CCMとは何か? 新時代の整合性モデル “Creative Cultivation Model”は、冒険的組織づくりの羅針盤
CCMとは何か? 新時代の整合性モデル “Creative Cultivation Model”は、冒険的組織づくりの羅針盤

CCMとは何か? 新時代の整合性モデル “Creative Cultivation Model”は、冒険的組織づくりの羅針盤

2024.03.12/7

企業では、理念の開発・浸透、人事や評価制度の構築、事業目標の管理、採用や人材育成、カルチャー醸成……「組織づくり」として、さまざまな施策が行われています。

しかしこれらは組織をつくる断片的な施策であり、組織づくりの要は、組織のあらゆる構成要素を「整合」させることにあります。

そこで本記事では、CULTIBASEを運営する株式会社MIMIGURIが提唱する「新時代の整合性モデル:Creative Cultivation Model(CCM)」について紹介します。

以下の動画でも解説しています。合わせてご覧ください。

MIMIGURIが提唱する、新時代の整合性モデル“Creative Cultivation Model”(CCM)とは

本モデルを提唱する社会的背景として、個人や社会の価値観の変化があります。

個人のキャリアは「会社中心」のキャリア観から「一人ひとりの人生中心」のキャリア観にシフトしています。資本主義が問い直されたり、シェアを奪い合う競争ではなく、企業同士が協働し新たな価値を創造する「共創」の考え方が広まったりなど、社会の価値観も急速に変わりつつあります。

そのような中で企業には、軍事的世界観から冒険的世界観へのシフトが求められています。軍事的世界観から冒険的世界観へのシフトとは「もっとゆるくラクに働こうよ」という意味ではありません。冒険的世界観を組織において実践するためには、むしろより高度なマネジメントが求められます。

そのための羅針盤となるのが「新時代の整合性モデル:Creative Cultivation Model(以下、CCM)」です。

MIMIGURIが提案する「Creative Cultivation Model(CCM)」

冒険的世界観における組織づくりは、事業における社会的価値と、個々人の自己実現の両立を重視します。つまりCCMとは、事業を通して社会的価値を探究しつつも、社員一人ひとりの自己実現を諦めない、冒険的組織をつくるための羅針盤なのです。

CCMは一見すると要素が多く、わかりづらいと感じられるかもしれませんが、ここから順を追って解説します。

まず、中央の軸に注目します。一番下には、組織の内的動機の源泉である「個々の自己実現の探究」があり、一番上には組織としての外的価値の最たるもの、すなわち「社会的価値の探究」があります。

その間には「組織アイデンティティの探究」「事業ケイパビリティの探究」の2つが挟まっており、それぞれの要素をつないでいます。

「組織アイデンティティの探究」とは、我々がどのような存在であるか、組織の独自性を表す共通認識(組織らしさ)を磨いていくことです。

「事業ケイパビリティの探究」とは、組織として何をメインの得意技とするのか、複数の事業のコアとなる、企業の強みとなる独自の能力(コア・ケイパビリティ)を磨いていくことです。

組織づくりの本質は、これら4階層の探究の営みを、機能的かつ精神的に整合させることにあります。

もちろん、社会的価値の探究と個々の自己実現の探究を”直接”つなげることができるのであれば、それに越したことはありません。実際、人数が少ないスタートアップ企業の初期フェーズであれば「一人ひとりのやりたいこと=社会に生み出したい価値」になっていることもあり、自然に整合がとれる場合もあります。

スタートアップの場合は、初期メンバーの自己実現欲求が、社会的価値に直結していることが多い

しかし、人数規模が大きくなると、企業として目指すべき社会的価値(=組織の全員で協力するからこそ達成できる価値)と、一人ひとりの個人の自己実現の間には、あまりに距離が生まれてしまい、ダイレクトには整合させづらくなります。

また、組織が成長すれば、事業に直接的に貢献するメンバーだけでなく、人事、経理、総務など、間接部門のメンバーの重要性が増し、人数も増えていきます。間接部門のメンバーの業務は、組織の社会的価値の探究を、文字通り間接的に支えています。たとえば、採用担当者が、自社のらしさにフィットして、自社の強みを支える人材を採用することは、組織の「組織アイデンティティの探究」「事業ケイパビリティの探究」に貢献しています。

たとえばAI技術を扱うベンチャー企業の場合、機械学習のエンジニアはそこで会社としての社会的価値の探究と個々の自己実現の探究を両立できていたとしても、コーポレート部門の人はその会社にいる意味がわからない(他の会社でも同じ仕事ができる)、というようなことが起きてくる可能性があります。

そこで、「事業」「組織」「職場」の3つの階層を設け、「事業ケイパビリティの探究」と「組織アイデンティティの探究」という2つの媒介変数を挟むことによって、どんな組織のどんな部署の人であっても、メンバー全員が自己実現を諦めずに、この組織にいる意味を感じられる組織づくりの可能性を模索できるのが、このモデルのひとつの意義です。

「事業・組織・業務構造」の機能的整合、「ブランド・組織文化・職場風土」の精神的整合の両立

CCMにおいては、「事業」「組織」「職場」のそれぞれのレベルで整合性を取っていく必要があります。このとき必要なのが「業務構造」「組織構造」「事業構造」といった構造(ハード)の機能的整合と、「職場風土」「組織文化」「ブランド」といった文化(ソフト)の精神的整合です。

組織が大規模になると「事業」「組織」「職場」は整合どころか分断が起きやすい。
これを「構造(ハード)」と「文化(ソフト)」の両面から噛み合わせる。
構造(ハード)は機能的・論理的に整合させる。
文化(ソフト)は精神的・物語的に整合させる。

「業務」や「組織構造」など、構造(ハード)の機能的整合の重要性は、CCMの元となったナドラー&タッシュマンの整合性モデルの時代から指摘されていました。

一方で現代では、「企業とつながっていると感じられる」「自社のブランドに誇りを持てる」といった、従業員の主観によって解釈される、精神的な整合性も非常に重要になってきています

そのためこのモデルでは、構造の機能的整合と対になるものとして、文化の精神的整合という軸を置きました。事業を対外的に印象付ける「ブランド」、組織が暗黙知的に持っている規範である「組織文化」、職場の雰囲気や人間関係、コミュニケーションのあり方を表した「職場風土」と、それぞれの階層に対応する要素を配置しています。

最も重要なのは、個々の自己実現の探究と社会的価値の探究を整合させることですが、その実現のためには「事業」「組織」「職場」のそれぞれの階層で機能的整合かつ精神的整合を噛み合わせる必要がある。CCMは、まさに現代の経営の複雑なバランスを表した見取り図なのです。

CCMを実現させ、組織の整合性を高めるためには、「事業」「組織」「職場」のそれぞれの階層を絶えずデザインし続けることが重要です。

CCMは、あくまで経営・マネジメントチームの対話ツール

事業・組織・職場の各階層は密接に絡み合っており、すべてが完全に整合したらゴールということではありません。絶えず変化を自ら生み出しながら、整合を取ろうとし続けることが重要です。

そのためには、CCMを客観的な診断ツールではなく、経営・マネジメントチームの対話のツールとして使うことがポイントです。

冒険的世界観に基づく組織づくりは、組織のどこにズレが生じているのか、現在の状況を各々が見立て、共有することから始まります。

まずはみなさんの組織で「構造は機能的に整合しているだろうか?」「文化は精神的に整合しているだろうか?」「各現場で自己実現の探究は支援されているか?」「最も整合が切れている部分はどこか?」など内省してみて、ぜひ対話ツールとして使ってみてください。

※本記事は安斎勇樹のnote21世紀の組織づくりのスタンダードを打ち立てる──MIMIGURIの知を結集した「新時代の整合性モデル」とは? を再編集したものです。

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