チームは「問いかけ」から作られる:孤軍奮闘の悪循環から抜け出すために

チームは「問いかけ」から作られる:孤軍奮闘の悪循環から抜け出すために

安斎 勇樹

2021.11.09/ 8min read

12月23日にCULTIBASE編集長の安斎勇樹の新刊『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』が出版されます。予約受付を開始しておりますので、ぜひ発売前にご予約ください。本記事では『問いかけの作法』の序文を一部抜粋し、紹介します。

目次
誰も意見を述べない「お通夜ミーティング 」
魅力と才能を引き出す「問いかけ」の技術
あらゆる場面で必要な「問いかけ」の効用
本書の構成

誰も意見を述べない「お通夜ミーティング

「さあ、この企画に何か意見はありませんか?」
「どんどんアイデアを提案してください!」
「今日は自由に話し合いましょう!」

どこか集中力のない表情のプロジェクトメンバーたちは、あなたから目を逸らし、互いに発言権を譲り合うように、一向に口を開きません。

「遠慮なく意見していただいて構いませんよ」
「どなたか、いかがでしょうか?」

あなたの呼びかけは虚しく、期待していた「画期的な提案」はおろか、誰も「自分の意見」さえ述べない、お通夜のような状況です。

もっと自分の頭で考えて欲しい。
主体的に話し合いに参加して、自分の意見を述べて欲しい。
自分の役割を考え、チームに貢献してほしい。

多くのリーダーがチームに対して抱くこのような「期待」は、多くの場合、思うようにはいきません。

そこであなたは仕方がなく、この期待を口に出し、チームメンバーに指示を出したり、直接お願いしたりすることによって、直接的な「要求」をしてみることにします。

「もう社会人なのだから、主体的に自分の意見を発言してくださいよ」
「良いアイデアじゃなくてもよいので、最低ひとつはアイデアを出せませんか?」

しかしながら、あなたは肩を落とすことになるでしょう。それでも他人は、あなたの要求通りには動いてくれません。

「意見と言われても…。特にありません。賛成です」
「すみません、次までに考えておきます」

打っても響かない相手に業を煮やしたあなたは、部下を呼び出し、その受動的な態度に不満を表明し、叱責したくなるかもしれません。どうしてやらないのか。なぜできないのか。やる気があるのか。

あるいは相手が同僚や上司なのであれば、友人や家族に愚痴をこぼすことで、その直接ぶつけられない感情を発散したくなるかもしれません。

そうしているうちに、とうとうあなたは変わらない現状を受け入れ、「周囲に頼るよりも、自分でやったほうが早い」という結論に、辿りついてしまうでしょう。当初のチームへの「期待」は、いつしか「失望」へと変わっていくのです。

孤軍奮闘の悪循環

これは、多くのチームで発生している「孤軍奮闘の悪循環」と呼ばれる展開です。お互いに誰も期待していないチームから、良いパフォーマンスが生まれるはずがありませんから、一度このサイクルに陥ると、チームの主体性と創造性はどんどん下がっていきます。皮肉なことに、優秀でモチベーションの高い人ほど、このサイクルによってチームのポテンシャルを抑制し、そしてチームから孤立していくのです。

本書を手にとったあなたが思い描く理想は、孤立無援に「自分が頑張る」世界ではなく、仲間と力を合わせて「チームで成果を出す」世界であるはずです。あなたがチームの仲間に期待するものは、あなたに対する「同調」でも「謝罪」でもなく、その人らしさ、すなわちチームメンバーの個性あふれる才能の発揮であるはずです。

では、あなたがこの悪循環に陥らずに、チームと職場を魅力的な場に変えるためには、どうすればよいのでしょうか。
その答えはただひとつ。
周囲に投げかける「問いかけ」の質を変えることなのです。

魅力と才能を引き出す「問いかけ」の技術

場面を冒頭の「お通夜ミーティング」に戻しましょう。もしあなたの呼びかけが、以下のような「問いかけ」であったならば、いかがでしょうか。

「この企画案、どこかひとつだけ変えるとしたら、どこでしょうか?」
もし自分がお客さんだったとしたら、この案に100点満点で何点をつけますか?
「いきなり良いアイデアを考えるのは難しいですよね。まずはいま頭の中にパッと浮かんだことがあれば、なんでもよいので教えてくれませんか?」

これらは実際に、私が「お通夜のようなミーティング」の司会進行をするときに、頻繁に活用しているテクニックです。具体的には、本書で詳しく解説する「問いかけ」の技術のうち、「仮定法」「パラフレイズ」「足場かけ」と呼ばれるテクニックです。このように、ちょっとした「問いかけ」の工夫を加えるだけで、話し合いの空気は、ガラリと変わります

特に意見はないと口を閉ざしていたはずのメンバーたちが、次第に「企画の中身はよいと思うのですが、キャッチコピーの表現が気になります」「もし自分がお客さんだったら、85点です。こういう要素が加わったら、+5点になるかもしれません」など、「自分の意見」を表明してくれるようになるのです。

このような、工夫された「良い問いかけ」を繰り返していると、ミーティングを重ねるごとに、チームメンバーは自分の個性、すなわち「こだわり」を発揮することに、喜びを感じるようになっていきます。あなた自身も、「なるほど、そういう意見もあるのか」「この視点は参考になるな」と、メンバーの発言から気づきがもらえるでしょう。眠っていたチームのポテンシャル(潜在能力)が発揮され、「自分の仲間たちにはこんな才能があったのか」と、驚かされる場面を何度も経験するはずです。

チームワークの好循環

そのような強固に信頼しあったチームから、良い成果が生まれないはずがありません。このような成功体験を繰り返すことで、あなたのチームに対する期待はさらに高まり、信頼感へと変わるでしょう。このようにして、よりよいチームワークを発揮する好循環が生まれるのです。

あらゆる場面で必要な「問いかけ」の効用

問いかけが必要な場面は、なにもミーティングの進行や、部下とのコミュニケーション場面だけとは限りません。

同僚や後輩、あなたの上司、また家族や友人とのコミュニケーションの場面においても有効です。あなたが共にする「他者」の思考と感情は、あなたが日々発する問いかけの質に、少なからず影響を受けているからです。

また、これまで説得や交渉の相手だと思っていた取引先の相手とも、問いかけをうまく使えば、同じゴールを目指す「仲間」として、協力関係を築くことも可能です。

これからの時代、仕事は「自力」ではなく、「他力」を引き出せなくては、うまくいきません。問いかけの技術を駆使することによって、周囲の人々の魅力と才能を引き出し、一人では生み出せないパフォーマンスを生み出すこと。これが、現代の最も必要なスキルの一つなのです。

周囲の才能を引き出してばかりでは、他の人が評価され、自分の評価は埋もれてしまうのでは? そう心配に思う人もいるかもしれません。

しかし、それは「逆」です。むしろ、自分だけのスキルと業績にしか関心がない人よりも、問いかけをうまく使って他者の力を引き出せるほうが、これからは高く評価されるようになっていきます。

世間に目を向けてみても、アイドルのプロデューサー、スポーツチームの監督、バラエティ番組の司会、ビジネスコーチや編集者など、「自分が答えを出す」のではなく、うまく他者に問いかけることによって、「他人の才能を引き出す」ことができる人が、ますます表舞台で注目されるようになってきています。

あなたひとりの実績を磨くよりも、「問いかけ」によるチームの力を高めていったほうが、結果として「あの人と一緒に働くと、気持ちよく仕事ができる」「あの人のチームだと、良い成果が出せる」「あの人のもとでは、次々に良い人材が育っている」といった「あなた自身の評価」へとつながり、活躍の場も広がっていくのです。

何より、一人で孤独に努力を重ねるよりも、他者の才能を活かしながら働くほうが、圧倒的に仕事が楽しくなるはずです。

本書の構成

本書『問いかけの作法』は、私のこれまでの研究と実践の成果を、チームのミーティングにおける「問いかけ」に落とし込んだ実践書です。ミーティングには、集団で話し合うチームミーティングだけでなく、1対1の面談形式で行われる1on1ミーティングも含みます。

問いかけが重要なのはわかったけど、「質問を考えるのが苦手だ」という人も、少なくないでしょう。しかしながら、問いかけは人間力やセンスではなく、一定のルールとメカニズムによって説明できる、誰にでも習得可能なスキルです。問いかけに必要な要素と工程を分解し、誰にでも実践可能なプロセスに落とし込んだ理論が、本書で提案する「問いかけの作法」のモデルです。

もちろん、本書を「ただ読む」だけでは、チームの魅力と才能を引き出せるようにはなりません。本書の理論は、現場で実践を繰り返すことで、より理解が深まる内容になっています。

急いで読み終えようとせずに、1章ずつ、あるいは1項ずつ読み進めながら「本書を読み進める」「実際のミーティングで実践してみる」「手応えを振り返る」という試行錯誤を何度も繰り返すことで、本書の知があなたの身体にじわじわと染み込み、技術が磨かれていく実感が得られるはずです。

<基本編>
第1章 チームの問題はなぜ起きるのか
第2章 問いかけのメカニズムとルール

<実践編>
第3章 問いかけの作法①見立てる
第4章 問いかけの作法②組み立てる
第5章 問いかけの作法③投げかける


新刊『問いかけの作法:チームの魅力と才能を引き出す技術』の予約受付が開始しました。是非発売前にご予約ください。

問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術

チームの主体性と創造性を発揮したい、すべてのマネージャー必携! ベストセラー『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』の著者による最新作 仲間と力を合わせ、チームで成果を出すためには、周囲に投げかける「問いかけ」の質を変えることが重要です。 著者の長年の研究と実績をもとにノウハウ化された、チームの眠っているポテンシャルを最大限に発揮させるための「問いかけ」の実践的指南書! …

またCULTIBASELabのウィークリーイベントでは、毎月『問いかけの作法』についてさらに学びを深める関連コンテンツを出版後も展開していきます。会員登録の上で、ぜひお気軽にご参加ください。
CULTIBASELabの概要はこちら

CULTIBASELabの紹介

Most Popularランキング トップ5

Tag人気のタグ

タグ一覧へ
CULTIBASE編集部がテーマごとに
動画・記事・音声コンテンツを
厳選してまとめました。

パッケージ

CULTIBASE編集部がテーマごとに動画・記事・音声コンテンツを厳選してまとめました。

もっと見る