チームを停滞させる諸問題はなぜ起こるのか:組織の過渡期における4つの副作用(後編)

チームを停滞させる諸問題はなぜ起こるのか:組織の過渡期における4つの副作用(後編)

安斎 勇樹

2021.09.02/ 9min read

ミーティングで誰も意見を述べない。考えがマンネリ化し、新しい発想が生まれない。ミスを恐れて、誰もリスクを取らない。このような、チームメンバーの魅力と才能が埋もれたまま、ポテンシャルが抑制されている状態は、どのようにして生まれてしまうのでしょうか。

前編では、前時代に求められていたトップダウン方式の「ファクトリー型」の組織のスタイルと、外部環境の変化に柔軟に対応するボトムアップ方式の「ワークショップ型」の組織のスタイルについて解説しました。

チームを停滞させる諸問題はなぜ起こるのか:組織の異なる2つのモードの間で(前編)

目次
ファクトリー型への環境適応による、4つの副作用
副作用(1)判断の自動化による、認識の固定化
副作用(2)部分的な分業による、関係性の固定化
副作用(3)逸脱の抑止による、衝動の枯渇
副作用(4)手段への没頭による、目的の形骸化
チームのポテンシャルが発揮された状態とは

ファクトリー型への環境適応による、4つの副作用

日本企業の多くは、これまで何十年もかけて「ファクトリー型」の仕事の技術と習性に磨きをかけてきました。人間は元来、非常にすぐれた学習能力、すなわち環境適応能力を持っています。また、学校教育のカリキュラムも、ファクトリー型の人材を育て上げる最高のプログラムが整備されていました。それによって、私たちは、長い年月をかけて、ストレスなくファクトリー型の仕事を遂行できるように、順応してきたのです。

その順応過程で発生した「副作用」のようなものが、時代環境の過渡期において、ワークショップ型への移行を阻害する、悪しき慣習となっているのです。以下、4つの観点に整理しながらみていきましょう。

ファクトリー型への環境適応による、現代の副作用
1.判断の自動化による、認識の固定化
2.部分的な分業による、関係性の固定化
3.逸脱の抑止による、衝動の枯渇
4.手段への没頭による、目的の形骸化

副作用(1)判断の自動化による、認識の固定化

ファクトリー型においては、なるべく早く、効率的に作業を進めることが求められました。そこで私たちは、仕事の工程においていちいち考え込まなくても意思決定ができるように、多くの思考過程を自動的に処理できるように順応してきました。これが「判断の自動化」という、環境適応です。

しかしながら、これまでのやり方にとらわれずに、新しい可能性を探索し続けるワークショップ型の仕事のスタイルにおいては、自動化された判断基準は、ときに新たな発想を阻害する「固定観念」となりえます。

ワークショップ型の仕事のスタイルにおいては、このように「当たり前」だと思っていたことに対して、ふとしたときに疑いをかけ、「本当だろうか?」「別の可能性はないだろうか?」と、前提を問い直しながら探り続ける姿勢が有効です。

組織において、長い年月をかけて「ひとつの仕事」を突き詰めてきた人ほど、自分の専門に対する膨大な知識とルールを持っています。これは、ファクトリー型の仕事のスタイルにおいては、ミスなく効率的に、成果を生み出すための「強力な武器」でもありました。

しかし唯一の正解がなく、変化し続ける時代環境においては、「過去にうまくいったやり方」を同じようにやり続けることは、新しい発想や、新しいチャレンジを阻害します。過去の「武器」は、未来の「足かせ」にもなるのです。これが「判断の自動化」が招く、「認識の固定化」という副作用です。

副作用(1)認識の固定化
チームメンバーの一人ひとりに暗黙のうちに形成された固定観念によって、新しい発想が生まれにくくなっている状態

副作用(2)部分的な分業による、関係性の固定化

ファクトリー型においては、チームメンバーで作業を振り分け、分業を進める必要がありました。人間の驚くべき能力のひとつに、お互いのことを深く理解していない他者とでも、コミュニティを形成し、協力関係を築くことができる力があります。

学校のクラスメート、サークル活動や部活動、ご近所付き合い、いわゆる”ママ友”と呼ばれるような保護者コミュニティなど、これまでの人間関係を思い出すと、わかりやすいでしょう。かつてのクラスメートの中には、腹を割って語り合える親友がいたかもしれませんが、数えるほどしか会話をしたことがない相手もおそらくいたはずです。少人数学級でなければ、付き合いには濃淡があったのではないでしょうか。しかしひとたび文化祭で「ひとつの出し物」を協力して企画することになれば、たとえお互いのことについてたいして知らなくても、役割さえ分担できれば、分業ができたはずです。

私たちは「まったく知らない人」については警戒するくせに、他者について「部分的」にでも理解することができれば、「この人はこういう人である」「この人は悪い人ではない」という仮説を素早く立てて、協力関係を築くことができるのです。これが「部分的な分業」という、環境適応です。

お互いを深く理解していない「部分的な分業」の状態を放置すると、チーム内に「あの人は主体性がない」「あの人は話を聞いてくれない」といった「決めつけ」を生み出し、お互いの関係性を悪化させてしまうリスクがあります。

ファクトリー型の分業にとどまるのであれば、それでもよいのかもしれません。しかしワークショップ型のスタイルでは、それぞれのメンバーから主張や結論が曖昧な「生煮えの意見」を交わすことを奨励します。一人ひとりの意見に対して、「なぜこの人は、この意見にこだわっているのか」と、お互いの背後にある「見えない前提」について深く理解しようとする土壌がなければ、異なる視点が交錯するワークショップ型のコミュニケーションには移行できないでしょう。これが「部分的な分業」が招く「関係性の固定化」という副作用です。

副作用(2)関係性の固定化
チームメンバー同士が「わかりあえない」まま、関係性が凝り固まり、コミュニケーションが深まらない状態

副作用(3)逸脱の抑止による、衝動の枯渇

ファクトリー型においては、なるべくミスを犯さないように、設計図に忠実に仕事を進める必要がありました。そこで従来の伝統的学校教育では、生徒がミスを犯さないことを第一に、減点法のフィードバックを重視してきました。たとえばマーク式のテストでは、仮に求められる知識を深く理解していたとしても、回答時に1マス塗り間違えてしまえば、点数はもらえません。

正解の基準を定められ、失敗に対するネガティブフィードバックを毎日のように受けていると、当然ながら、個性的なパフォーマンスをしようとするよりも、なるべくミスをしないようにすることに、意識を向けるようになっていきます。

さらに伝統的な学校教育には、他の生徒と足並みを揃えさせる同調圧力をかける仕組みが満載です。このような環境に順応する過程で、私たちは他の生徒と足並みを揃えて、なるべく集団の輪から外れないように、規範から「逸脱」する行動に、ブレーキをかけるようになっていきます。これが「逸脱の抑止」という、環境適応です。

これが「逸脱の抑止」によって、チームメンバーの内発的な動機が阻害される「衝動の枯渇」という副作用です。この性質は、ミスを防ぐことを第一とするファクトリー型であればよいかもしれませんが、実験を奨励するワークショップ型においては致命的な足かせになります。

衝動とは、人の内側から湧き上がる欲求のことで、子どもの頃から誰しもが持っている本能的な感覚です。ところが、規範から逸脱することを恐れ、関係性が凝り固まったままでは、それが主体的な行動や発想のストッパーとして働き、本来あるはずの衝動に「蓋」がされた状態になります。

副作用(3)衝動の枯渇
チームメンバーの内発的な動機に蓋がされ、主体的な行動や発想が抑圧されている状態

副作用(4)手段への没頭による、目的の形骸化

ファクトリー型においては、最初に設計図を作成し、計画を立てたら、それに従って淡々と作業を進めていくことが求められます。高度な専門性が必要な作業であっても、前述した「判断の自動化」を活用して、なるべく素早く効率的に処理できるように習熟していく必要があります。これに順応するために、私たちは「手段への没頭」という戦略を活用します。

昨今では仕事における「WHY」や、事業の理念を問い直す重要性が叫ばれていますが、それは、私たちは目の前の「作業の目的」を見失っても、その作業そのものに淡々と没頭することができることの裏返しでもあります。これもまた、「数学」「物理」「日本史」といった具合に分断された教科教育を学び、ペーパーテストのスコアを上げることに没頭させる伝統的な学校教育の賜物だといえるでしょう。これが、「手段への没頭」という環境適応です。

この業務は何のためにやるのか。このプロジェクトは何を目指しているのか。そもそもこの会社は、社会においてどんな使命を果たすために存在しているのか。最近では、コロナ渦で事業の存在意義が揺らぎ、企業理念を見つめ直す会社も増えてきています。しかし「歯を毎日磨く」ことの目的をいちいち考えないのと同じように、コロナ渦のような非常事態にでもならない限り、私たちは目の前のルーティンを「なぜやるのか」と問い直すことは、あまりしません。

次第に掲げた当初は想いに溢れていたはずの目的も、いつの日か、エネルギーが失われ、形だけのものとなっていく。これが「手段への没頭」によって引き起こされる「目的の形骸化」という副作用です。

副作用(4)目的の形骸化
仕事や業務を進めることが自己目的化し、何のためにそれをやっているのか、意義が感じられなくなっている状態

チームのポテンシャルが発揮された状態とは

これらの4つの副作用は、現代の企業や学校、地域コミュニティ、あるいは家族まで、多くの組織やチームに蔓延している、いわば「チームの現代病」のようなものです。デスクワークが中心となった私たち現代人の多くが「腰痛」や「眼精疲労」に悩み、またそれらの症状の要因が切り離せないのと同様に、チームに蔓延する4つの現代病もまた、相互に関連しています。裏を返せば、それらの現代病を乗り越えて、以下のような「チームのポテンシャルが発揮された状態」を維持することが、ワークショップ型の組織に移行するための鍵といえます。

チームのポテンシャルが発揮された状態
① 常に新しい可能性が探索されながら、こだわりを育てている状態
② 互いの違いを尊重し、対話を通してわかりあおうとしている状態
③ 内なる衝動に基づいて、失敗を恐れずに実験できている状態
④ 仕事の目的が常に問い直され、アップデートされている状態

CULTIBASEでは、これらのチームの現代病を治療し、ワークショップ型の仕事のスタイルに切り替えていくための処方箋として、創造的なマネジメントやファシリテーションの方法論を引き続き探究していきます。


以下の動画コンテンツ「組織ファシリテーション論 最新講義:組織の創造性を賦活する見取り図」では、チームのポテンシャルを引き出す「組織ファシリテーション」の全貌について解説しています。CULTIBASEコンテンツ全体の見取図ともなる動画ですので、是非あわせてご覧ください。

組織ファシリテーション論 最新講義:組織の創造性を賦活する見取り図

また、以下の動画コンテンツ「問いかけの作法:チームのポテンシャルを活かす技術」では、上記の環境適応と副作用の詳細を説明した上で、こうした現代病を乗り越え、チームワークの好循環を生み出すために日々の問いかけが有効であることを解説したのち、実践的な「問いかけの作法」を解説しています。

問いかけの作法:チームのポテンシャルを活かす技術
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