創造性研究から学ぶ、創造的なチームに欠かせない5つの基礎

創造性研究から学ぶ、創造的なチームに欠かせない5つの基礎

東南 裕美

2021.05.03/ 15min read

創造的なチームを作る上でのナレッジやコツが、様々な実践や研究から明らかになっています。

例えば、以下の記事でも「どのような多様性が創造的な成果を生むために有効なのか?」「”多様性のあるチームをつくること”より、創造的な成果を生む上で重要なこととは何か?」といったことについて紹介してきました。

「多様性のあるチームが創造的な成果を生む」は本当か:創造性研究にみるチームづくりのヒント

この記事にもあるように、創造的な成果を生むには「チームメンバーのパーソナリティ」も影響する可能性があるほか、「潤沢な予算があるか」「実験できるような空間・物理的環境が整っているか」という要素も関係しうるでしょう。

しかし、どんな条件下であったとしても、チームづくりのプロセスを工夫することで創造的な成果を生み出しやすくなることも確かです。チームの創造性に関する海外の文献を多数レビューした論文「Team Creativity and Innovation: The Effect of Group Composition, Social Processes, and Cognition」によれば、創造的なチームづくりをする上で、「コラボレーション」「コミュニケーション」「心理的安全性」「サポート」「効力感」が必要であることが明らかになっています。

「コラボレーションやコミュニケーションが求められるなんて当たり前では?」

「サポートがある環境が創造的成果を生み出しやすくなるなんて言われなくても分かるでしょ」

などと思われるかもしれませんが、それぞれの要素がどういう場面で有効なのか?なぜ有効なのか?と聞かれると案外疑問に思われるところもあるのではないでしょうか。

そこで本記事では、「Team Creativity and Innovation: The Effect of Group Composition, Social Processes, and Cognition」や本論文で紹介されている他の研究を参考にしながら、創造的なチームに欠かせない5つの基礎として、「コラボレーション」「コミュニケーション」「心理的安全性」「サポート」「効力感」が有効な場面や有効な理由について整理してご紹介します。

目次
プロジェクトの初期に重要なコラボレーション
「チーム内のコミュニケーションは多いほど良い」は誤り
「チーム内のコミュニケーション」より影響力の高い「チーム外のコミュニケーション」
メンバーの自発的な行動を生む「心理的安全性」
行動と姿勢の両方が求められる「サポート」
チームメンバーのポテンシャルを生かす「効力感」

プロジェクトの初期に重要なコラボレーション

チームのコラボレーションは、チームメンバーがお互いの相違点を理解し、多様な視点を獲得して、チームで創造的なアウトプットを創出する上で重要な要素です。他方で、なんでもかんでも協働してやれば良いというものでもありません。

研究によると、コラボレーションは特に、アイデアを実行に移す段階よりもアイデアを生成する段階において重要だと言われています。例えば、Hoegl, Weinkauf, and Gemueden(2004)では、研究開発チームを対象とした調査で、プロジェクトの初期段階、すなわちアイデアの生成やコンセプト作成の段階におけるチーム内やチーム間のコラボレーションがその後のパフォーマンスに大きな影響を与えることを明らかにしています。

この研究結果を参考にすれば、デザインプロセスとしてよく引き合いに出される「ダブルダイヤモンドモデル」(以下記事参照)の問題発見のプロセスにおいて、コラボレーションを重視することの効果が高いと考えられます。

“厄介な問題解決”としてのデザイン科学:連載「デザイン思考のルーツから、その本質を探る」第1回

「チーム内のコミュニケーションは多いほど良い」は誤り

コミュニケーションは、主に「チーム内のコミュニケーション」と「チーム外のコミュニケーション」に分けて整理されています。

まずはチーム内のコミュニケーションについて。Damanpour(1991)とHulshegerら(2009)の研究結果を統合した分析によると、「チーム内のコミュニケーション量」と「チームの創造性」の間には比例的な関連があることが示されています。しかし、ほかの研究も見てみると、「単にコミュニケーションを多く取ればよい」というわけではないことがわかります。

例えば、Kratzerら(2004)の研究では、「コミュニケーションの頻度」と「チームの創造性」の関係を調査し、両者の間に負の関係があることを発見しました。このことから、この研究では、頻繁なコミュニケーションがチームメンバーの認知過多や生産ブロッキングを生み、無意識に創造性が低下してしまっているのではないかと示唆されています。

以下の記事でも、マネージャーが適切なハブとなり、メンバーの理解度にあわせて情報を渡していく重要性について紹介していますが、認知過多や生産性低下を産まない程度に、ほどよくコミュニケーションを増やしていく必要があるでしょう。

“ハブアンドスポーク”に見るマネジメント論

「チーム内のコミュニケーション」より影響力の高い「チーム外のコミュニケーション」

次にチーム外のコミュニケーションについて。チームで事業開発などコトを推進する際、チーム内のコラボレーションやコミュニケーションに気を遣い、キックオフや定期的なリフレクションなど行っている方も多いかと思いますが、案外見過ごされがちなのがチーム外でのコミュニケーションです。実は、Damanpour(1991)とHulshegerら(2009)の研究を統合した分析から、チーム外のコミュニケーションは、チーム内のコミュニケーション以上に創造的成果へ影響を与えうるということが明らかになっています。

しかし、チーム外のコミュニケーションは、時としてチームメンバーからあまり快く受け入れられないこともあります。例えば以下の対談では、組織の外にでて「越境学習」し、その学びを組織内に持ち帰ると、ある種“迫害”のような対応を受けることがある、という現場のお悩みが取り上げられました。そうした“迫害”をいかに乗り越えていくかという示唆も話されていますので、興味のある方はぜひこちらもご覧ください。

枠を超える人と組織をいかに育てるか?

また、チーム外のコミュニケーションが創造的なチームづくりに必要な理由は、「アイデア生成において外から新しい情報を得られること」に加え、「アイデアを実行に移す際に承認を得られるか否かに関わること」が挙げられます。

「チーム内のコミュニケーションには目を向けていたけれども、なかなか成果に結びつかない」といった悩みを抱えていらっしゃる方は、チーム外のコミュニケーションを重視することで、事業のブレイクスルーがもたらされるかもしれません。

なお、チーム外のコミュニケーションの取り方についての具体的な知見がほしい!という方はこちらのイベントがおすすめです。

新規事業が生まれるチーム作りのコツ

メンバーの自発的な行動を生む「心理的安全性」

近年注目度の高まっている「心理的安全性」も重要な要素の1つです。「心理的安全性」は、チーム外のコミュニケーションと同じくチームの創造性向上にあたって、もっとも強く影響を及ぼしうる要因の一つと言われています。また、心理的安全性と関連して、チームが有能で任務を遂行でき、個人に危害を加えないという「信頼」も欠かせません(Ilgen et al, 2005)。

「心理的安全性」は、いくつか定義があるものの、本概念の提唱者であるエイミー・エドモンドソンによると「チーム内の個人が対人関係のリスクを取っても安全であるという共通の信念」と定義されており、従業員が自発的に行動したり、提案を行ったりと、イノベーション促進に寄与することが示されています(Burke et al., 2006; Edmondson, 2004)。

逆に、信頼と心理的安全性がないことで、創造的成果につながらないだけでなく、負の影響をも生まれうることが研究から示されています。例えば、Salasら(2005)では、信頼と心理的安全性の欠如が「他のチームメンバーの行動の解釈」に影響を与えることが示唆されています。例えば、信頼が低いと、意見の相違やその他の曖昧な情報が否定的に解釈されやすく、その結果、チームメンバーは否定的な反応を示し、バックアップやサポートを目的とした行動が「マイクロマネジメントされている」と誤解されやすくなるといったケースです。

心理的安全性を高めるチームの条件は、以下の記事で解説しているので詳細はぜひこちらをご覧ください。

「心理的安全」なチームの4つの条件: 学習する職場をつくるための「心理的安全性」入門

行動と姿勢の両方が求められる「サポート」

「創造的な成果を生み出すにはサポートが必要」と言われれば当たり前のような気もしますが、サポートの仕方も多種多様です。例えば、困った仲間がいるときに作業を手伝うことや、部下やほかのメンバーがミスをしないように事前にフォローにはいるといった行動が想定できます。

ところが研究を見てみると、この「サポート」は「行動面」よりもむしろ「チームメンバーの姿勢」や「チームの風土」に焦点が当てられています。つまり、「サポート」をするには、チームメンバーを直接的に手伝うことだけでなく、アイデアやプロトタイプが成功しなかった場合のリスクや失敗に対する寛容さ新しいアイデアを試すことへの承認・奨励などが重要になると考えられます。

具体的な場面を考えると、新しい事業アイデアや企画が上がってきた際、経験が豊富なメンバーやマネージャーからするとあまり成功確率が高そうに思えない提案には、ネガティブな反応を示したり、却下したりすることもあると思います。もちろん、限られた会社のリソースを無駄にするわけにもいかないため、ある程度失敗しそうだとわかっていることは回避する必要があります。しかし、「失敗しないためのサポートをすることだけが創造的な成果につながるわけではない」ということも同時に胸に留めておく必要があります

「行動面のサポートはしていたけど、姿勢面でのサポートは足りなかったかも」という場合には、ぜひ今後「姿勢面でのサポート」という視点も取り入れてみてください。

具体的な方法として、以下の記事で紹介されている職場のレジリエンスの高め方も参考になるかと思います。

レジリエントな職場をつくるための3つの視点:連載「レジリエンス入門」第3回

チームメンバーのポテンシャルを生かす「効力感」

最後は「効力感」です。いくつかの研究によると、「創造的なものをチームで生み出すことができる」「チームメンバーが一人でアイデアを生成するよりも、集団でアイデアを生成した方が創造的なものを生み出せる」といったチームの創造性に対する効力感や自信は、チームの創造的な成果に寄与すると言われています。

逆に、創造的に対する効力感や自信のなさはイノベーションを阻害する要因にもなりえます。書籍『リサーチ・ドリブン・イノベーション』でも、この方法論を提唱した背景の1つとして、イノベーション プロセスにおける創造的自信の欠如の問題を取り上げています。

関連記事:連載「リサーチ・ドリブン・イノベーション」

研究によれば、特にチームの創造性を助長するパーソナリティ特性を持ったメンバー中心に構成されたチームでは、メンバーがチームの創造性に対して効力感をもっている場合に、相乗効果的に創造的な成果を生むことを明らかにしています(Baer, Baer et al., 2008)。

「チームメンバーの創造的なポテンシャルが生かしきれていないかも」という場合にも参考になるのではないでしょうか。


以上「創造的なチームに欠かせない5つの基礎」ということで論文をもとにキーワードを紹介してきました。

最後に、研究から得られた知見を簡単にまとめておきます。

・創造的な成果を生むチームづくりをする上では、「コラボレーション」「コミュニケーション」「心理的安全性」「サポート」「効力感」が必要

・プロジェクトの初期段階におけるチーム内やチーム間の「コラボレーション」がその後のパフォーマンスに大きな影響を与える

・「チーム内のコミュニケーション量」と「チームの創造性」の間には比例的な関連があるが、コミュニケーション頻度が増えることによる負の影響も考慮が必要

・チーム外のコミュニケーションは、チーム内のコミュニケーション以上に創造的成果へ影響を与えうる

・「チーム外のコミュニケーション」は、「アイデア生成において外から新しい情報を得られる」「アイデアを実行に移す際に承認を得られるか否かに関わる」ため重要

・「心理的安全性」は、従業員の自発的な行動や提案を促し、イノベーション促進に寄与する

・「サポート」とは行動面のサポートだけを指すのではない。リスクや失敗に対する寛容さ、新しいアイデアを試すことへの承認・奨励など姿勢面や風土面のサポートが特に重要

・チームの創造性に対する「効力感」や「自信」は、「チームの創造性を助長するパーソナリティ特性」に相乗効果をもたらす

ぜひご自身のチームや組織の状況と照らし合わせて活用してみてください。

参考文献

Baer, M., Oldham, G., Jacobsohn, G., & Hollingshead, A. (2008). The personality composition of teams and creativity: The moderating role of team creative confidence. Journal of Creative Behavior, 42, 255–282.

Burke, C., Stagl, K., Salas, E., Pierce, L., & Kendall, D. (2006). Understanding team adaptation: A conceptual analy- sis and model. Journal of Applied Psychology, 91, 1189–1207.

Edmondson, A. (2004). Psychological safety, trust, and learning in organizations: A group-level lens. Trust and distrust in organizations: Dilemmas and approaches (pp. 239–272). New York, NY: Russell Sage Foundation.

Damanpour, F. (1991). Organizational innovation: A meta-analysis of effects of determinants and moderators.

Hoegl, M., Weinkauf, K., & Gemuenden, H. (2004). Interteam coordination, project commitment, and teamwork in multiteam R&D projects: A longitudinal study. Organization Science, 15, 38–55.

Hulsheger, U. R., Anderson, N., & Salgado, J. F. (2009). Team-level predictors of innovation at work: A comprehensive meta-analysis spanning three decades of research. Journal of Applied Psychology, 94, 1128–1145.

Hunter, S. T., Bedell-Avers, K. E., & Mumford, M. D. (2007). Climate for creativity: A quantitative review. Creativity Research Journal, 19, 69–90.

Kratzer, J., Leenders, R., & van Engelen, J. (2004). Stimulating the potential: Creative performance and communication in innovation teams. Creativity and Innovation Management, 13, 63–71. Academy of Management Journal, 34, 555–590.

Salas, E., Sims, D., & Burke, C. (2005). Is there a ‘Big Five’ in teamwork? Small Group Research, 36, 555–599.

Reiter-Palmon,R., Wigert, B., &Vreede, T., D.(2012)Team Creativity and Innovation: The Effect of Group Composition, Social Processes, and Cognition. Handbook of Organizational Creativity. Academic Press, Cambridge, MA:295-326

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