それはチームの「こだわり」か、あるいは「とらわれ」か?

それはチームの「こだわり」か、あるいは「とらわれ」か?

安斎 勇樹

2021.11.23/ 5min read

外部環境の変化が激しく、先行きの見えない時代において、いわゆる「選択と集中」を戦略の中心に置いたトップダウン型(ファクトリー型)の組織形態から、ミドルマネージャーを起点とした個の多様性を活かすボトムアップ型(ワークショップ型)の組織へのシフトが求められています。

この過渡期において、多くの企業が前時代的なトップダウンの仕事の進め方から抜け出すことができず、本来引き出すべきチームメンバーのポテンシャルを抑圧してしまう問題が起こりがちです。

安斎の新刊『問いかけの作法』では、この組織の転換期を乗り越え、チームのポテンシャルを発揮させるための指針として、チームにおいて「こだわり」を見つけて、育てることと、「とらわれ」を疑い、問い直すことの両方が、互いに循環しながら実現されている状態を目指すことを提案しています。

チームのポテンシャルが発揮されるための循環

目次
こだわりの芽を育て、チームの核となる指針を耕す
油断せず、チームに忍び寄る「とらわれ」を疑い続ける

こだわりの芽を育て、チームの核となる指針を耕す

チームのポテンシャルが発揮され、スタイルをワークショップ型に切り替えていくためには、チームの「こだわり」を育み続けようとすることが大切です。

こだわりとは、辞書で意味を調べると「どうでもいい些細なことを、いつまでも気にかけるさま」などと書かれており、ネガティブな意味合いで使われることも少なくない言葉です。

たしかにファクトリー型の価値観においては、一人ひとりがバラバラのこだわりを持つことは、仕事の効率を妨げる要因でしかなく、チームにとっては「取るに足らないもの」だったのでしょう。

しかしワークショップ型のチームにおいては、一人ひとりのこだわりは、たとえどんなものであっても「創造性の源泉」になります。

外部に正解の基準を求められない現代において、ものづくりの指針は「自分たちの内側」に持たなくてはなりません。そして、自分たちが「良い」と思える仕事を成すためには、自分たちが「良さ」の基準を持ち、そこに執着しなければなりません。

もしそれが他の人からすれば「どうでもいい些細なこと」であったとしても、自分たちのこだわりを信じて貫かなければ、「他の人と違うもの」は生み出せないからです。

個人のこだわりは、内なる衝動と共に姿を現します。頼まれてもいないのについやってしまうこと。時間がないのに、つい時間をかけてしまうもの。そのような場面に、こだわりの芽が生まれます。ワークショップ型の組織が、メンバー一人ひとりの思いつきや、「作りたい!」「これを試してみたい!」という実験的な衝動を大切にするのは、これが理由です。

メンバーの衝動を互いに尊重しあい、蓋をせず、活かしあおうとすること。そしてそこから見えてきたお互いの「こだわりの違い」を、チームを豊かにする「個性」として認め合い、深くわかりあおうとすることが必要です。

そうして「一人ひとりのこだわり」を大切にしていく中で、共通の核となる「チームとしてのこだわり」が少しずつ育っていき、チームにとって「意味のある目的」を、自分たちで発見し続けるための指針となっていく。

このようにして、個人とチームのこだわりを育てようとし続けることが、ワークショップ型のチームとして、ポテンシャルを発揮する上で必要不可欠です。

油断せず、チームに忍び寄る「とらわれ」を疑い続ける

同時に、チームのポテンシャルを妨げないためには、チームにおける「とらわれ」を疑い続けることも必要です。

ひとたび「これが自分たちのこだわりだ!」と思えるものが発掘できたとしても、油断してはいけません。「こだわり」の確信は、「とらわれ」の始まりだからです。

どんな流行語も数年後には必ず「死語」と呼ばれてしまうように、これまで大切だと信じて疑わなかった企業理念や成功法則が、知らずのうちに、新しい発想を阻害する「とらわれ」に変貌しているかもしれない。

ワークショップ型のチームにおいては、自分たちのものの見方は、捨ててもかまわない「とらわれ」なのか?あるいはこれからも守るべき「こだわり」なのか?ということを、絶えず自問自答していく必要があります。

これは、事業や物事に対してだけでなく、チームメンバーに対するバイアスも同様です。

この人はこういう性格で、こういうこだわりを持っている人だ。あの人はどうせ、これについてはこだわりがないはずだ。そのような他者に対する”わかったつもり”は、知らず知らずのうちに、チームの関係性のなかに潜む「とらわれ」につながります。

昨日までの仲間と、今日の仲間は、新たな考えを持った別人かもしれません。ワークショップ型のチームにおいては、常に「仲間が学び続けている」であろうことを前提に置いて、メンバー同士の「とらわれ」も疑い続けなくてはいけません。

その過程で、相手の考えていることがわからない場面に遭遇しても、根気強く「対話」を重ねることで、お互いの前提をわかりあおうとすることが重要です。他者と完全にわかりあうことは難しいですが、対話的な関係性を作ろうとする姿勢が、チームの「とらわれ」を打破するのです。

また、自分たちが共通の基盤としている「組織の理念」や「チームの目的」もまた、月日が経つに連れて、「とらわれ」になっているかもしれません。

ワークショップ型のスタイルに移行した組織は、数千〜数万人が所属するメガベンチャーや大企業であっても、現場レベルの実験を奨励しています。トップが旗を振るだけでなく、現場から生まれた新規事業の種が、未来の組織のアイデンティティを作る可能性があることを、信じているからです。

それゆえに、仕事の目的を一度固定したら動かさないのではなく、常に組織の「とらわれ」を問い直し、アップデートし続けることを大切にするのです。

新刊『問いかけの作法』では、ミーティングや1on1における「問いかけ」の技術に焦点化して、組織のスタイルをファクトリー型からワークショップ型に切り替え、チームにおいて「こだわりを育む」ことと「とらわれを疑う」ことのそれぞれを実現するための方法論を体系的に解説しています。


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