毎年10月1日は『大切な問いと向き合う日』(通称・問いの日)です。問いの日は、「と(10)い(1)=問い」と読む語呂に合わせて、2021年から日本記念日協会による認定のもと正式な記念日として登録されています。
CULTIBASEでは、今年はこの「問いの日」に合わせ、今年も書籍『 問いのデザイン -創造的対話のファシリテーション 』の著者である安斎勇樹(株式会社MIMIGURI 代表取締役 Co-CEO)と塩瀬隆之さん(京都大学総合博物館 准教授)による対談の模様をお届けします。
※本動画は9/29(金)正午から、YouTube内でも無料配信いたします。ぜひ多くの方に共有しながら、一緒に「問い」について考える機会にしてもらえると幸いです。
「生成AI時代に必要な「問い」のデザイン力を磨くには?」のチャプター
00:11 イントロダクション/登壇者自己紹介/「問いの日」とは何か?
08:04 問いのデザインとは?これまでの歩み
15:18 生成AI時代の「問いのデザイン」を語り合う
34:55 著者ふたりの今後の探究
52:40 無料オンラインウェビナーのお知らせ
「生成AI時代に必要な「問い」のデザイン力を磨くには?」のポイント
- 毎年10月1日は大切な問いに向き合う日(通称・問いの日)。CULTIBASEでは『問いのデザイン』著者の安斎勇樹と塩瀬隆之先生をゲストにお迎えし、毎年この日に問いをテーマとした対談を配信をしている。『問いのデザイン』は5年間の執筆期間を経て2020年6月に出版された。コロナ禍初期の刊行とあって著者ら自身は「不安だった」と語るものの、日本の人事部HRアワード2021書籍部門最優秀賞の受賞や中国語版の出版など人気を博し、2023年9月現在累計5.6万部を突破している。
- 「問い」にまつわる今年のホットトピックとして、ChatGPTをはじめとした「生成AI」の台頭が挙げられる。生成AI時代に「問う力」の重要性が改めて注目を集め、実際、安斎・塩瀬の両者にも多くの取材や質問が寄せられているという。
- 問いのプロフェッショナルは、生成AIをいかに活用しているのか。安斎は、自身の書籍の構想に関するエピソードを紹介しながら、発想がAIに予測されることによって、モチベーションが低下する側面と、同時にそれが刺激になる側面の両方があると語る。また、塩瀬も学生との生成AIを活用した学習の場において、「当人だけでは見えていなかった異なる立場からの意見に触れ、自身が無意識に働かせていた偏見(バイアス)に自覚的になれた」ことが、多くの学生から反響があったと語る。
- 上記のエピソードから、生成AIを使うにあたってポイントは、一回の“最高の問い”によって”最高の答え”を引き出そうとするのではなく、AIと何度も応答をし、アイデアのラリーをしながら気づきを得ていくプロセスをつくる意識が大切だと安斎は語る。また、AIによって生成された回答をジャッジするのは生身の人間であり、その評価基準を磨いていくことも他方で求められる。
- AIは世の中における最大多数の回答を導き出すことを得意とする一方で、それを打ち壊すような尖った意見を出すことは不得手としている。そのため、AIによって「良い答え」を出そうとするのではなく、AIが生成する答えを土台としながら、自身の問いのデザイン力を磨いていくような姿勢が重要になるのではないかと、塩瀬と安斎は述べる。
- 安斎・塩瀬は現在何を探究しているのか。安斎は、CULTIBASEでもよく語られている「軍事的世界観」から「冒険的世界観」へのパラダイム・シフトについて、概要を語る。
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- また塩瀬は安斎の「軍事的世界観」の話に関連して、かつて取り組んでいた機械工学の研究の際に、軍事研究の産物である魚雷の追尾機能を家庭用ロボットに転用しようとした事例を語り、「軍隊や軍事由来のものは効率の良さを追求するには向いているが、好奇心の発揮などには向いていないのではないか」と考えたという。そしてそこから好奇心を湧き立たせる要因として「問い」の重要性に気づいたのだと、『問いのデザイン』の構想にまつわるエピソードを語った。
- 他方で、塩瀬が昨今強い関心を寄せるキーワードとして、「平和と戦争」があると語る。現在関与している展示のテーマが「平和」であり、「平和」を示すには、対比的に「戦争」を見せるしかないことに気がついたと述べる。「戦争という言葉を使わずに平和を考えることはできないのだろうか?」と考え、平和に対してできることを模索していきたい、と語る。そのほか、塩瀬が現在執筆中の書籍の話や、今後の展望などを語りつつ、今年の「問いの日」対談は幕を閉じた。
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