archive

このコンテンツはパスワードで保護されています。閲覧するには以下にパスワードを入力してください。

組織ファシリテーターとして良い「問い」をデザインする第一歩は、問題の本質を探り、本当に取り組むべき課題を定義することです。

問題の本質を捉えるために有効な思考法はいくつかありますが、書籍『問いのデザイン』で解説した方法論のなかでも汎用性の高い「素朴思考」「天邪鬼思考」の2つについて解説します。

目次
「素朴思考」とは何か
「天邪鬼思考」とは何か


「素朴思考」とは何か

「素朴思考」とは、文字通り、問題状況に対して素朴に向き合い、問題を掘り下げていく考え方です。ふと湧き上がった「素朴な疑問」を投げかけながら、当事者から語られる言葉の意味や、言葉と言葉の関係性について、率直に「わからないこと」をベースに問題の輪郭を掘り下げていきます。

目の前に見えていること、聞こえていること、実際に起きている現象に対して「これはなんだろう?」「どうしてだろう?」と、好奇心を持ちながら、問題に対する理解を深めていくようなイメージです。

素朴な疑問が思い浮かばない場合は、一般的によく用いられる「5W2H(Why、Who、When、Where、What、How、How much)」のような質問フレームを活用してもよいですが、無理に質問を拡げようとするよりも、素朴に気になったこと、好奇心が湧いたことを中心に掘り下げていくほうが、問題の理解が「自分ごと」になりやすいはずです。頼りにすべきは「目」や「耳」、自分自身の感覚です。つぶさに対象を観察しさえすれば、素朴な疑問は自然と湧いてきます。

素朴思考において意識すべき点は、「良い問い」を考えようとしないことです。問いは、それに答えようとする過程で、別の新しい問いを生み出します。何かがわかると、別の何かがわからなくなるのが、人間の理解の本質だからです。問題の理解を深めるこの段階では、「良い質問かどうか」について考える必要はありません。まずは素朴に湧き上がった問いたちを出発点として思考を巡らせたり、思い切って問題の当事者にぶつけたりしながら、その過程で問いを育てていけばよいのです。

「天邪鬼思考」とは何か

天邪鬼思考とは、素朴思考とは裏腹に、目の前の事象を批判的に疑い、ある意味“ひねくれた視点”から物事を捉える思考法です。

「天邪鬼」とは、民話に出てくる妖怪のことで、神や人間に対して反抗精神を持っており、意地が悪く、それでいて人の心中を探るのが上手だったとされています。そのため、現代では、合理的に正しいとされている意見を疑ったり、多数派に同調せずにあえて反対をしたりする性格のことを「天邪鬼な性格」として表現します。

天邪鬼思考は、素朴思考と並んで、課題の定義に向けて問題状況を問い直すための基本的な思考モードです。この2つはバランスがとても重要です。目の前の問題状況を素直に問うていく素朴思考だけでは、好奇心にしたがって問題を掘り下げていくことはある程度できても、当事者たちにとっての盲点を突いたり、多角的な視点からの吟味を重ねたりすることには向いておらず、“優等生”的な課題設定に陥ってしまうリスクもあるからです。

素朴思考では「わからないことを探求する」姿勢で問いを生成しましたが、天邪鬼思考では、ステークホルダーの認識を批判的に捉え、語られていない盲点や、物事の裏側を見ることに徹します。

ただし、天邪鬼思考に傾倒しすぎてしまうと、関係者を動機づけるようなポジティブな課題設定がしにくくなってしまうデメリットがあります。

素朴思考と天邪鬼思考は、バランスが大切です。素直な視点と、批判的な視点を織り交ぜて、問題の理解をさまざまな視点から立体化させ、問題の本質を掴み、課題定義へと落とし込んでいくことが、組織ファシリテーターとしての問いのデザインの第一歩なのです。


CULTIBASEでは「問いのデザイン」にまつわるコンテンツを随時更新しています。ぜひ以下の特集より合わせてご覧ください。

問いのデザインの技法

「チームの多様性を高めることが、イノベーションの推進やクリエイティブな成果を生む上での鍵になる」という認識が、ここ最近では広まってきていると感じます。チーム編成を行う際に、男女を混ぜたり、若手とベテランを混ぜたりするように気を遣ったことのある方も多いのではないでしょうか。

しかし、本当に多様性のあるチームからイノベーションが生まれるのでしょうか?本記事では、この問いを皮切りとしながら、チームの創造性に関する海外の研究を参考に創造的な成果を生むためのチームづくりのヒントを探っていきたいと思います。

目次
「性別・年齢・人種の多様性」と「創造性」には関係がない?
性別・年齢・人種の多様性をきっかけとした「コミュニケーション」が創造性を生む
創造性に影響を与える「機能的多様性」
創造的な成果は“プロセス”から生まれる


「性別・年齢・人種の多様性」と「創造性」には関係がない?

性別や在職年数、人種、年齢、所得、家族構成などの人口統計学的な属性を「デモグラフィック(人口統計学的)」属性と呼びます。デモグラフィック要因とイノベーションや創造性の関連性を検討した研究は、筆者が知る限りでも20年以上の歴史があります。

数十年研究がなされているので統一見解があるのか?と思いきや、実はデモグラフィック要因とチームの創造性に関する研究成果はバラバラです。

一例をあげると、ジェンダーの多様性は創造性に効果的を示さなかったという研究結果(O’Reilly, Williams, and Barsade 1998)もあれば、性別の多様性とチームの創造性には中程度の関連があると示した研究(Curseu 2010)もあります。

あるいは、民族的に多様なチームと民族的に均質なチームの間で創造性に差はないと報告した研究(Paletz et al. 2004)もあれば、民族的多様性がチームの創造性を妨げると主張する研究(McLeod et al. 1996)もあるのです。

結局のところ、こうした「デモグラフィック面での多様性」と「チームの創造性」についての複数の研究をまとめて分析した研究(Hulsheger et al. 2009)では、「デモグラフィック面での多様性」は「チームの創造性」との強い因果関係を見出すことはできないと結論づけられています。

性別・年齢・人種の多様性をきっかけとした「コミュニケーション」が創造性を生む

さて、ここまでの研究成果を踏まえると、「なんだ、性別・年齢・在職年数の多様なチームをつくることは創造性の促進に何ら寄与しないのか」と思われるかもしれません。しかし、そう考えてしまうのは早計です。

性別・年齢・在職年数の多様なチームをつくるだけでは、創造的な成果は生まれませんが、こうした目に見えやすい多様性によってチーム内のコミュニケーションが活性化した場合は、創造性に寄与することがあります

逆に言えば、「性別や年齢が似通ったチームでは創造的な成果が生まれない」とも限りません。「同じ性別だから」「同じ職種だから」とデモグラフィック要因で括らないことが大事ではないかと思います。

創造性に影響を与える「機能的多様性」

デモグラフィック要因の多様性と創造性には直接的な因果関係がないということは見えてきましたが、結局のところ、多様性そのものにはチームの成果との因果関係はないのでしょうか?

実は、昨今の研究では、デモグラフィック要因ではなく、教育の多様性や仕事に関連する知識、スキル、能力などの多様性がチームの創造性に寄与すると示唆されています(例えばWoodman et al. 1993やHulsheger et al. 2009など)。

こうした多様性は「機能的多様性」と呼ばれています。創造的な成果やイノベーション促進との関係性に懐疑的な研究結果を示す論文もありますが、複数の研究を総合的にみていくと、機能的多様性は創造性やイノベーション促進に影響をもたらすという考察がなされています(Reiter-Palmon et al. 2012)。

ただ、こうした多様性はデモグラフィック要因と比べると可視化されづらいため、実務的に意識されることが少ないのかもしれないと感じています。

以前、CULTIBASEでIDEOさんの組織文化に関する記事を掲載し、「多様性は『作る』ものではなく『見いだす』もの」という話にSNSでも多くの共感をいただきましたが、まさに「多様性のあるチームや組織をつくる」のではなく、1人1人の“違い”に注目し、「多様性を見いだしていく」ことが重要であり、そうして見いだされた多様性が「機能的多様性」の話にも通ずるところだと思います。

IDEOに聞く、とにかく時間を掛け“対話文化”を醸成する姿勢:
連載「クリエイティブ組織の要諦」第1回

創造的な成果は“プロセス”から生まれる

先ほど、「目に見えやすい多様性によってチーム内のコミュニケーションが活性化した場合は、創造性に寄与することがある」と書きましたが、厳密にはこれはデモグラフィック要因を起点とした「プロセス」によって創造的な成果を生んでいると言い換えることができます。

つまり、創造的な成果に寄与するのは「多様性の有無」よりもむしろ「プロセス」にあるのではないか、ということです。

この「プロセス」とは、以下の記事で定義されているように、単なる仕事の過程や手順にとどまらないもう少し広い意味での「表面には可視化されていない集団の関係性の質や、人間の内面的なもの」を想定しています。

組織のイノベーションは「プロセス」から生まれる

この記事では、この「プロセス」が事業開発で蔑ろにされてしまいがちなことについても言及されていますが、まさに「プロセス」への働きかけが創造的な成果と密接に関わっており、もっと「プロセスとイノベーション」あるいは「プロセスと創造的な成果」の関係性に注目していく必要性があると言えるでしょう。チームの創造性に関する研究の中でも、創造的な成果を生み出すには社会的なプロセス(コラボレーションやコミュニケーション等)が重要であるということが示されています(Reiter-Palmon et al. 2012)。

具体的にどのようなプロセスの要因が創造的成果と結びついてくるのかが気になるところではあるかと思いますが、ここはまた別の記事でご紹介したいと思います。

参考文献
Barry, B., & Stewart, G. (1997). Composition, process, and performance in self-managed groups: The role of person- ality. Journal of Applied Psychology, 82, 62–78.

Cur ̧seu, P. (2010). Team creativity in web site design: An empirical test of a systemic model. Creativity Research Journal, 22, 98–107.

Hulsheger, U., Anderson, N., & Salgado, J. (2009). Team-level predictors of innovation at work: A comprehensive meta-analysis spanning three decades of research. Journal of Applied Psychology, 94, 1128–1145.

McLeod, P., Lobel, S., & Cox, T. (1996). Ethnic diversity and creativity in small groups. Small Group Research, 27, 248–264.

O’Reilly, C., Williams, K., & Barsade, S. (1998). Group demography and innovation: Does diversity help? Composition (pp. 183–207). Elsevier Science/JAI Press.

Paletz, S., Peng, K., Erez, M., & Maslach, C. (2004). Ethnic composition and its differential impact on group processes in diverse teams. Small Group Research, 35, 128–157.

Reiter-Palmon, R., Wigert, B., & Vreede, T. (2012)Team Creativity and Innovation: The Effect of Group Composition, Social Processes, and Cognition. Handbook of Organizational Creativity. Academic Press, Cambridge, MA:295-326

Woodman, R., Sawyer, J., & Griffin, R. (1993). Toward a theory of organizational creativity. Academy of Management Review, 18, 293–321.