グループの多様性を尊重し、豊かな創発に繋げるコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第3回

グループの多様性を尊重し、豊かな創発に繋げるコツ:連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第3回

水波洸

2021.01.23/ 10min read

本連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」では、「明日の実践ですぐ使える」ことをコンセプトに、実践に役立つちょっとしたファシリテーションのヒントを紹介しています。過去の記事では、「イントロダクション」や「アイスブレイク」などをテーマとしてきました。

参加者の緊張をやわらげ、関係性を構築するアイスブレイクのコツ(連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」第2回)

今回は「グループの多様性を尊重し、豊かな創発に繋げるコツ」をお届けします。ワークショップの醍醐味は、異なるバックグラウンドを持つ一人ひとりが意見を出し合い、擦り合わせていくことで、自分とは異なる考え方や価値観に触れながら、ものの見方を拡張させていく過程にあります。また、こうした過程があるからこそ、個人では決して生み出せない、イノベーティブなアイデアを発想することが可能となります。

しかしながら、ワークショップの参加者が、必ずしも最初から自分の意見を自由に出せるわけではありません。例えば、前回の「アイスブレイク」のテーマの際にも説明したように、初対面の人同士で協同的活動に取り組むことも珍しくないワークショップにおいて、参加者の一人ひとりは大なり小なり緊張しています。こうした中では、「論点から外れているのではないか」「こんなことを言ったら馬鹿だと思われるんじゃないか」といった不安がどうしても生じるため、意見を出すことをためらってしまうことがあります。あるいは、誰かと対立することをを恐れるあまり、批判的な意見を出すことがはばかられ、本心で思っていることとは別に、耳障りのいい言葉で「同調」してしまう場面も多々見受けられます。さらに極端なケースでは、グループの中に自分の意見の正しさを疑わなかったり、自分と異なるアイデアを封殺したりする人の態度が多様な意見が出ることを妨げていることもあるようです。

問題の原因が何であれ、異なる意見によるコラボレーションが起きず、誰か一人の意見がグループの総意となってしまうのであれば、ワークショップを行う意味がありません。こうした事態を避けるために、ファシリテーターが様々な工夫や技を施しながら、その人だけが持つ意見や経験を場に提示し、豊かな創発の材料とできるように促していくことが重要です。今回は、こうした場の多様性を引き出し、コラボレーションに繋げていくために役立つ3つのファシリテーションのヒント「状況」「行動」に分けて紹介します。

■今回紹介する3つのヒント
「集団思考の罠に気をつける」
「“第三の道“を信じる」
「参加者の意見を結びつけ、新たな視点を提供する」

  

「集団思考の罠に気をつける」

【状況】
ワークショップでは、自由に意見を交わしながらも、最終的にはグループや参加者全体の合意形成を目指す場合が多くあります。理想的には、相容れない多様な意見を拡散させながらも、最後には統合されたよく寝られた最適の解に収束させることですが、多様な視点から意見を拡げていくことは簡単なことではありません。信頼関係のない他者に対して批判的な意見をぶつけることは心理的な障壁が高く、アイスブレイクやチームビルディングの段階で下手に団結してしまうと、互いの意見に無批判になっていくこともあり得ます。そうすると、自由に議論を重ねているように見えて、実は無批判に同質な視点を共有しているだけになっていく場合も少なくありません。これを集団思考の罠と呼びます。

【行動】
グループワークの際には、各グループの話し合いのプロセスに耳を傾け、グループ内で多様な視点からの意見が交わされているか、また複数のグループの話し合いが似たような話題に終始していないかどうか、モニターしておくとよいでしょう。もし前半のうちにそれぞれのグループが同じような話題に収束していたり、グループ内で耳障りのよい議論と共感が繰り返されていると感じたら、集団思考の罠に陥っているかもしれません。ファシリテーターはあえて天邪鬼的な視点を持って、グループの相違に反対意見や相反する視点を提示することで揺さぶりをかけたり、グループ内で議論の方向性に疑問を持ってモヤモヤしていそうな参加者を特定し、その参加者の意見を引き出したりすることによって、安易な結論に陥らないように支援するとよいでしょう。

 

「“第三の道“を信じる」

【状況】
良いアイデアの創発や、議題にそれなりの結論を出すことを目的としたワークショップにおいては、発散的に出た意見をまとめながら、全体が合意する解へと収束させる必要があります。しかし多くの場合、対立する異なる意見から一つの合意に導くことは容易ではなく、AorBの二元論的なディベートに陥ることも少なくありません。民主的に解決しようと多数決で結論を決めようとする場合もありますが、多数決はマイノリティを排除する方法でもあるため、注意が必要です。

【行動】
時間の許す限り、ファシリテーターはAorBを「議論」によって焦って決めようとせずに、対立するAとBの意見を持つ両者が「対話」する時間を確保し、両者の価値観を包含するような、AでもBでもない「C」という“第三の道“はありえないか?を模索するとよいでしょう。これは容易なことではありませんが、AとBの意見はなぜ、どのような点で相反するのか?共通点はないだろうか?見方を変えれば、その矛盾は解消できないだろうか?同時に実現できないだろうか?などと、多角的な視点で検討することを促し、粘り強く対話をサポートする姿勢が求められます。そして何よりも重要なことは、ファシリテーターが心から“第三の道“が存在することを信じることです。

 

「参加者の意見を結びつけ、新たな視点を提供する」

【状況】
グループワークの成果を発表し合う場面では、ファシリテーターはそれぞれの発表に対して何かしらコメントを行うことが多くあります。こうしたコメントには、参加者に客観的な視点の獲得やプロセスの振り返りを促す効果が見込めます。素朴に思ったことを述べたり、他の参加者に意見を求めたりするだけでも有効ではありますが、より深い学習を促していくためは、参加者が今までにない視点に触れられるような、質の高いフィードバックが求められます。

【行動】
発表へのコメントに慣れてきたら、次のステップとして、コメントする際に、他のグループのアウトプットと比較したり、結び付けたりしながら、その作品単体では得られない視点を編み出すことを意識すると良いでしょう。例えば、他のグループでも共通して重要とされていた要素が何か、あるいはそのグループだけが大事にしていた要素が何かなどを整理し、その背景にある思いを、双方向的なやりとりの中で探っていくといったやり方が有効です。こうした振る舞いによって、作品そのものだけでなく、その作品のプロセスにおける参加者の取り組む姿勢や価値観にもフィードバックを与え、グループワーク中には得られにくい、俯瞰的な視点による学びをもたらすことが可能となるのです。

 

今回はグループの多様性を尊重し、豊かな創発に繋げるコツというテーマでワークショップ実践におけるちょっとしたヒントを紹介しました。ぜひ次回のファシリテーションで試してみてください。

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