組織と事業を支える「観察力」の鍛え方

2021.10.18/95

10/16(土)に開催された「組織と事業を支える「観察力」の鍛え方」のアーカイブ動画です。

チャプター
00:11 イントロダクション・チェックイン
10:04 『観察力の鍛え方』と『問いのデザイン』との関係性
13:55 企画・執筆の経緯とポイント
25:40 観察とは何か?:「定義」「良し悪し」「観察力を阻むもの」
38:48「仮説・観察・問い」による観察のサイクル
50:10 観察における「いること」の重要性
01:02:32 「いること」と「すること」の2層サイクルモデルの提案
01:14:32 解説:対談の理解を深めるための5つの観点
01:30:39 今後のイベントのご案内

<今週のポイント>
・安斎は『観察力の鍛え方』について、「探究のプロセスが生々しく表現されている一冊」と評する。それに対して佐渡島さんは、「わかっているところから始めないと、わかっていく過程がわからないから、不完全な本を出すことに価値があるんじゃないかと考えた」と述べる。
・『観察力の鍛え方』における観察の定義は「物事の状態や変化を客観的に注意深くみて、組織的に把握すること」。また、観察の良し悪しは「事前の設定した仮説が更新されるかどうか」で分けられる。さらに、観察を阻む要因として佐渡島さんは、「認知バイアス(=脳)」「身体と感情(=感覚器官)」「コンテクスト(=時空間)」を挙げる。
・佐渡島さんと安斎は、『問いのデザイン』刊行以降、互いの執筆する書籍に影響を受けながら、その内容をもとに持論を展開している。こうした書籍を介したやり取りを佐渡島さんは「面白い距離感」として、「実はもっとも長く話せて、もっとも深いところにたどり着くかもしれない」と話す。
・『観察力の鍛え方』では、クリエイターが思考を止めないためのモデルとして、「問い→仮説→観察」のサイクルがあると佐渡島さん。そのサイクルの中でボトルネックになりがちなのが「観察」のフェーズであり、そこを重点的に語る必要があると考えたことが同書の執筆の背景として語られた。この視点は組織が「問い」によってふと立ち止まり思考を促す構造と対照的であり、のちに安斎は解説の中で、「問いのデザインが『組織が立ち止まるための思考モデル』であるとすれば、観察力の鍛え方は『個人が手足を止めないための思考モデル』だ」と述べる。
・出来事を一定の尺度で測れる/測ろうとすることで遠ざかる幸せがあり、「意図的な行為による合理性」を追求する資本主義へのアンチテーゼとして、あいまさを許容し、創作に必要な「わからない状況居続ける」ことを為すために、観察という行為が重要になると佐渡島さんは話す。
・ここまでの内容を踏まえた上で、安斎は「もしその続きを自分が書くとしたら…」という想定で描いたというモデル図を示しながら、安斎は「行為(doing)としての観察」と「あり方(being)としての観察」の二種類があるのではないかと述べる。「あり方としての観察」から、徐々に焦点を絞るように「行為としての観察」に移行していく連続性の中で捉えることが重要ではないかと指摘。
・安斎は「あり方としての観察」には、その人が持つアイデンティティやバイアスに大きな影響を受けると言う。逆に言えば、「あり方としての観察」の力を磨くことは、その人固有のアイデンティティに基づく「探究テーマ」を磨くことに繋がる。
・また、今回対談では触れられれなかったが、ファシリテーションと観察力の関係性に着目する視点も欠かせない。特にCULTIBASEでも過去に紹介した書籍『他者と働く』で語られるような、人間の関係性の問題を捉える上で、観察力の理論と実践を学び続けることは重要である。
・12月に刊行予定の『問いかけの作法』では、観察の初心者向けのガイドラインを策定している。例えば表面上は「評価」するような発言は、その背後に「観点」があり、さらに根底には「価値観」がある。それらの違いに目を向けることが、こだわりや認識のズレを「観察」する上で効果的な方法論となる。

話題の新刊『観察力の鍛え方』著者の佐渡島庸平さん(株式会社コルク代表取締役)をゲストにお招きした本イベント。中盤までは安斎と佐渡島さんの対談を配信し、まとめではその対談を振り返って安斎が解説を行うという、今までにない形態でお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。

解説の中で安斎が「『あり方のとしての観察』には、その人が持つアイデンティティやバイアスが大きく影響する」と述べていました。これは興味深い視点であると同時に、曖昧さの中に宿る面白さや創造性を捉えるためにこの「あり方としての観察」が必要なのだとすれば、自分一人ではどうしても観察不可能な部分が生じることを意味する点から、同時にやや怖い話だとも感じました。

こうしたバイアスによる観察の困難さを乗り越える方法の一つに、チームを組むことが考えられます。自分一人では気づかなかったものの面白さや創造性の萌芽に気がつく仲間と共に活動すること。そしてそれぞれが発見した観察の成果を忌憚なく共有すること。こうした相補的な営みが、個人の創造性の発見においては重要なのではないかと思います。

そこから論を飛躍させると、以前別の記事で安斎がファシリテーションの芸風について論じていますが、同じように観察にも芸風、あるいは得意領域があるのかもしれません。ファシリテーションの重要要素として度々挙げられる観察力ですが、ペアでファシリテーションを行う機会があるとしたら、自分とは面白さの感性の異なる人と組んだほうが、ひょっとしたら思わぬ発見に繋がるかもしれませんね。ぜひ機会があれば試してみてください。

▼ファシリテーターの”芸風”の構造
https://cultibase.jp/6979/

▼ファシリテーションの鍛え方:創造的対話を支えるコアスキルの体系
https://cultibase.jp/paid-video/7224/

■イベント概要
思いも寄らないアイデアの種を見つける。同僚の何気ない言動から、心の機微に気が付く。組織の見えないとらわれを察知し、課題を立て直す。

組織と事業に関わるすべてのビジネスパーソンにとって、対象の本質を見抜く「観察力」は欠かせません。しかし誰もがその重要性は理解しながらも、意識的に「鍛える」ことが難しいのも、観察という行為の特徴です。

今回のイベントでは、近刊『観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』を出版されたばかりの佐渡島庸平さん(株式会社コルク代表取締役社長・編集者)をお招きして、観察力の本質を探ります。『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのメガヒット作を手掛けた編集者である佐渡島さんは、”良いクリエイター”の条件は、観察力にこそあると言います。本書には、クリエイションを支える「観察」とは何かについて、佐渡島さん自身の探究の過程が記されています。

イベントの聞き手と深め手は、CULTIBASE編集長の安斎勇樹が務めます。実は『観察力の鍛え方』には、安斎の前著『問いのデザイン』も理論の下敷きとして引用されています。また、安斎の執筆中の新刊『問いかけの作法』では、丸ごと1章を割いて「観察」について考察する予定。このことからも、「観察」と「問い」は、切っても切り離せない関係性にあることがわかります。

今回のイベントでは、両者の対談を通して、執筆の過程で佐渡島さんが触れた「観察を観察すること」についての洞察や、安斎自身が「もし自分が『観察力の鍛え方』の続きを書くとしたら」と発想した、実験的な観察モデルを披露し、議論を掘り下げていきます。

観察力を鍛えたい方。イノベーションやクリエイションのヒントを見つけたい方。組織開発のファシリテーションのスキルを高めたい方。そして”問い”について別の角度から探究したい方など、幅広い方のご参加をお待ちしております。

※佐渡島さんと安斎の対談は事前に収録したものを放送し、安斎がパーソナリティとしてイベントを進行します。

ゲスト

佐渡島庸平
株式会社コルク 代表取締役社長
1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。2002年に東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、「モーニング」編集部で井上雄彦『バガボンド』、安野モヨコ『さくらん』のサブ担当を務める。03年に三田紀房『ドラゴン桜』を立ち上げ。小山宙哉『宇宙兄弟』もTVアニメ、映画実写化を実現する。伊坂幸太郎『モダンタイムス』、平野啓一郎『空白を満たしなさい』など小説も担当。12年10月、講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社・コルクを創業。インターネット時代のエンターテイメントのあり方を模索し続けている。コルクスタジオで、新人マンガ家たちと縦スクロールで、全世界で読まれるマンガの制作に挑戦中。

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