2/4(土)に開催した「環境変化に強い「現場力」の高め方:ものづくり企業のケイパビリティ研究に学ぶ」のアーカイブ動画です。本イベントでは、経営戦略やイノベーション・マネジメントを研究分野とする、成蹊大学経営学部教授の福澤光啓先生をお招きし、環境変化に強い「現場力」について考えました。
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「環境変化に強い「現場力」の高め方:ものづくり企業のケイパビリティ研究に学ぶ」のチャプター
09:05チェックイン :あなたにとって”いい現場”の条件とは?
15:24 話題提供:たゆまぬものづくり組織能力
16:35 組織の能力の理論背景と研究動向
24:08 企業の競争力の重層構造
37:43 前半の講義Q&A
45:37 環境変動に対する生産現場の適応力 〜自動車産業〜
1:01:40 環境変動に対する生産現場の適応力 〜電気産業〜
01:20:00 後半の講義Q&A
1:27:34 現場力を活かし・育てることのできる戦略のあり方とは?
1:38:47 感想&ディスカッション
「環境変化に強い「現場力」の高め方:ものづくり企業のケイパビリティ研究に学ぶ」のポイント
- ケイパビリティに注目が集まった背景として、80年代にアメリカ企業のものづくりが日本企業に抜かれだしたことに対する危機感が生じたことがあげられる。90年代以降には、戦略論でRBV(リソースベストビュー)という考え方が広まった。人やものといった資源だけでは企業の競争を実現することはできず、こうした資産を価値に変換していくための特性がケイパビリティと定義される。
- 競争優位の源泉として組織能力に焦点があたるようになったが、では組織能力とは具体的にどのように定義されるのだろうか?福澤は、「ある所与のリソースを持つ企業が、そのリソースを活用して競争力のある安定的なフローを生み出す力と定義される(藤本・天野・新宅、2007)」と語る。組織内での仕事のやり方、チームワーク、働き方は容易に真似しづらいため競争優位につながりやすいと指摘する。
- 80年代半ば以降は自動車生産性の国際比較が行われ、日本国内工場が欧米に比べて高い生産性を持つことが示された。こうした現場に見られる能力は、「静態的能力」と「動態的能力」に分けられ、前者は普段の仕事を上手に行う能力、後者は経時的に仕事をダイナミックに変化させる能力だと語る。
- 高い価値を生み出すルーティンという観点では、開発や生産、調達、販売といったバリューチェーン/サプライチェーンを構成する様々な活動に関わる物と情報の流れをいかにつくるかが鍵になるといい、様々な仕事の間が上手に組み合わさって統合されているとパフォーマンスが高まると語った。
- 続いて、調査実証的な分析に基づいた自動車、電気産業の事例に着目し解説がなされた。ある自動車工場では、リーマンショック後に輸出台数が減り作業者を減らしたものの、その後生産量が回復し、少ない人数で多くの生産を行わざるをえない高負荷な状況に陥った。しかし、生産性が高い状態を実現できたといい、その背景には垂直分業の関係を柔軟に変え、リーダーが生産ラインにはいるなど環境変動にも上手に適用できていたと指摘する。
- 国内電機メーカーでは、円高や韓国、台湾、中国企業との競争激化によるシェア低下といった逆風が吹いていた。福澤が聞き取り調査を行ったところ、工場自ら考えての行動や、生産機能に加え開発や営業といった機能も工場に集結させ生産性向上を行っていたと語る。
- ものづくり現場を取り巻く環境はどんどん厳しくなっている。国内工場を閉鎖し海外工場へシフトする流れもあるが、グローバル化と国内拠点の活性化を両立させることが大事だと主張する。そのためには、海外事業をテコにすることで本国の事業転換をポジティブに行ったり、グローバル拠点の競争におかれつつも経営上の創意工夫があれば現場は活性化し、本国拠点のレベルも向上すると述べた。