4/17開催のライブイベント「学習環境のイノベーション:”両利きのデザイン”は可能か?」のアーカイブ動画です。本イベントでは、ゲストに山内祐平先生(東京大学大学院情報学環 教授)をお招きし、山内先生の近著『学習環境のイノベーション』の概要について話題提供いただいたのちに、安斎勇樹を聞き手としながら、デザイン論の二項対立を超える“両利き“のアプローチの可能性について、ディスカッションを深めていました。
<今週のポイント>
- 山内先生は安斎の修士・博士課程の指導教官であり、最も影響を受けた”師匠”の一人。
- オンラインと対面を組み合わせた「反転学習」を始め、技術の進歩に応じて、教育・学習のあり方は大きく変わってきている。
- 山内先生は、学習環境デザインを研究する中で「問題解決的デザイン」と「問題創出的デザイン」ではデザインプロセスが違うのではないか、と仮説を立てた。
- 「問題解決的デザイン」は現実を調査するところを起点とするが、「問題創出的デザイン」のプロセスは、問題の設定が自分から始まる。内省や他者との対話をしながら、現実に展開していく。
- 「CCM」や「リサーチ・ドリブン・イノベーション」が一つの下地としている「両利き」の考え方は、「問題解決」と「問題創出」をあえて分けない考え方である。
- 議論を重ねる中で、「(瞬間的なイノベーションを起こすという観点ではなく)『学習』の観点から『両利き』の人として成長し、キャリアを歩んでいくことが大切ではないか」という仮説が新たに見えてきた。
山内先生が所属する「情報学環」の「学環」とは、東京大学のホームページによると、異分野と結びつき、新しい「学の環」を編成することによって成立する「知の運動体」を意味するそうです。そしてこうした環境下で研究に取り組んできた山内先生と安斎による今回のイベントも、「学習」「デザイン」「イノベーション」と複数の領域を横断しながら理解を深めていく内容になっていたように感じます。
後半以降に展開された「両利き」に関する議論も、終わってみれば、もともと企業におけるイノベーション創出を念頭に置き、どちらかといえば経営学に位置づけられるであろう「両利き」や「リサーチ・ドリブン・イノベーション」といった考え方に対して、山内先生が発達や学習の観点から切り込み、新たな視点を提供していたように思えます。異なる分野からの視点を取り込み、時に部分的に壊されながらも、雨降って地固まるといったふうに、最終的にはより強い基盤にアップデートされていく。そのような探究的であり、学際的な理論構築のプロセス特有の厳しさ、そして面白さに触れられる、貴重なイベントとなりました。
イベントを「学習」の観点から見るのか、「経営」の観点から見るのかなど、複数の観点に立ってみることで、このイベントの面白さに触れてもらえたらと思います。
■チャプター
00:00 安斎と山内先生の出会いとこれまでの研究テーマについて
21:31 話題提供:学習環境のイノベーション
56:21 書籍『学習環境のイノベーション』の裏話
1:00:05 問題解決/創出モデルの”両利き”はデザイン可能か?
1:32:40 アフタートークと今後のイベントについて