「探究の戦略」講義 2021年5月 – 探究の分散投資戦略

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約78分

5/29に開催されたイベント「講座 探究の戦略」のアーカイブ動画です。「講座 探究の戦略」は Lab会員の一人ひとりが今後自律的に探究活動を進めていく上で、 最初の一歩となる「テーマ(問い)」を発見することを目的としたイベントとして、定期開催しています。講義パートでは、 探究の意義や戦略的に探究を進めていくポイントなどをCULTIBASE編集長・安斎勇樹が解説しています。

<今週のポイント>
・現代社会は様々な要因により、「何が正解かわからない時代」を迎えている。『ワーク・シフト』や『両利きの経営』などに注目が集まる中で、別の切り口として、日常に「探究」を組み込むことも一つの戦略として重要である。
・探究の辞書的な意味は「物事の本質を明らかにしようとすること」。ここでいう「本質」とは、絶対的な真理ではなく、人間や社会における納得解のようなものだと捉えられる。そのような解を導き出すためには、問いを起点に人・チーム・組織の本質に迫る「知」を自ら創りだしていくような探究活動が求められる。
・異領域に見識を拡げる「知の探索」と、1つの領域を深堀りする「知の深化」によるT字型の学習によってより深い探究が実現する。
・何を探究するのかを決定するためには、自身の「探究テーマ」を見つける必要がある。探究を深める過程で探究テーマの抽象度や形式は変化していくものであり、同時に複数の探究テーマを持っていても良い。
・探究の戦略の基盤となる戦略は「問いを起点とした『分散と修繕』戦略」。情報が氾濫する現代社会においては、目標設定を重視した戦略よりも、目の前の問いを手持ちの材料で紐解いていく「分散と修繕」によるブリコラージュ型の戦略が効果的である。
・他方で、自身の内側に目を向けることも重要である。アイデンティティの言語化と問い直しを行いながら、その時点で探究したいと思えるテーマを形成していく。
・探究のリソースをいかに確保するか。大前提として、自分にあった効果的な探究スタイルを見つけることが大切である。シングルタスク至上主義になりすぎず、積極的にマルチタスクを実践しながら、自分なりのやり方を見つけていく。マルチタスクの際には、タスク間の「距離」や「相性」の設計を意識すると良く、新結合を誘発することで投資対効果の向上を狙う。

CULTIBASE Labでは、メンバーの一人ひとりが自律的に学び続けていく「探究」を基本的な学習スタンスとして想定しています。先日5月10日開催の太刀川英輔さんと塩瀬隆之さんをゲストにお招きしたイベント『進化思考』を読み解く「問いのデザイン」でも話題になっていたように、昨今の教育現場でも盛んに導入が進められている「探究」ですが、大人である私たちの学習を考える上でも、同様に極めて重要なものであることは、あまり知られていないように感じます。もちろん「探究したいから探究する」といった、ある種の直感と好奇心に従って行なわれる探究が生み出す学びも多くありますが、一方で、自身の探究が、自分やチーム、組織にどんな価値をもたらすのかに目を向け、戦略的にその価値が増えるようにデザインしていく視点を持つこともまた大切です。

今回の動画の中でも、異なる二つの要素を往復したり、サイクルとして順番に接したりするモデル図が多数示されています。「勉強・学習」と「探究」、「深化」と「探索」、「インプット」と「アウトプット」、「概念的関心」と「実用的関心」など。こうした一見相反する二つの概念の成否を安易に判断するのではなく、その間に立ち、両方の価値を認めながら、状況に応じて適切なバランスで運用し続けること。その楽しさこそが探究の醍醐味であり、知の探究者に求められる姿勢なのだと思います。

「探究の戦略」は現在2・3ヶ月に一度のペースで開催していますが、今回の安斎の解説は、探究の分散投資戦略をメインに話しているものになります。他の探究の戦略講義と併せて御覧ください。

今回の講座はCULTIBASEの運営陣が探究的な思考を生み出すコンテンツや場をいかにつくるかを考える上でも、一つの知的基盤となっています。CULTIBASE Labという学びの場をより深く理解し、豊かに活用していただくためにも、ぜひ見てほしい一本です。

チャプター

00:11 チェックイン&イントロダクション
09:05 なぜ探究が必要なのか?
13:00 探究の特徴とプロセス
30:43 探究の基本戦略:問いを起点とした『分散』と『修繕』
48:40 探究の戦略(1):アイデンティティ戦略
59:18 探究の戦略(2):分散投資戦略

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出演者

株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO

東京大学大学院 情報学環 客員研究員

1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO/東京大学 特任助教授。

企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の可能性を活かした新しい経営・マネジメント論を探究している。主な著書に『問いのデザイン』、『問いかけの作法』、『パラドックス思考』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』『チームレジリエンス』などがある。

X(Twitter)noteVoicyhttp://yukianzai.com/

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