「情報処理を通じて、学習主体(である組織)の潜在的な行動の範囲が変化すること(そのとき、組織学習が生じた、とみなす)」と定義づけられる。
  • 安藤先生は、より理解しやすい解釈として、組織学習とは「組織におけるルーティンが変化し、定着すること」だと語る。
  • 組織学習のプロセスは、「知識の獲得」→「情報の移転」→「情報の解釈」→「組織の記憶」という4フェーズで構成される。これらをサイクルとして回し続けることで、組織の対話や価値観、行動などを包括する組織ルーティンが変化していく。また、組織学習において特に大事なのは、知の追加や融合ではなく新たな知への置き換え(変革・学習棄却)だと安藤先生は主張する。
  • 組織学習においてミドルマネジャーは中心的な存在であり、「メンバーに対するマネジメント」と「組織システムに対するマネジメント」の2つの役割が求められる。

研究テーマ(2):組織開発と組織デザイン

技術革新やライフスタイルの多様化にともない、ビジネスパーソンの一人ひとりにとってのよい組織・よい仕事のあり方もまた、十人十色です。そうした中で、多様な人々が豊かに協同し、共通の目的を達成し続ける組織をつくるには、「組織開発」や「組織デザイン」のアプローチが効果的です。

組織開発は「人と人との関係性の問題に働きかけ、組織に”健全性”や”効果性”をもたらすこと」と定義され、組織内の関係性やコミュニケーションといった目に見えない領域を主に扱います。対して組織デザインは、主に構造や制度、仕組みづくりの観点から、組織や事業、そしてそれを支える人の成長に合わせた設計を施す方法論です。

組織開発と組織デザインは、どちらか片方だけ行えばよいというものではありません。両方の観点から組織を捉えること、また、内外で発生する様々な変化に応じて手を加えながら、必要な調整を加えていくファシリテーション的な姿勢が大切です。

CULTIBASEでは、下記のコンテンツを中心に組織開発と組織デザインについて、コンテンツを発信してきました。

多様性がもたらす“弊害”にいかに向き合うか:組織開発によるアプローチ

多様性がもたらす“弊害”にいかに向き合うか:組織開発によるアプローチ

■このコンテンツのポイント

  • 本動画では多様性は「人が持つ『異なる性質』が認識されている状態のこと」と定義された。
  • 昨今「チームの多様性を高めることが、イノベーションの推進やクリエイティブな成果を生む上での鍵になる」という認識が、広まっている。
  • 一方で多様性は、コンフリクト(衝突/対立/葛藤)と表裏一体の関係でもある。多様性を上手く取り入れ組織開発を進める上では、「同質性に着目するモード」と「差異に着目するモード」を、組織の状態に応じて切り替えることの必要性や、ファシリテーターとしてその舵取りをどのように行っていくことができるのか、探究した。
組織の推進力を高める意思決定のプロセスデザイン

組織の推進力を高める意思決定のプロセスデザイン

■このコンテンツのポイント

  • 本動画では組織デザインの一つの事例として、組織の推進力を高めるための意思決定のプロセスデザインを紹介した。
  • 意思決定のプロセスをデザインする際は、①意思決定のための情報取得 ②意思決定方針の理解と浸透 ③情報流通に関するネガティブな印象の払拭 の3点を意識することが重要である。
  • この3点を意識し、具体的に意思決定をスムーズにする会議の設計(カレンダーデザイン)について、具体例を交えた解説が行われた。

研究テーマ(3):ファシリテーション型マネジメント

「VUCA時代」とも呼ばれる先行きの見えにくい時勢の中では、トップダウン一辺倒の組織であり続けることのリスクが増大しています。

現代の企業や事業運営の中で様々に発生する複雑な問題は、その多くが「不確実性」に起因します。それらに対処するためには、「AorB」の二元論的な考え方から脱却し、その間の中で自分たちらしい「C」を編みだすような、ファシリテーション型マネジメントが備わっていることが大切です。

その鍵を握るのはミドルマネージャーです。従来の組織におけるミドルマネージャーは、数値や目標を管理し、それらをいかに効率的に”やらせる”か、というのが基本的な役割されていましたが、そうではなく、組織の理念とメンバーの意志やスキルを結びつけるファシリテーターとしての役割の重要性が増してきているのです。

次のコンテンツでは、そのようなファシリテーション型マネジメントを身につける上で必要な3つの作法について解説しています。

ミーティング・マネジメントの作法:問いかけ、立て直し、語りかける

ミーティング・マネジメントの作法:問いかけ、立て直し、語りかける

■このコンテンツのポイント

  • 人間の深い学びは、内的動機と外的価値の葛藤を乗り越え、両立できたときに起こる。そのため、部下の成長を支援する際には、そのバランスを注意深く探る必要があるだろう。
  • 例えば、期初の目標設定では、事業目標だけでなく部下自身が今後どう成長したいのか(成長目標)まですり合わせることなどが効果的だと講師の安斎勇樹は語る。
  • この動画では、組織の理念とメンバーの意志やスキルを結びつけるファシリテーターに求められる3つの作法として(1)フィードバック-立て直しの作法 (2)ストーリーテリング-語りかけの作法 (3)ファシリテーション-問いかけの作法 を紹介し、日々のミーティングをより効果的に行うための方法を探った。

研究テーマ(4):多角化経営の方法論

先述したVUCA時代においては、組織を取り巻く様々な前提が大きく変化することが指摘されています。そうした中では、組織の未来を単一の事業に託すのではなく、新たな事業を創出し、リソースを適切に配分する「多角化」の重要性が増してきています。

CULTIBASEと研究機関では、「多角化経営の方法論」を注力テーマに掲げ、これからの時代に向けて知っておくべき多角化の学術知と実践知について探究しています。10/22(土)に開催されたイベントでは、ゲストに慶応大学商学部教授・牛島辰男先生をお招きし、事業多角化の際に否応なく発生する様々な”ジレンマ”といかに向き合うのか、お話を伺いました。

事業多角化のジレンマをいかに乗り越えるか?:シナジーを生み出す組織デザイン論

事業多角化のジレンマをいかに乗り越えるか?:シナジーを生み出す組織デザイン論

■このコンテンツのポイント

  • 事業多角化とは、企業が複数の事業を持つことであり、単独の事業を抱えるだけでは生み出されない事業間の相乗効果をもたらす。複数事業があるからこそ生まれる付加価値や利益=シナジーを生み出すことが、多角化経営の究極の目的だ。またシナジーには、事業シナジーと財務シナジーの2種類が存在する。
  • 事業シナジーとは、事業間でモノや人、それに紐づくスキルや知識などの資源を共用することで、事業の競争力と稼ぐ力が高められることを指す。共用の資源をインプットし、①資源の移転、②活動の調整、③活動の統合というメカニズムで生まれる。
  • 財務シナジーは、事業間で資金を移動させることで、事業の成長力や安定性を向上させる状態を指す。財務シナジーは、①ポートフォリオマネジメントによる事業間での資金の共用を通じ、②キャッシュフローを安定化させるというメカニズムで発揮される。
  • では、企業が戦略的にシナジーを作るためには何が必要なのだろうか?本イベントではシナジーを作るための組織デザインについて解説した。

また、2023年最初のイベントでは、スタートアップ企業が事業多角化を推進する中で、それらを支える人事制度設計の理論と実践知について取り上げます。ゲストは金田宏之さん(組織・人事コンサルタント/株式会社インプリメンティクス代表取締役)。関心のある方は、ぜひ下記ページより詳細をご確認ください。

スタートアップのための人事制度設計論:拡大する組織に必要なHRの勘所とは?

スタートアップのための人事制度設計論:拡大する組織に必要なHRの勘所とは?

その他の新領域の探索

また、上記の領域にとらわれず、「組織の創造性の土壌を耕す」というミッションに向けて、他にも様々なコンテンツを提供しています。例えば、下記のコンテンツでは、一世を風靡した「デザイン思考」ブームをふり返り、改めてデザインを組織に根付かせるために何ができるのか、語り合いました。

デザインを組織に根付かせる:“良さの探究“を営むためのプロセス・モデルとは?

デザインを組織に根付かせる:“良さの探究“を営むためのプロセス・モデルとは?

■このコンテンツのポイント

  • デザイン思考という言葉を説明する際「共感→定義→アイデア創造→プロトタイプ→テスト」のいわゆる5ステップモデルが引用されることは多い。
  • しかし、プロセスや言葉のみが独り歩きすることがデザイン思考がうまく回らない原因になると小田は語る。
  • 本動画では、デザイン思考が真価を発揮するために必要な観点を改めてあぶり出し、デザイン思考を進める上で役立つデュアルサイクルモデルの考え方について解説。デザインを組織に根付かせるプロセスについて考察した。

今後もCULTIBASEでは、今日紹介した観点を中心に組織の創造性の土壌を耕すための研究的知見を発信していきます。それらの供給源となる研究活動の幅もさらに広がりを見せはじめており、この成果は論文や書籍、またCULTIBASEのコンテンツとして、皆様にお届けできることと思います。

2023年もどうぞよろしくお願いいたします!

脚注

*2022月2月をもって文部科学省より科学研究費補助金取扱規定(昭和40年3月30日文部省告示第110号)第2条第4項に規定する「研究機関」として正式に認定。

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