
イノベーション
水波洸
2021.01.23/ 10min read
本連載「ワークショップ・ファシリテーションのヒント」では、「明日の実践ですぐ使える」ことをコンセプトに、実践に役立つちょっとしたファシリテーションのヒントを紹介しています。過去の記事では、「イントロダクション」や「アイスブレイク」などをテーマとしてきました。
今回は「グループの多様性を尊重し、豊かな創発に繋げるコツ」をお届けします。ワークショップにの醍醐味は、異なるバックグラウンドを持つ一人ひとりが意見を出し合い、擦り合わせていくことで、自分とは異なる考え方や価値観に触れながら、ものの見方を拡張させていく過程にあります。また、こうした過程があるからこそ、個人では決して生み出せない、イノベーティブなアイデアを発想することが可能となります。
しかしながら、ワークショップの参加者が、必ずしも最初から自分の意見を自由に出せるわけではありません。例えば、前回の「アイスブレイク」のテーマの際にも説明したように、初対面の人同士で協同的活動に取り組むことも珍しくないワークショップにおいて、参加者の一人ひとりは大なり小なり緊張しています。こうした中では、「論点から外れているのではないか」や「こんなことを言ったら馬鹿だと思われるんじゃないか」といった不安がどうしても生じるため、意見を出すことをためらってしまうことがあります。あるいは、誰かと対立することをを恐れるあまり、批判的な意見を出すことをはばかられ、本心で思っていることとは別に、耳障りのいい言葉で「同調」してしまう場面も多々見受けられます。さらにひどいケースでは、グループの中に自分の意見の正しさを疑わなかったり、自分と異なるアイデアを封殺したりする人の態度が多様な意見が出ることを妨げていることもあるようです。
問題の原因が何であれ、異なる意見によるコラボレーションが起きず、誰か一人の意見がグループの総意となってしまうのであれば、ワークショップを行う意味がありません。こうした事態を避けるために、ファシリテーターが様々な工夫やわざを施しながら、その人だけが持つ意見や経験を場に提示し、豊かな創発の材料とできるように促していくことが重要です。今回は、こうした場の多様性を引き出し、コラボレーションに繋げていくために役立つ3つのファシリテーションのヒントを「状況」と「行動」に分けて紹介します。
クリエイティビティ溢れる組織づくりやイノベーティブな事業の創出を目指し、組織イノベーションの知を耕すメディアです。