“遊び”とはなにか:創造性の6つの源泉
“遊び”とはなにか:創造性の6つの源泉

“遊び”とはなにか:創造性の6つの源泉

2020.10.28/6

CULTIBASEでは、組織イノベーションのキーワードの一つとして「遊び」を掲げ、「遊び」や「遊び心」の有用性と可能性について考察や提案を行う連載も行なっています。

なぜイノベーションに「遊び心」が必要なのか?:連載「遊びのデザイン」第1回
なぜイノベーションに「遊び心」が必要なのか?:連載「遊びのデザイン」第1回

上記記事にも書かれているように、遊びのなかに潜んでいた人を没頭させる仕掛けや、枠から飛び出すための思考のエッセンスを抽出することで、マネジメントや事業に適応できると考えています。

こういった「遊びの活用」について考える前に、そもそも”遊び”とはどのようなものでしょうか?

時間を忘れて夢中になれることでしょうか?
現実世界を忘れて何者かになりきること?
特定のルールのもとでなにかしらのゴールを目指すもの?

誰しも“遊び”は体験したことがあるのに、「“遊び”とはどのようなものか」と問われると意外と答えるのが難しいのではないかと思います。

“遊び”のなかに潜むエッセンスを抽出してマネジメントや事業に活用するのであれば、”遊び”そのものについて知っておくことも欠かせません。

そこで本記事では、海外の“遊び”に関する研究についてレビューし、遊びの認知過程などを明らかにし、“遊び”と“創造性”や“創造的な仕事”との関連について検討した論文「Ideas are born in fields of play: Towards a theory of play and creativity in organizational settings」を題材に、「“遊び”を構成する6つのエッセンス」をご紹介していきます。

自分が体験したことのある遊びを思い浮かべながら、その遊びにはどんな要素が含まれていたのか、ぜひこの記事を読みながら振り返ってみてください。


特徴①閾値の経験

「遊び」を構成する特徴の1つ目は「閾値の経験」です。「閾値」とは少し聞きなれない言葉かと思いますが、辞書で調べると「その値を境にして、動作や意味などが変わる値」のことを指します。

子供の頃に遊んだ「どろけい(けいどろ)」や「ロールプレイングゲーム」などをは閾値の経験の一つです。

「どろけい(けいどろ)」とは、泥棒役と警察役を決め、警察が泥棒を捕まえて「牢屋」に入れる鬼ごっこの一種です。これは実際には泥棒と警察ではないのに、その役を演じるという「“現実”と“非現実”の境界」に位置づいています。

「ロールプレイングゲーム」は、「“個人の内面の現実”と“個人の外側の現実”の境界」に位置づいていると捉えることができます。

このように、自分がある人物を演じることで、この遊びをしている間は、本来の自分と、なりきった人物との間のアイデンティティを持つことになります。

特徴②時間と空間の境界

2つ目の特徴として、遊びは時間と空間の制約を受けます。スポーツやフェスティバル、舞台などを思い浮かべていただくとわかるように、遊ぶための空間や時間というものが存在します。こういった時間や空間は、通常の生活、すなわち通常のルールや規範、社会的役割からは切り離されています。

しかし、最近では時間と空間の境界が曖昧なケースもあります。

例えば、以下の記事でもご紹介したように、会社行事としての「遠足」や「祝賀会」などの形式で職場に遊びが取り入れられ、業務中に公式に「遊ぶ」ということもあります。このような遊びの中では、いつもの「上司と部下」という関係性がゆらいだり、この遊びの中での「リーダー」という存在が生まれたりします。

特徴③自由と制約

3つ目の特徴は自由と制約を伴うものであるということです。

遊びは、外部からの制約から比較的自由なものです。参加者はプロセスを操作したり、新しい、あるいは非現実的なアイデンティティや役割を想定したりするために、高い自律性を持つことができます。

一方で、遊びはそれ自身の内部的な制約を課します。プレイヤー自身によって決定される場合もあれば、自発的に受け入れられる場合もあるでしょう。

「大富豪」や「人狼」などをする際、独自のルールを追加していって楽しんだという経験がある方も多いのではないでしょうか。

特徴④不確実性

4つ目の特徴は「不確実性」

チェスを例にとって考えてみましょう。人は、チェスの攻略法を学び、ある程度その戦略をマスターすることができます。しかし、チェスがどのように進行されるのか前もって完全に把握しておくことはできません。

また、特徴③とも関連し、遊びのプレイヤー自身が、遊びに自ら制約を設けることで、不確実性を高めて楽しむこともあります。上の例に揚げた「大富豪」や「人狼」での独自ルールを追加する際、よりルールが複雑になり、勝利のためのルートも不確実になります。

特徴⑤手段と目的の間の緩く柔軟な関連性

遊びは、空想のように自然発生的に引き起こされることもあれば、即興演劇のように意図的に行われながらも不規則に展開されることもあります。つまり、明確な目標があるとも言えません。遊びとは、目的のない手段でもなければ、固定された目標にむかって効率的に向かうことでもありません。

やや複雑な言い方になりますが、遊びとは、目的まで曲線でつながっており、プレイヤー自身によって追加された障害を迂回したりするようなもので、手段と目的に対し、緩く柔軟であるところが特徴的です。

特徴⑥肯定的な感情

遊びの特徴、最後は「肯定的な感情」です。

肯定的な感情と一口にいっても、それは強さや複雑さの度合いが異なります。

例えば、仕事の休憩時間にスマホゲームで遊ぶときには、リラックスした感情かもしれません。仕事で大きな成果をあげたあとのお祝いでは、感情が高ぶることもあるでしょう。

また、遊びは「楽しい」ものとしか考えられていないことも多くありますが、遊びに伴う感情は複雑で、否定的な感情を伴うこともあります。子どもがしばしば、怒りや暴力、戦争関連のテーマを取り上げて遊びに興じることがあるのもその一例と言えます。

それにもかかわらず、遊びの特徴として「肯定的な感情」が上げられるのには2つの理由があります。

1つ目は、遊びはが喪失・痛みなどの不快な感情や恐ろしい感情を表現したり、変容させたりするための安全な空間を提供していること。2つ目に、遊びは人々が対立する感情を和らげる効果があることです。

このことから、遊びにはネガティブな感情も含まれるものの、特徴としては「楽しさ」や「リラックス」などの肯定的な感情をもつことを特徴として挙げることができます。

以上、遊びを構成する6つの要素についてご紹介しました。

プロジェクトに「遊び」の要素を取り入れたい時、ぜひこちらの6つの要素を参考にしてみてください。

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