「地図」が旅行者の動きをコントロールする時代に、「状況論」から学べること:連載「計画を超えて」  第3回

「地図」が旅行者の動きをコントロールする時代に、「状況論」から学べること:連載「計画を超えて」 第3回

上平 崇仁

2021.09.23/ 8min read

「事前に計画すること」は、わたしたちのいま・この瞬間に焦点をあわせる感覚を弱体化しているのではないか? そんな問いを起点として「計画」に対抗して生きるための知を探索していく、上平崇仁さんによる本連載。その第3回では、「状況論的アプローチ(状況論)」を起点に、生活者がデザイナーの意図に従うのではなく、世界に応答するなかでよりよくデザインしていく術について考えていきます。


ものごとを「事前に計画すること」。現在のビジネスや教育において支配的な考え方です。しかしながら、計画による先回りが過度に進むと、周囲の余白は消え、いま・この瞬間にしかないライブな感覚は軽んじられていきがちです。

加速するための“前のめり”の姿勢が是とされるなかで、本連載では、あえて常識とは逆の思考フレームに切り替えて今の時代の問題を眺めてみます。わたしたち生活者は、いかにして生起する一回限りの世界に対して応答できるのでしょうか。

目次
プラン(計画)と状況的行為
学びも創造も、〈状況〉の中に埋め込まれている
人はなぜプランに縛られるのか
縛られすぎないために

プラン(計画)と状況的行為

〈状況〉と漢字で書くよりも、カタカナの〈シチュエーション〉のほうが言葉の意味をイメージしやすいかもしれません。古来から、人は「その場のありさま」、すなわちシチュエーションの中で、そこにある資源を使いながらサバイバルしてきましたが、学問の世界において、人の内側ではなく、人の行為を取り巻く外側のほうに目が向けられるようになったのは、比較的最近です。

1980年代、ゼロックスのパロアルト研究所に招聘された人類学者のルーシー・サッチマンは、コピー機とそれを利用する人間のやりとりの分析を通して、デザインにおける根本的な問題を指摘しました[*1]。

当時の最先端の技術を搭載した知的な機械(コピー機)は、人間の事前の行動を予測して、そのプラン(計画)のモデルに基づいて手続き的に人間に教示し、実行していくようにデザインされています。

ところが実際に人間がコピー機を使う手続きをつぶさに観察してみると、UIやマニュアルに示された内容を誤解したり、操作を失敗したりするなかで、周囲の環境や横にいる人との会話などで得た手がかりをあれこれ取り入れながら、その都度その都度、行為を即興的に紡いでいるのです。

この時の研究の映像の一部は、YouTubeで今でも見ることができます。高名なコンピュータ科学者(Allen Newell とRon Kaplan)が「両面コピーを取る」というタスクに対して、二人で悪戦苦闘しています。逆に(知的なはずの)コピー機のほうは、二人が何をしようとしているか全くわかっていません。

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