12/3(土)に開催した「予期せぬ事態に強い組織の備え方:日経電子版の障害訓練に学ぶ、ナレッジ共有の方法論」のアーカイブ動画です。本イベントでは、日本経済新聞 電子版(通称・日経電子版)が実施する”障害訓練”のノウハウをインタビュー形式で掘り下げ、チームとして予期せぬトラブルに備えるための実践を学びました。
「予期せぬ事態に強い組織の備え方:日経電子版の障害訓練に学ぶ、ナレッジ共有の方法論」のチャプター
03:05 CULTIBASE Labの紹介
09:20 予期せぬ事態に強い組織の備え方:日経電子版の障害訓練に学ぶ、ナレッジ共有の方法論の導入
11:29 チェックイン:最近失敗から学んだこと
16:30 本日のテーマ:予想外のききから学習し、成長する組織/チームをつくるには?
23:00 池田による日経新聞電子版の方へのインタビュー
27:18 障害訓練をはじめるようになったきっかけ
30:06 障害訓練の概要
31:27 障害への対応力が特定の人に依存しないために何ができるか?
33:41 障害訓練によってどんな効果が得られたか?
36:12 対応マニュアルを活用するための工夫は?
38:14 システム化できる部分と人に任せる部分を判別するコツは?
39:25 訓練の課題を設計する際のポイントは?
42:34 訓練の学びを最大化する「振り返り」の設計について
50:17 困難に強いチームの特徴は?
51:46 困難に強いリーダーとは?
55:30 危機管理に強いリーダーに求められる姿勢とは?
59:57 予想できない困難に直面した時にチームが前を向くには?
01:03:31 まとめ・困難に強いチームを作る上で大事なことは?
01:07:33 本日のテーマを捉える2つの観点
01:11:23 パネルディスカッション:危機に対処した個人の学びを組織の学びにつなげるには?
01:24:00 今後のライブイベント
「予期せぬ事態に強い組織の備え方:日経電子版の障害訓練に学ぶ、ナレッジ共有の方法論」のポイント
不確実性の増大が指摘される昨今、組織内外で発生する様々な変化への対応が組織に求められている。突発的な困難さに対する集団での対処やそのために必要な力は「チームレジリエンス」と呼ばれる。チームレジリエンス研究者の池田めぐみ(株式会社MIMIGURI Researcher/東京大学社会科学研究所 助教)は、組織が困難を乗り越える際には、「回避」「対処」「学習」の3つのステップが重要だと指摘する。本イベントでは、日本経済新聞 電子版(通称・日経電子版)が実施する”障害訓練”のノウハウをインタビュー形式で掘り下げ、チームとして予期せぬトラブルに備えるための実践を学んだ。
日経電子版では、1年ほど前から”システム障害訓練”を実施している。日本経済新聞社 技術企画グループの梅崎によると、その背景には、システムの運用期間が長くなるにつれ、当初の運用や過去の障害内容を把握しているのが一部のメンバーのみとなり、対応が属人化するという課題があると指摘する。また、障害対応は日常業務で触れることも少なく、いざという時に対応手順の資料へのアクセスが遅れるという課題もあると語る。
そこで、クラウドサービス等の影響によるシステムダウンを想定した訓練や、最も対応に適した人がいない状況を想定した障害対応の訓練を行い、振り返りを通じて組織の学びを深めていると語る。
では障害対応の訓練は、組織にどの様な変化をもたらしたのだろうか?梅崎は、良かった変化として以下の2点をあげた
- チームの調査分析能力が上がり、限られた時間での問題解決の姿勢が得られた(解決できなかった部分は事前準備が必要との認識を得られた)
- 手順のドキュメントのみならず、影響範囲が分かる資料をつくったり、解決につながるアクションやワークフローのメンテナンスがなされるようになった
しかし梅崎はまた、手順レベルに落とせない部分に人間の判断を介在させることの重要性を指摘し、複数ある問題のうち優先度をつけるなど、機械化できない部分の対処に慣れる意味でも具体ケースを想定した障害訓練の意義を語った。
また、訓練の後にはKPTのフレームワークを用いて振り返りを行っており、
- 数をたくさん出す
- 自分のミスも積極的に出してもらう
- 改善の活動をパブリックにする
という点を大事にしていると語る。
自分のミスでも積極的に出してもらうために梅崎は「個人の問題にせず、先輩も失敗を公開していくことで心理的安全性を保つ」といった工夫をしていると述べた。
システムの障害に限らず、予想できない困難を乗り越えるチームをつくるにはどうすればよいのだろうか?池田の問いかけに対し、梅崎は承認が得やすい環境や適切な権限移譲を通じて、課題解決をしやすくしていくことが現場にとって大事だと語り、実際に急にリモートワークへ移行した際には「会社のネットワークに負担をかけない形での外部アクセスの方法」が現場主導で進められ運用に至った例をあげた。また、渡辺はマネジメント層はなるべく現場に多角的な情報提供を行うことが大事だと述べた。
インタビュー内の議論を受けて、小澤は障害訓練を通して「教訓を得る」かつリフレクションなども通して「チームの関係性が良くなる」というチームレベルの経験学習がなされたのではないかと指摘した。
また、危機に対処した個人の学びを組織の学びに繋げるために、瀧は障害訓練振り返りのKPTの例をあげ、個人のせいにせずに人とシステムの両面から要因を突き詰め、事象と責任を分けることで納得感のある学びになるのではないかと考察した。
▼梅崎さんによる日経電子版の障害訓練のレポート記事はこちら
https://hack.nikkei.com/blog/advent20211220/